秋
第14話 旅人さん
「こんにちは、旅人さん。クォーツアイランドへ、ようこそ」
私を出迎えてくれたのは赤い髪をした少女だった。
「こんにちは。君の名前は?」
「私はルビーだよ。よろしくね」
「ああ、よろしく」
「ここはクォーツ学園。私が通ってるんだ。今日はお休みなの」
「勉強は楽しい?」
「う~ん。勉強は普通かな」
「そうか。僕もそれは同意かな。得意な教科はあるの?」
「体育と生物かな」
見るからに活発そうな彼女が真っ先に体育を挙げたのは納得がいった。
「僕は物理が好きだったな」
「へえ、物理なんて難しいのに、すごい!」
「僕は君と違って体育が苦手でね」
「そうなんだ。身体動かすのって楽しいよ」
「今はもっと真面目にやっておけばよかったって思ってるよ。旅人には体力が必要だからね」
「旅人さんは今まで、どんなところを旅してきたの?」
「色々だよ。砂漠で蜃気楼を見たり、綺麗な花畑を見たり、崖の上からの絶景を見たり、さ」
「クォーツアイランドでも見られるよ、絶景」
「来る時に見たよ。綺麗な海だね」
「まだまだあるんだよ! クォーツ鍾乳洞とか」
「ああ、それも旅行のガイドブックに書いてあったね。見に行くつもりだよ」
「じゃあ、後で案内してあげるね!」
「ありがとう。助かるよ」
「ここが、一番美味しいレストランだよ。不思議レストランっていうの」
「ちょうど、お腹も空いてきたし、ここでお昼にしようか。君も一緒にどうだい?」
「え、ありがとう!」
私はルビーおススメのオムライスを一緒に食べた。
「美味しいでしょ」
トロッと蕩けた卵がデミグラスソースのかかったオムライスに混ざっていく。
「うん、美味しい」
食事を済ませ、街中を歩いて行く。
ルビーは街の人気者で色んな人から挨拶をされている。
ルビーも、それに応えている。その関係性が良いなと思った。
「ここはクォーツ博物館だよ。島の歴史や自然について学べるよ。隣には研究所があって」
「ルビー、いらっしゃ~い」
「メープルさん!」
「この子は?」
「私の先輩でクォーツ学園の生徒会長をしてるの。この研究所の娘さんでもあるんだよ」
「良かったら、私が解説役やりましょうか?」
「え、いいの?」
「勿論」
「じゃあ博物館巡りに出発~」
「おお~」
「クォーツアイランドは太平洋の海の真ん中に位置する島です。比較的、温暖な気候ですが四季はあります。島名はクォーツ、水晶が取れることから命名。政治は王政で、現当主はルビーのお祖父さまであるエメラルド様。歴史は新しく、エメラルド様が世界を旅して仲間にした精霊、王、神が島民となっています」
「あのフシギさんとかも神なんだよ」
「そうなんだ」
神は人の姿にもなれる。もしかしたら、この島はすごいところかもしれない。
その後もメープルは各展示物について熱心に解説を付けてくれた。
「ありがとう」
「いえいえ、ゆっくりしていって下さいね」
「次はクォーツ鍾乳洞へ行こうよ!」
鍾乳洞の中は宝石が輝き、発光していた。
「綺麗だ」
「でしょ~」
私は夢中で写真を撮った。
そういえば、と思い、ルビーにカメラを向ける。
「君を撮ってもいいかい?」
「いいよ!」
ルビーはニカッとした笑顔を見せる。私はシャッターを切る。
「ねえ、旅人さんは、これからどうするの?」
「また違う国を旅するよ」
「いいなあ。私、この島から出たこと全然ないんだよね」
「出たいと思うかい?」
「そりゃあ色々見たいと思うけど。お祖父ちゃんがどう言うかな……」
「君は、どうしたいんだい?」
「私は……」
それからルビーに案内されて宿へ向かった。
宿はおもてなしの精神が息づいていて、とても満足した。
次の日の朝、私はクォーツアイランドを出発する。
「またね、旅人さん」
「ああ、また」
ルビーの今後の人生に幸あれ。
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