第3話 子供が少年に
カツヤが町の寺子屋に通うようになって幾年月が流れ、あどけなさは残るものの精悍な顔つきの少年になっていた。片道一刻の通学を続けた事と剣術に打ち込んだことで、少年とは思えないほどの強靭な肉体を手にしていた。父親は中肉中背でとくに肉体的な印象もなく母親はどちらかといえば小柄な方だった。いくら剣術に打ち込んだとはいえ、自分でも驚くくらいの身体能力を発揮するようになっていた。
ぼっちなのは相も変わらずだけど同年代以外の人とはそれなりに交流する必要性に迫られ、それなりの社交性は身に付いていた。
一番偉い武士の子供は相も変わらずカツヤを馬鹿にしたりしてきたが、何年も下らないことをやり続けられる事が理解不能だとあきれるくらいだった。無視はできるが腹が立たないわけではない。剣術の稽古中に木刀でおもいっきり打ち付けようかと思うのだが、一番偉い武士の子供は決してカツヤと立ち合おうとはしなかった。
ある日カツヤは寺子屋からの帰り道、半分を超えたあたりの細い山道を登っていると、道端にモヤのような見たこともないものが浮かんでいた。ちょうど人間が一人包めるくらいの容量で、それほど濃くないモヤにもかかわらず向こう側が透けて見えなかった。それくらいのモヤが浮いているのも濃さも色も質感も不思議な違和感で思考が停止した。
立ち止まってモヤに目がくぎ付けになり動けなくなった。身体が動かなくなったわけではないと思うけど頭が?マークで理解が追い付かなかった。状況の異常さで感覚がおかしくなっているのかよくわからないが、身体が硬直してしまっていた。あるいは頭から指令が行かないのかもしれない。
身体がふわっと浮遊感に包まれたと思ったら、落下しているのか浮上しているのかわからないが、すごいスピードで移動している感じがした。意識が飛んだというか、ぐるんぐるん回っているというのか、方向感覚が滅茶苦茶な状態にあって、その最後の記憶は先ほど見た不可思議なモヤの中に引き込まれた自分だった。
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