第24話 決戦(2)
2400ジャスト。ケプクのキャンプを出たova50機は、5キロ先の市街に向かった。
周囲はまばらに灌木の生える平地。月のない夜だったが、暗視スコープを装備する各々にはビルの密集した市街地まで、視界は開けていた。
だから、キャンプをでてしばらくして。市街地に近いほどよく街を遮蔽する岩地の前佇む、HFの姿を数百メートル先から認めることができた。
「やっぱり、バレてたか」
タカシは密かに、自嘲を漏らした。
視界にまず飛び込むのは最前列の漆黒のHF。数は五機。その背後に、数十機を数える従来型HFが待機しているのが見えた。
襲撃が予期されていること。それはある程度想定内。敵の迎撃に備えた作戦が練られていた。しかし、予想外だったのは、黒色の装甲を持つ敵機のフォルムがovaと酷似していること。その一点が、精鋭兵たちをざわめかせた。
「なんで、カルディアにovaが、あるんだ?」
スリディビが不穏な空気を察知し、苦々しく呟いた。
「知るか。見よう見まねで作っちゃったんだろ……って感じでもないな」
タカシは緊張を隠す為に、冗談めかして言ったが。それが上滑りしていることを自覚した。
その場にいる誰もが、自分たちが優位先制するはずだった行為が、周到に用意された罠へ自らを落とす行為だったことを薄々感じ取っていた。
様子見をしようと一歩前へ踏み込んだタカシを牽制するように黒のHFが構える。そのパイロットと即座に連動するような滑らかな挙動。乗り馴れた精鋭兵にはその実力が手に取るように一目で分かった。
目の前の機体は、どう考えても切り替え後の機化種が機乗したovaに匹敵する力を持っている。その割に、動きは統制がとれており、アンコントロールといった感は全くない。
明らかに想定を超えた、HFの存在。
「聞いてないな」
スリディビが、舌打ちした。
「どういうことだ?! カルディアは新型に匹敵する――それをも凌駕するHFを独自開発できるというのか?」
予想をはるかに超えた存在の出現に、然しものスリディビも動揺を隠せなかった。
「テオ、一斉に強制切り替えに移れ」
タカシが冷静に回線で命じる。
遠隔操作のボタンの一つをテオが握っているはずだった。
「イエス、サー」
瞬時に返事が返ってきた。通常であれば、ほんの一秒とかからずに事が起こるはずだった。
しかし、数秒経っても変化は起きない。
訓練生たちの回線は、先ほどと同じ。ただこの事態への恐怖に支配されていた。
「どういうことだ? 操作したのか? テオ」
「はい。確実に暴走化の装置は作動させました。しかし、反応しません!」
テオは珍しく、焦りを露にしていた。
予期せぬ強敵の出現。そして、その事態に追い打ちをかけるかのような暴走装置の不作動。余談を許さない、もしくはもうすでに、もう取り返しのつかない事態となっているのかもしれない。そう感じていた。
「一機たりとも、です」
「ディビ?」
もう一つの起動ボタンを握るスリディビへ問う。返答は間がなかった。
「……こちらもすでに操作を試している」
「引くぞ」
判断は一瞬だった。
テオの予感と、タカシの予感は一致していた。
これは、挑んで勝てる戦いではなかったのだ。
「バカ言うな! 目的を達せずにこのまま帰ったところで長期戦に持ち越しになる。それを避ける為の奇襲だっただろうが」
副兵長のスリディビが叫んだ。
暴走化の制止。一見でovaの格上だと分かるHFの登場。そして、今回カタをつけたいのは帝国。貴重なマテリアルを抱えるカルディアは、長期戦を望むことが予想された。
撤退の方に勝算があることはスリディビも承知だった。しかし、それを帝国上部が呑むとは思えない。
「ディビ。奇襲は失敗した。ここでovaと散って敗北しようが、撤退しようがいずれにせよ長期戦になることは必至だ。であればここに有能なパイロットとovaのデータを残すより、さっさと引き上げた方が勝算がある」
カルディアはこの場で勝敗を決することを焦っていない。まだ、今からなら犠牲を最小限に留めて引き返すことが可能なはずだった。
「すべて俺の命令だ。本部に音声で通信記録を送っておく。俺がすべて、責任をかぶる」
タカシは断固として言った。
「だから、引け。ディビ。命令だ」
「すでに帝国は戦いを挑んでしまったんだ。カルディアからの資源輸入は途絶える。Ovaに搭載されたレアマテリアルはこれからの戦いに必ず必要になる。だから、お前は一機でも多く帝国領にHFを連れ帰れ」
「お前は?」
「俺はここに残る」
「どういうことだ?!」
その時、背後から大音響が轟いた。
煙が立ち上る。重量が優に十トンを超えるHFが倒れ込むとき、その特有の轟音があたりに響く。
「訓練生の機が、一機攻撃されました! メーター類は完全に沈黙しています」
音の付近にいた精鋭兵から通信が入る。
「誰にだ?」
スリディビが問う。
「……通しナンバー33。選抜のロビン・ラスキンです!」
精鋭の回線が、静まった。
「寝返ったということか? 動作停止している訓練生の機は、抹消措置をしておけ」
スリディビが苦々しげに。即座に指令を下す。
その命を受けた精鋭兵が肩口の装備を、ロビンの攻撃の対象となり地に伏したHFに向ける。
まさにその瞬間、精鋭兵にナンバー33ロビンが切りかかった。肩口から発せられた光線の照射先がわずかに逸れ、危うく密集している味方機を消しそうになる。
「……ディビ、今の状況では抹消の達成より撤退を優先しろ。犠牲が多くならないうちにな」
タカシが呟くようにいうのと同時に。
カルディアの黒いHFが手招きするような素振りをした。そちらに向かい、帝国側からカルディア側へとナンバー33が歩みを進めた。
思わずタカシは苦笑する。
「俺等に匹敵する強敵はあの、五機と、」
タカシの機体の目の前で帝国兵であるはずのova-No.33が向き直り、武器を掲げた。それは真っすぐに。タカシのコックピットを狙っている。
「……ロビンだ。みすみす帰してくれるわけがないだろう? だから、俺が食い止める」
「なぜ、お前がそれをする必要がある?」
「さっきも言っただろう? これからのために、一機でも多くのovaが必要になるからだ。一番被害を食い止められる方法を俺は選択している。それに」
タカシは常の通りに、ごく平静に発言する。
「どうせおめおめ帝都に帰っても処刑レベルの大失態だ。だったらこの命を精鋭兵のために最大限に有効活用する。……早く行け、一歩でも遅れたら餌食だぞ」
そう言い置いて、スリディビとだけ通じていた回線を精鋭兵全機に開く。
「精鋭に告ぐ。兵長の権限を以て撤退命令を下す。スリディビを筆頭にお前等が18機。すでに機能停止している者を除いて選抜・訓練生29機。訓練生はOvaの操作もおぼつかない奴らだ。撤退にははっきりいってお荷物だろうよ」
回線越しにも、異常事態への皆の緊張が伝わってくる。その人間らしさに、タカシは仲間への愛おしさを感じた。
「だが、一機でも帰るまでに犠牲にしてみろ」
一瞬間を置いて。
「……末代まで祟ってやる」
――オチ考えてなかったな。最後を外したな。
緊迫の状況の中で、精鋭兵の中に一瞬そんないつもの空気が流れた。タカシのユーモアは、立て続けの想定外でダメージを受けていたその場の空気を持ち直すのに功を奏した。
「分かった」
ほんの一瞬置いて。ハーケンが嘆息まじりに応えた。
タカシ・スリディビ、そしてハーケン。たった三人の同い年の精鋭兵。同じ時に施設に入り、同じだけの時間を過ごした。二十年以上の長い付き合いだ。
だから、分かる。一人で決断したタカシに、説得は無駄だった。
「残らずつれて帰る。必ずな」
応えて、すぐにスリディビに発破をかける。
「ディビ、行くぞ。お前が撤退のリーダーだからな」
ハーケンの言葉にスリディビは意を決したように、回線をallに開いた。
「全機に告ぐ。これから帝国領内へ一路最短距離で撤退する。カルディアは平時、低地にはHFを配備していない。ケプクを抜ければあとは平地を最短で二十五キロ」
「二十五キロ……近い近い」
精鋭たちが口々に笑った。
「各精鋭兵に告ぐ。ナンバー若い方から十二機。訓練生を一機たりとも取りこぼさず誘導し、撤退しろ。私を含む他六機が殿(しんがり)をつとめる。ケプクを出たらまたフォーメーションは整えるが、外敵はこちらにまかせ、訓練生のフォローに集中しろ」
一気に言って、一息つく。
「これは兵長からの伝言だ。『一機でも帰るまでに犠牲にしてみろ末代まで祟ってやる』だそうだ」
スリディビは、あえてもう一度、撤退する兵士を鼓舞するように言った。
「兵長のいうことなら、仕方ないねぇ」
古参の精鋭兵が声を挙げた。
「いざ、帝都へ」
その言葉に鼓舞されて、訓練生達は自分たちの精一杯の操作で死地を乗り越えることを決意する。
訓練生29機、精鋭兵12機が敵に背を向け、一瞬先にケプクを発った。
外敵駆除の役目を担う六機はしばしその場で敵方の様子を伺う。
撤退の気配をみせた帝国軍に対して、カルディアの兵は動かなかった。
長期戦の有利をすでに認識している風のその様子に、スリディビは歯噛みした。
「……すべてむこうに用意された寸劇だったというわけか」
悔しいが、そう認めざるを得ない。
「いくぞ」
スリディビの声がけに、五機は先に撤退した四十一機を追うべく、方向を転換する。
ただ、一機のみが動作をせず、その場で停止した。
「兵長、あんた残るの?」
その機から、タカシにむけて通信が入る。
「ヤンか?」
タカシはその問いを予期していたように、滑らかに言葉を返す。
「お前は、逆に。帝国に戻るのか? ロビンのように帝国からの離反をお前が望むなら、良きように振る舞ってやるぞ」
「……戻る。それが僕のけじめだから」
ヤンはきっぱりと言い切って、後の言葉を続けた。
「あんたも一緒に戻ってもらう」
「なぜ?」
「レジがいる」
拘束されて、精神を極限状態に置かれているレジの心の平静を取り戻す為には、彼女が無条件に信を置いているタカシの存在が不可欠だと、ヤンは考えていた。
「レジはあんたがいないと、ダメなんだ」
「甘えんなよ」
タカシはそれを一笑にふす。
「お前のけじめってやつは、他人に力を借りないと達成できないことなのか? レジの支え。それは“お前”の役目だろう! そのために、お前は自分の意に反しても帝国に帰ると決断したんだろう?」
畳み掛けるように、言う。
「お前がそれを譲れないように、俺もここに残ることは譲れない」
頑として、ヤンの頼みを拒否した。
ヤンも薄々、自分の覚悟の弱さを自覚していたから、その言葉にぐうの音もでない。
そんなヤンの様子を感じて。タカシはさらに煽る。
「帝国に帰ると決めたお前に忠告しておく。
状況が許さないにしても帝国のいうことばっかり聞いてたら。俺みたいになるぞ。がんじがらめで、つまらなそうで、一番嫌〜な大人像だろう? 帝国の思想に違和感を抱かないうちはいい。だが、お前はすでに帝国と自分との乖離を自覚している。その状況で帝国を一度諾としたら、そのしがらみは一生お前にまとわりつく。だから早いとこ見切りをつけろ。決して自分を偽るな」
タカシはその言葉が、ヤンの心に届くように切に願った。
「わかったら、行け。レジによろしくな」
ヤンは、その言葉には応えなかった。
様々な思いから、後ろ髪を引かれる思いがした。それでも、レジのためにも自分のためにも。この男はまだ必要だった。最後まですべてを見通され、圧倒的にやりこまれて。そのタカシの存在は、いつまでも超えられない壁として自分の中に存在し続けるに違いない。
「ヤン。どうした?」
スリディビが動かないヤンに、鋭い口調で問いかける。
「うるさいな。兵長への別れの挨拶をしてただけ。今、行くよ」
自身の中の葛藤を一片たりとも表に出さず、ヤンは滑らかに機を方向転換させ、スリディビと並んでHFを発進させた。
* * *
ロビンと、基盤を破壊された一機。そして、タカシ。
帝国のovaが三体、その場に残った。
「兵長、なぜあんたは残る? カルディアは長期戦への備えがある。今、去る者は追わない。あんたも逃げれば助かる」
「ロビンか? 俺はここに残るよ。帝国に帰っても、また好き勝手に爺どもの屁理屈につき合わされて挙げ句の果てに無い罪まで引っ被らされて処刑ってオチしかないだろうしな」
「この奇襲の失敗は、あんたのせいじゃないだろう?」
「誰のせいかなんて関係ない。帝国が“負けた”のではなく、個人の失態に由来すると理解させることが重要なんだ。引っ被せるには俺が適任だろう」
自嘲気味にタカシが笑う。
視線を、薄く煙を吐き出しながら横たわり沈黙しているovaに向ける。
「あの機体……ナンバー15、アンだろう? お前、わざとあいつを切り崩したな」
「……」
「帝国に死亡報告を出しておいてやるよ。それでアンは晴れて自由の身、だろう?」
「なんで」
――そこまでわかっていて?
タカシはロビンの疑問に次ぐように、半ば被せて言葉を発する。
「俺も覚悟決めて後腐れなくなった今だから、言うけどな。
ロビン、お前たちにはせいぜい帝国の圧力や束縛をものともせず引っ掻き回してほしいんだよ。死ぬまで帝国の犬だった俺がそれをいうのがどんなに身勝手な事かぐらいは自覚してるつもりだが。だからこそ、お前たちに自分の行く末くらい、自分で決められる人生を送ってほしいと思うんだ」
その告白に、ロビンは沈黙する。
「っはは。こんなこと言える日が来るとは思わなかった。全部、遅すぎたけどな。俺は精鋭兵長としては失格だな」
タカシは自分の発言に、さも可笑しそうに笑った。
「あーすっきりした」
一瞬後、タカシの明るかった口調は一転して、その低い声を絞り忠告する。
「離れておけ。なるべく範囲は小さくするつもりだが、なんせ自爆なんて初めてのことだから予想もつかない」
「兵長。……他に道は、ないのか?」
ロビンは揺らがないその覚悟を感じ、素直に後退しながら、かすれた声で問う。
「俺は、たくさんのことに目をつむって、数限りない事柄に気付かぬ振りをし、自分を偽ってここまで来てしまった。だから、もうこういう手段でしか自分を解放できない」
ロビンは背後のD-daに手振りで後退の合図を送った。
「ディビにだけは少し後ろめたさがあるな。あいつの心だけは最後まで溶かすことができなかった。そのまま先に俺だけ肩の荷を降ろして楽になっちゃうからな。ごめんな、と機会があったら伝えてくれ」
最後の声は、穏やかだった。
次の瞬間、膨大なエネルギーを持った光が、天に向かって伸びだ。
辺りが平常の様子を取り戻すと、ロビンはコックピットから降り立った。
HFの原型は跡形もないタカシの機の残骸を素通りし、対角線上に横臥する自分が抹消から救ったovaに歩み寄った。
外部開閉ボタンを操作し、ハッチを開く。
白のような金髪。固く閉じられた目。強気そうな表情は、意識を失っていても健在だった。
「おい、起きろ」
頬を軽く叩く。
意識を取り戻す狭間で、アンは顔をしかめた。うっすらと、灰色の瞳が目を開く。
「……ロビン?」
徐々に自分を取り戻しつつあるアンは、置かれた状況を理解するべく必死だった。
「奇襲は……?」
「失敗だ。兵長は死んだ。副兵長以下は皆帝都に撤退した。そして、俺らはカルディアの手の内にいる」
「死、んだ? あの、兵長が?」
アンの目が、極限まで見開かれる。
「兵長ですら帝国の思惑の犠牲者だったってことさ。最後にお前にプレゼントを残していったぞ」
アンは、覚醒したばかりでまだはっきりと掴めていない自分の現状を必至に手繰るように、ロビンに食いついた。
「……どういうこと?」
「アン・ギネス。帝国人のお前は、死んだ」
“プレゼント”という単語。その意味を、アンは理解する。
「お前の帝国との縁。背負っているものはすべて消えた。これからお前はどう生きる?」
すべてを知って、自分(アン)を救いたかったと頭を下げたオリバー。すべてを知りながら、自分(アン)を解放したタカシ。
それは、この世をどうにかして変えたいという彼らのメッセージに他ならない。それに、お前は乗るか、乗らないか。と。彼らの問いをいまロビンが改めて訊いている。
自分は今、生きている。両親にいつの日か、隠れることなく正面から自分の家の玄関に立ち、ただいまと伝えたかった。そのためには、その日を勝ち取る為には、闘わなければならない。
アンはロビンに、その気合いをぶつけた。
「当たり前だろ。帝国をぶっつぶす!」
ロビンは意を得たり、と拳を突き出した。アンは戸惑いながらも、自分の拳をそれに当てる。
「決まったな。じゃあ来い」
アンに手を差し伸べて、コックピットから引き上げると、そのまま手を引いてマシンから地面に降り立った。
先刻まで、タカシの機体であった残骸に向き合う。
デンガールと、D-daに乗り込んでいた巡警隊隊長たち。そして、周囲を取り巻くように包囲していたHFに機乗していたカルディア人がコックピットから姿を現し、歩み寄る。
「……」
誰の口からともなく、唄が流れた。
ブレスタンの面々が、鎮魂歌を唱う。旋律がないようでいて決まった節を踏む、定型詞。一人が長く音を引いたかと思えば、他の者がそれに幾重にも音を重ね、調べが大きく膨らむ。時に寄せるように太くなり、引くように細くなり、その震えるような抑揚がロビンとアンの、心を打つ。
兵器の跡形もない。ただの鉄屑と化したHFに向かって、ロビンは呟いた。
「あんたは、何にも負けず人を愛した。だから、あんたの部下だった精鋭兵たちはどんな状況下でも一番大切なものを失わなかったんだ」
アンが静かに頷く。
デンガールが二人の傍らに並んだ。
「国を国として存在させるのは、人間だ。だが、そこに生きる人間の意思は何一つ働かない。そんな今の帝国は内実のない、空っぽの箱。虚だ」
鎮魂歌の調べに乗り、歌うように美しい抑揚をつけて発せられるデンガールの声は、その場にいる者の耳に隈無く入る。
「この男は生まれたときから虚国の戦士として生きねばならなかった。虚国の犠牲者だ。誰が定めたかすら、その本質すら誰も説明することのできないような茫漠とした目的のために生きるしかなかった」
この期に及んで、帝国との戦いはもう避けられない。そしてその戦いは、ただ外敵から自領を守る――そんな単純なものにならないことは明白だった。その本質を、皆に含めるように、通る声が響き渡る。
「だれも正しいとは思っていない。だが、それを正しいとする観念が人の心を離れて存在し、それが人を動かす。そんな異常な事態に風穴をあけるのが俺たちの使命かもしれない」
デンガールはブレスタンの風に、その長い髪をなびかせて遠く帝国領の方向を見つめた。
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