2話 Even "caus-free results" are feasible.

 もう朝か。とりあえず朝ごはんでも作ろう。でも、なにかがおかしい気がする。

 寝ぼけているのかな。顔でも洗おう。水音がやけに頭に響いてくるな。やっぱりなにかがおかしい。

 料理を一人でやるのは大変だし、もう一人「私」を出現させよう。

 あれ?

 出てこない。調子が悪い?そんなことは今までなかったのに。

 仕方がない。とりあえず一人で作ろう。

 痛ッ。なに?殴られたみたいだけど後ろには何もないし……。

 あれ?なんでこんなところに銃なんて。こんな危ないものは家になかったよね。でも、なんか持ってみたい。

 意外と軽いんだな。撃ってみたいな……。流石に良くないよね。

 でもセーフティーが付いてるって聞いたし……。


 バンッ


 ん?私はなにをしていた?重役を撃って……。

 力はどうなったんだ。さっきの夢のようなものでは使えなかったけど。

 普段使うように力を込めてみたが、何も起こらない。いや、起こってはいる。でも、ほとんど使えていないのだ。

 とにかくここはどこか。周りには廃れた医療器具のようなものがある。

 つまり廃病院のようだ。

 そう思った瞬間、目の前に人が現れた気がした。だが何もいない。これも夢なのかな……。

 次の瞬間、本当に男が立っていた。男は棒立ちだ。だが、私の体が持ち上げられて首を絞められている感覚だ。

 まさかとは思ったが、因果律の操作能力?

 因果律をいじれば「原因のない結果」すらも実現可能だ。それなのだろう。だが、私にはそうなることがわかっていた気がする。

 私は相手の足に向けて思いっきり蹴りを打ち込んだ。

 だが「原因」がないのならばこの男を首が絞められている間に殺す、または気絶させなければ……。


 蹴りなんかでは気絶しないことは明白だ。ならどうするか。

 私の今までの能力――「量子重ね合わせ」の力は完全に消えたわけではない。出現させるのも、せいぜい腕一本くらいならできるかもしれない。

 「量子重ね合わせ」で観測されない限りは2つの場所に同時に存在できる。それを利用して攻撃すればいい。

 腕に力を込めるイメージで、出現させたい場所を明確にする。場所は男の後ろ。

 今観測されたら腕が飛ぶかもしれない。攻撃した瞬間に消せば飛ばずに済むか……?

 思いっきり力を込めて殴りつける!

「ぐっ」

 案の定、右腕は飛んでしまった。だがいまはどうでもいい。男は少しふらついている。

 そこに私は思いっきり蹴りを叩き込んだ。

 男は床に倒れ込み、首は自由となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

多世界解釈による私の冒険譚 月簡 @nanasi_1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説