第3話 恐ろしく無い訳がない
もしまだ以前までの価値観が残っていたのだとしたら『殺されるような酷い事はしていないっ!!』と怒り散らした事であろうが、幸か不幸か前世の価値観だけが残っているからこそ今の私のヤバさを理解する事ができた。
色々言いたい事は山程あるがとりあえず私をこんな死亡フラグしかないキャラクターへ転生させて、しかも産まれた時から前世の記憶があるのならばまだしも、しっかりと死亡フラグを立てた状態で前世の記憶を思い出させた神様とやらに「ふざけんなっ!」と心の中で叫ぶ。
もし神という者がいるのであれば、間違いなくこの状況を楽しんでいるに違いない。
しかしながら幸か不幸か私は死ぬ前に前世の気を苦を戻したのである。
であれば、まだ足掻く事はできるので、神とやらが用意したこのふざけた運命に立ち向かうべく、まずはできる事をやろう。
「ウル、面をあげなさい」
私に呼ばれたウルが「ひっ」と小さな悲鳴を上げ震えながら恐る恐る顔を上げる。
私の事が恐ろしいのであろう。
当たり前である。
今まで散々と虐めて来て恐ろしく無い訳がない。
その顔は恐怖に歪みきっている。
「そしてメイ」
「………っ!?」
そして私は、私の隣で気配を消していた、ウルと同じく奴隷の人族であるメイへ声をかけると彼女は恐怖により一瞬だけ呼吸が乱れた。
そして私は、いや、わたくしは腹を決める。
わたくしフラン・ヨハンナ・ドミナリアとして足掻いて見せると。
くそったれた神とやらに一泡ふかしてみせると。
わたくしの異様な空気を感じ取ったのか奴隷二人は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
その表情をさせてしまっている原因がまごう事なき自分であると痛い程理解している。
そしてわたくしは深く深呼吸を一つ。
すー……はー……よし。
「お聞きなさい。時期は来ました。明日からわたくしもはれて高等部となりますわ。 それは即ちわたくしも大人として適用される年齢でもあります。 そしてそれは同時にこの家の、いえ、この貴族至上主義の者達へ一矢報いる事が出来る年齢でもございます」
そしてわたくしはゆっくりと膝を、手を、そして頭を地面につける。
その光景に二人の奴隷は何を見ているのかわからず取り乱している雰囲気が伝わってくる。
当たり前だ。
このわたくしが下々の者、それも奴隷に土下座をしているのだから。
「今までわたくしが貴女達にして来た事はわたくしの謝罪一つで償えるものではない事など百も承知で御座います。 足りないと言うのであれば今この場で気がすむまで暴力を加えて頂いて結構でございます」
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