第4話 声は震えており弱々しい
それでもわたくしは言葉を続ける。
「しかし、今のわたくしには奴隷であるお二方しか信頼出来る方がいないのです。どうか、わたくしの仲間になって下さいませ」
わたくしの発言からどれ程の時が流れたであろうか。
三十分は経った気もするが五分位しか経っていない気もする。
それでもわたくしは土下座した姿勢で彼女達が口を開いてくれるのをひたすら待った。
「何をお考えなのですか?」
その声はメイであった。
声は震えており弱々しい。
まさに恐る恐るといった感じである。
「仲間になって頂きたいのです」
「………なら命令したら良いのではないですか? いつもの様に」
その声はウルであった。
メイ同様、声は震えて弱々しいのだがその奥底には強い意志を感じ取る事が出来た。
それは覚悟を決めた者の声である。
「それをすれば本当の仲間とは言えません。 しかしわたくしには貴女方に気安く仲間になって欲しいと言える立場でも御座いません」
「………分かりましたお嬢様。 私達メイとウルはお嬢様の計画に賛同し共に歩む仲間となりましょう」
「ですからお顔を上げて下さい。 お嬢様の綺麗な顔が汚れてしまいます」
実際の所殴る蹴るはされると思った。
もしされなくとも罵詈雑言は間違いなく投げかけられると思っていた。
しかし実際は何もされず寧ろすんなりと仲間になってくれると申してくれた。
そしてわたくしは恐る恐ると顔を上げる。
彼女達の表情を見るのが正直言って怖かった。
「何故………? もしかして報復が怖いのですか? でしたら、わたくしはドミナリアの名に報復はしないと誓いますわ」
「そういう事ではございません。 もちろんお嬢様が憎くないと言えば嘘になりす」
「しかし、お嬢様は貴族にもかかわらず平民、それも奴隷である私達に土下座をして下さいました」
「それは例え演技であったとしても貴族の方が奴隷に土下座などしよう筈が御座いません」
「ですから私達はお嬢様の言葉を信じます」
「ですから私達は、もしかしたら貴族至上主義の方々に一矢報いる事が出来ると夢を見させて頂きます」
「あ、ありがとうウル、ありがとうメイ、そしてごめんなさいっ!」
その言葉を聞きわたくしは二人を抱きしめ謝罪と感謝の言葉を紡ぎながらみっともなく泣き続けるのであった。
◆
「お嬢様、朝です」
「起きてください」
あれからわたくしは泣き疲れてしまい、そのまま眠ってしまったみたいである。
しかし気分は幾分マシであり晴れ晴れとしていた。
それは勿論彼女達に謝罪が出来、そして仲間になってくれた事もあるのだが、やはりバッドエンドでわたくしを殺すキャラクター二人をこちらサイドに引き込めた事であろう。
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