第6話 適性検査を受けた
部屋を出て案内されるとき、ここが教会だと説明された。日本のお寺はもっとこじんまりしたところだったが、ここはかなり広いようだ。
礼拝堂はかなり大きな空間だった。厳粛で荘厳な感じが神秘的だ。モヤに飛ばされてきたのか何が起きたのかまったくわからなかったが、何もないあの村で生きることに絶望感を抱いていたカツヤは、今の状況が楽しくてしかたなかった。
案内された部屋は事務所のような場所で机の上に大きな水晶が乗っていた。事務員のような人に手をかざすようい言われて、手を乗せた。特に何もなく、事務員さんらしき人を見た。
「魔力ゼロです。」
「何と勇者様なのに魔力ゼロとは!?」
ぺトロ教皇が大きな声で驚いた。
「魔力って何ですか?」
江戸時代の日本に生まれ育ったカツヤが魔力を知るはずもなかった。
魔力ゼロの衝撃から落ち着きを取り戻したぺトロ教皇は落胆を隠せなかった。教会主導で勇者の召喚を行ったということももちろんだが、教会が今抱えている大きな問題の救世主に勇者がなってくれると勝手に期待していたのだ。
デルメル様の神託にはいくつかの予言も含まれていた。それは人間の危機である。
近頃魔物の活動が活発化していて、多くの被害も発生している。街には少なくとも一つはデルメル教の教会があり、その役割として治療がある。魔物被害の拡大と共に教会に住民が押し寄せ、対応の遅さや治療費負担の不満の矛先が教会に向けられるようになったのだ。
魔物に対処して住民の安全を確保するのは国や貴族さらにギルドや冒険者に責任があるはずだが、住民の不満は教会に向けられている。教会の拝金主義が強いことと無関係でなく、治療の頻度が上がることによって、治療費の高さにより大きな不満を持つようになったのだ。
ぺトロ教皇は現状の打破のためにデルメル様が勇者を召喚する方法を教えてくれてのだと思っていた。つまり自身の信仰が神託を起こさせた。それはすなわち自身の正当性を担保してくれるものだと疑わなかった。
自身の保身しか頭になかったぺトロ教皇は、勇者が最近の教会への逆風を止める希望にならなそうなことに心底がっかりして、部屋から出ていった。
デルメル様の神託には勇者の召喚方法とその理由も含まれていた。
今から三年をめどに益々魔物の隆盛起き、やがて魔王が誕生する。対魔王の切り札として勇者を召喚することというのが、神託の内容であった。
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