最初に忘れるのは、声
あきかん
最初に忘れるのは、声
和田島イサキは人類の財産だ。と、誰かが言っていた。名も知らぬ他人ではない。名を知らぬ知人といった所のその人の言葉を借りるのならば、「和田島イサキさんの言葉で世界は少し優しくなる」という事らしい。
わからない。余りにも抽象的なその言葉を理解するすべを私は持たない。確かに、和田島イサキの言葉には魔力がある。紡がれるその言葉は独特のリズムがある。それは詩であり、祝詞であり、呪いでもある。といった具合か。
しかし、私に和田島イサキに対して特別な感情があるわけではない。それこそなの知らぬ知人である彼ほど情熱的に語れる訳ではない。
それでも、和田島イサキの言霊に私の感覚は狂わされた。ある日、和田島イサキは言った。「稲庭紺は女である」と。最初に反応したのは藤原さんだった。私はかの人を神と崇めていた。その人が、「稲庭さんはかわいい美少女である」と仰るので、私も稲庭さんを美少女と認識するに至っている。いや、もとから稲庭さんは美少女であったのだ。
話がそれたが、和田島イサキの呪言の影響下に私もあるという事だ。それほどの影響力がある。それほどのカリスマ性かま和田島イサキにはある。まさに世界の宝だ。財産だ。と言われても納得してしまう。
しかし、財産?とも思ってしまう。あの名も知らぬ人がそう言っていたが、負債も財産である。どのような残虐な人間も、生きているだけで他を害する無能も、そして和田島イサキも、等しく世界の財産だ。それなら、財産の価値が失われる時はいつか。わからない。10年来の疑問だ。
結局のところ、経済とは覚めない夢だ。私達は覚めない夢を見せられている。その夢が覚めると何が起きるのか。わからない。
和田島イサキが世界の財産だとするのなら、殺すしかない。殺して無くして消え去って、それで世界から財産が無くなるのなら。
殺すしか無かった。和田島イサキがそこまで価値のあるものならば。この世から消し去るべきだ。
最初に忘れるのは、声 あきかん @Gomibako
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