082-真の絆

戦いは終わったものの、レーダーには何かが映っていた。

こちらに向かって高速で飛んでくる。


「こちらクラヴィス、クロノスの暴走は停止しました! そちらの目的を述べてください!」

『目的など不要。王家に逆らう者には死を』


通信を交わしたが、会話にはならなかった。


『どうしましょう、クロノス?』

『....そーだな、オレの大気圏離脱用ユニットは、基地に置いてきたしな....』


クロノスの翼である大気圏離脱用ユニットは、ボディの再生時にはついてこなかった。

つまり、逃げることはできない。


『そういえば、私のバトルアーマーも修復されましたね....』


それも、ブルーカラーで。

機体性能に変化はないようだ。


『私が抱えて飛べば、速度は遅いですが逃げられます』

『それよりよ、どうせ攻撃してくるなら、オレ達二人で戦えばいいじゃん!』

『二人で....? まさかクロノス、自力で動けるのですか?』

『勿論.....ただ、正確な演算が必要な武器は使えないけどな...』


私の存在意義が――――などと、もうそんな事は言わない。


『分かりました、やりましょう....ただし、攻撃を待ってからです。あとで提出する証拠が必要ですからね』

『その辺なんだよな....』


私はクロノスのコックピットから降りて、バトルアーマーを装着する。

いつも通りのUIが表示されるものの、そこに私は違和感を覚えた。

......右端に、クロノスの顔のようなマークが表示されていた。


『あ、それは押すなよ! まだ早い』

『早いとは....?』


必殺技ボタンのようなものだろうか?

しかし押すなというのであれば、押さないのが選択肢としては正しい。


『行くぞ!』

『ええ!』


当然といえば当然だったが、現れたヘリ達は、射程に入るや否やミサイルで攻撃してきた。

クロノスが私を腕で包んで守ってくれる。

その映像を記録し、私は腕から出る。


『クロノス、我々は王家を名乗る不明な勢力から攻撃を受けました――――排除します』

『おう、行こうぜ!』


周囲から武装ヘリが7機近づいてきている。

私は即座に、西方面のヘリ4機を引き受けると決め、クロノスに3機を任せた。


「即刻攻撃を中止せよ、繰り返す、攻撃を中止せよ。これ以上の攻撃をすればこちらも反撃する!」

『くどい! 王命に歯向かう人形風情が...死ね!』


ヘリに吊り下げられていた機関砲が、こちらを狙う。

私は容赦なくランチャーを展開し、コールフレアを放つ。

ヘリは素早く旋回するが、巻き起こった火球に一機が巻き込まれる。


「...!」


素早くロックしたヘリに、私は両腕のエナジー関砲マシンガンを放つ。

見事な回避機動だが、人間が操縦している以上簡単に位置を読める。

包囲するように動くヘリに、私は両腕のプレートを延長して展開し、エネルギーシールドを張ってミサイルを防ぐ。

そして、ヘリの一機のローターを弾き飛ばした。


「これで二機」


ヘリは制御を失い、海へと落下する。

すぐに私は反対方向を向き、偏差射撃の要領でプラズマキャノンを放つ。

ヘリはプラズマキャノンの融合地点に突っ込み、文字通り蒸発した。


最後の一機を狙おうとした私だったが、


『はい、ドーン!』


凄まじい精度で放たれたライフルの一撃が、最後のヘリを吹き飛ばした。

クロノスはそちらではないはずだと振り返った私だったが、


『悪い、一瞬で終わった....』

『ああ....そうですか』


クロノスはこちらにライフルを向けた姿勢で立っていた。

彼を襲っていたはずのヘリの姿はすでにない。

.....地力が違い過ぎる。


『だーっ、悪く考えるなって! お前がどんなに強くたって、弱くたって――――オレはお前と一緒にいたい』

『....分かりました』


私はクロノスのその大きな手と、フィストパンプしたのだった。

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