第23話 当たり前の幸せを願ってしまう
むしろ好きだからこそ愛する人を止めたかったのかもしれない。
もし、転生したのが私では無くファンブックまで読破していた妹であれば運命に抗おうとせず大人しく静かに暮らすだけで死亡エンドから回避出来る可能性が格段に跳ね上がるという事に気付けたのかもしれないが所詮は机上の空論の域を出ない、ありもしない未来の話である。
そしてサロンはこれから恒例になって行くレオとノア王子の『シャルロッテとフラン、どちらが美しく、可憐で、可愛いいのか』論争、その記念すべき第一試合の火蓋が切って落とされるのであった。
◆
あれから一カ月が経った。
その間何故か、日に日にノア殿下のしつこさが増して行き最早ストーカー一歩手前まで来てしまっているのと、シャルロッテが何故か自らわたくしの所に来ようとしてはレオが現れわたくしに暴言を吐きシャルロッテを抱えて去って行くというゲームには無い日常が繰り広げられわたくしの頭をこれでもかと悩ませて来る。
不幸中の幸いなのはあの日以降死亡エンドイベントもフラグ回収イベントも起きず表面上だけ見れば平和だった事ぐらいであろうか。
しかし、だからこそ気持ちが悪く落ち着けなく気も休める事のできない日々でもあった。
そして今夜。
わたくしは死亡フラグの根本である一つを叩き潰す為の準備が完了した為、ついに行動に移す。
そして今回の作戦のメリットは奴隷を大量に手に入るという事である為これからの事を考えると何が何でも成功させて奴隷を手に入れなければならない。
「おぉ、噂に違わぬ美しさよのぉ」
「あら、ジュレミア様はお世辞も上手いのですわね」
「お世辞なものか。ソナタは実に美しい」
わたくしの目に前にいるのは脂ぎった顔に太った身体。
太ってしまい気道に脂肪がつき狭まっているのか呼吸する度に「コヒュー、コヒュー」という耳障りな呼吸音が聴こえて来る。
それだけでも耐え難いのだがこのガマガエルは喋る度に唾を飛ばしている為救いようが無い。
そしてガマガエルはその脂ぎった醜い顔に欲情を隠すそぶりもせず浮かべながらわたくしをベッドに倒してその上へ覆いかぶさって行く。
生き延びる為ならばわたくしの純潔など捨てる覚悟はとうに出来ているしこのガマガエルに犯される事も厭わないのだが、それでも嫌なモノは嫌である為早く終わってくんないかしらと思いながら心を意識の外へと追いやって行く。
あぁ、でもやっぱり……もう無理な事ぐらい分かっているつもりでも初めては好きな人と、などという当たり前の幸せを願ってしまう。
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