第46話 2か所目2

山城後をくるりと一周探索してみたが、どこのベンチも湿っていたり、草むらの中に埋もれていたりとなかなかここに座って待っていてと言えるベンチが見つからない。ヘビやトカゲはいっぱいいるのになんでベンチは見つからないんだろうか?

さっきから歩けば、アオダイショウがとぐろを巻いていたり、日向の岩の上でシマヘビが日向ぼっこしていたりとヘビはよく見る。トカゲは種類の同定ができないから分からないけどよく見るよ。

そのままふらふらと歩いていると健一郎が前から走って来た。

「おう、翔真。あれ、佐々木さんと山本さんは?」

健一郎は周りをきょろきょろしながら寄って来た。

「疲れていたからそこら辺に放置してきたよ。今、2人が休んでいてもらえそうなベンチを探しているところ。」

「そっか。…それじゃあ、その右手に持っているもの何?」

「うん?ヒバカリを見つけたから捕まえただけだよ。」

健一郎が僕が右手に持っている海苔のケースを指さしながら聞いてきたので、健一郎の目線の高さまで持ち上げてから言った。

「はぁ。相変わらずだね。いつも1人にしていたら何かと捕まえてきていたけどまさか今回もするとはね。」

健一郎は呆れた顔をしながら言った。

「ところで、健一郎。そのリュックから飛び出しているものは何?」

「うん?これか?」

健一郎は背負っていたリュックを降ろして開けて出して見せてくれた。

「シカの角だよ。そこに落ちていたから拾ってきた。」

「そうか。健一郎も相変わらずだな。」

「そうだな。」

と言いながら、2人で笑っていると遼太が寄って来た。

「お、翔真、健一郎。ッ!」

僕たちの直前で立ち止まって僕と健一郎の顔と手元を見てから

「相変わらずだね。それはそうと優花知らない?」

「知らん。」

「見てないよ。多分。」

健一郎と僕が答えると遼太は

「まあ、そうだろうね。」

と苦笑しながら言った。

佐々木さんと山本さんは非常に疲れていたから、そんなに長距離を移動することもなければ、道を大きく外れて遭難することはないと思うけれども、岩本は体力があの2人よりもあるし、ふらふらとすることがあるから早めに捕まえておかないと大変なことになりかねない。というわけで

「探すか!」

「だね。」

と言いながら僕と健一郎がそれぞれ逆方向に歩いて行こうとすると

「ちょっと待て!」

と言いながら僕と健一郎の首元をつかんだ。

「「何?」」

遼太の顔を見ながら聞き返すと

「このまま2人を放置するのは危険だと思うから一緒に!」

遼太が強い口調で言ってきた。仕方がないので3人で移動を開始した。

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