第2話 氷海セイウチ

氷海セイウチは名前の通り、セイウチである。


 いつも、ピシッとした綺麗な服を着ており、郵便局長として働いている。

また、新聞を作っているのも氷海である。

氷海は、インテリなセイウチなのだ。

そして、ルビーのお世話係も担っている。

「ひょ!」という鳴き声を発する。

「こら~、待つひょ! ルビー!」

「待ちませーん」

「経済の授業を受けるひょ!」

「嫌でーす」

 ルビーは足が速かったので、氷海では追いつけなかった。

「ひょ、また逃げられた……」


 仕方なく自分の仕事を進めることにする。

「夕刊配達行ってきます!」

「ああ、行ってらっしゃい」

 氷海はバイトの氷牙セイウチを送り出した。

「明日の新聞も作らねば。……氷星、何か良いネタはあるひょか?」

「学校の入学式はどうですか? 今日、取材行ってきましたよ」

「じゃあ、一面はそれで」

「ラジャ」

 氷海は机に向かい、連載コラムの執筆に入る。春のことを書くつもりだ。

「ひょーかーい、冷蔵庫のプリン食べちゃってもいーい?」

 ルビーが戻って来た。

「プリンの前に経済学を」

「それは嫌でーす」

「全くエメラルド様に何て言い訳をすればいいか」

「え~、じいちゃんには何かテキトーに言っとけばいいよ」

「そういう訳にも行かないひょ」

 エメラルドはルビーの祖父で、クォーツアイランドの長。

 ルビーの唯一の親族。

 祖母は寿命が短く他界、父母は事故に遭って亡くなった。

 残った祖父にルビーの世話を任せられているのが、氷海とビオラである。 

 この島にいる者は、何かしらエメラルドに借りがある。

 エメラルドが好きだから、その孫のルビーも好きなのだ。

「よお、氷海! コラムは順調かい?」

「今書いてる途中ひょ。……って、エメラルド様⁉」

「よっ、ルビーの奴、授業部屋に置いといたから」

「それは、ありがとうございまひょ」

「おう。んじゃ、よろしくな」

「わかりまひょ」

 これが日常であった。

 

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