第16話 夜の報告会

 三日間連続でハーデスとヘルセポネと魔物を狩って、明日は休養きゅうようを取ることになった。

 カツヤは教会の客間きゃくまで生活していて、食事も食堂で取っていた。カツヤが狩りから帰ってくる頃にはたいてい教会の人達の食事は終わっていて、少し冷めた夕食をひとりで取っていた。

 また教会の朝は早く、朝食もカツヤだけ遅いタイミングでひとりだった。教会の人達はカツヤに丁寧ていねい対応たいおうしてくれるが、何となく居心地いごこちが悪いのは確かだ。

 みんな教会に帰依きえしていて、カツヤだけが冒険者のように生活している事も無関係むかんけいではないかもしれない。

 カツヤは狩りから帰ってきて、裏の井戸で身体を洗い、食堂で食事を取って、客間で身体を休めていた。

 ドアがノックされ返事をするとバルバラがやってきた。

 昼間の狩りの様子を詳しく報告した。シスターとしての責務せきむでカツヤの様子を聞きにきているのかも知れないが、誰かに関心を持たれるということがこんなにも嬉しいことだと、初めて知った。

 バルバラがカツヤの話しに興味があるのかはわからないが、バルバラの微笑ほほえみが少しずつ柔らかくなっている気がする。

 日本でのことを思い出すと、勝手にカツヤが自分で壁を作って周りと打ち解けなかっただけかもしれない。

 どうしてこうなったのかわからないし、色々不明な事だらけで不安も多いが、仕事と人間関係は楽しさと嬉しさで一杯だ。


 バルバラが何かを言おうとして躊躇ちゅうちょした。カツヤは冷や汗が背中を伝って行くのを感じた。何か自分がまずいことをしたのかと不安になった。

 バルバラは結局何も言わず、明日は教会の仕事だが明後日は魔物狩りに同行できるそうだ。用件だけ告げると早々に出て行った。

 カツヤは浮かれていた自分が恥ずかしくなった。新しい体験が楽しくて嬉しくて浮かれてしまったが、バルバラは忙しそうだし教会で何か責任を負っているのかもしれないし、あるいはカツヤのことがわずらわしかったのかも知れない。

 まったくの考えすぎなのかも知れない可能性もあるが、おとなしくて自分の意見をあまり言わないバルバラを難しいと感じていた。

 しばらくして、はっと気付く。日本にいた自分もあまり話さなかったり、感情を出さないことで周りの人達に難しいと感じさせていたのではないか。もちろんカツヤとバルバラではまったく立場や状況や生活の環境も何もかも違うので比べることはできないが、今まで目を向けて来なかったことに気付いた。

 カツヤはとりとめのないことを考えながら、昼間の疲れもあってベッドの中で早々に意識を手放した。

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