第13話 ただ喋るだけでは

 翌日、カツヤは一人で冒険者ギルドに向かった。バルバラは今日は他の仕事があり、ハーデスとヘルセポネが魔物の討伐に連れて行ってくれる。

 街の朝はたいへん活気にあふれていた。往来おうらいは行き交う人で混雑こんざつし、空気が弾んでいるようにも思える。

 ギルドの扉を開けると街以上の活気に溢れていた。左手ひだりての食堂は朝食を求める人で溢れ、右手みぎてには仕事を求める人で溢れていた。

 入口近くにいたヘルセポネがすぐにカツヤを見つけてくれた。

 「おはよう、カツヤ。」

 カツヤって呼ばれていたっけ?と思ったが、自然な感じで悪くなかった。

 「おはよう、ヘルセポネ。」

 ただの挨拶あいさつがこんなに嬉しいとは、知らない世界への不安よりも様々さまざまなことに対する期待感が大きかった。

 「ハーデスは掲示板チェックしてるからちょっと待っててね。」

 普通に笑顔えがおでカツヤに話しかけてくれる人を知らない。カツヤも自然に笑顔になる。本当に悪くない。

 「おはよう、カツヤ。たいした依頼いらいなかったよ。」

 ハーデスはカツヤに挨拶し、ヘルセポネに掲示板チェックの報告をした。

 「じゃあ、今日も張り切っていきますか!」

 ギルドを出て、街の門を通り、今日も鬼門きもんの森へ向かうことになった。


 ハーデスたちは慣れているのかもしれないが、カツヤはどこを歩いているのかよくわからなかった。カツヤが住んでいた田舎では北側が山で南側が海だ。太陽は東から南を通って西に沈むので、大体の方角はわかった。日本と同じなら太陽位置から北のほうに向かっていると思うがよくわからない。

 ハーデスが先頭を歩きながら、冒険者という職業について話してくれた。常設の依頼である魔物の討伐がメインの仕事になるが、盗賊退治や貴人の護衛や貴重素材の入手など様々な依頼があり、報酬も割が良かったり悪かったり様々さまざまだそうだ。

 「この辺りからボチボチ魔物が出るよ。」

 ハーデスが言った。

 「先頭替わってくれるかい。たくさん戦ってみたいんだ。」

 あせっているわけでないが、待ちきれなかった。

 「ああ、カツヤが魔物の討伐に慣れるために来ているんだからもちろんいいよ。このまま真っ直ぐ北に向かうと魔物が強くなるし数も増える。東に行くと比較的魔物は強くないしそのまま行けば国境こっきょうにたどり着くよ。」

 ハーデスががりながら教えてくれた。

 「北に向かいたい。もし危なかったら助けてくれ。」

 カツヤは言った。

 「もっと森深くやよほどの集団じゃないかぎりカツヤなら大丈夫そうだけどな。」

 ハーデスは言った。

 「何だか今日も出番ない感じじゃない?!」

 ヘルセポネが後方から言った。

 「ヘルセポネがどうやって戦うのか見てみたいな後で見せてよ」

  カツヤは振り返って言った。

 「まっかせなさぁーい!」

 ヘルセポネが声を弾ませて言った。

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