第41話 1か所目1

車で1時間ほど走ると最初の目的地の駐車場に到着した。

「それじゃあ、行こうか。」

「「「「は―い!」」」」

健一郎に言われて車を降りた。

「さてと、最初の目的地はこの階段を上った先にある神社なんだけれど……どうやらこの階段のほかにも道があるみたいだよ。」

僕がリュックの中身を確認していると、遼太が階段の横にあった立て看板を見て帰ってきた。

「そっか、それで?」

僕は何となく何を言いたいのかを理解しつつも聞いた。

「競争しない?」

遼太はにこやかな顔で言った。

「いいな!」

そして、それに満面の笑みで健一郎がのった。

これはダメなやつだ!ほぼ100%女子がおいて行かれる未来が見える。佐々木さんと山本さんは大丈夫だと思うけど、岩本は全力で追いかけてきて途中で迷って合流できなくなる。なにせ、岩本は雑木林の中にある舗装された一本道で迷ったことがあるのだから。しかも、その時の言い分が明らかな獣道を人の道だと思ったと言っていたから、今回も放置すればそうなりかねない。

「却下で!」

僕がはっきりというと、2人はショックを受けた顔でこちらを見てきた。

「なんで、翔真も勝負好きだろ!」

「遼太、僕は別に勝負は好きではないよ!」

遼太が確信した顔で言ってきたので否定しておいた。すると横にいた健一郎が

「そうだぞ!翔真は生物採取と山道を走ることが好きなだけで、別に勝負が好きなわけではないぞ!」

遼太の両肩を持って言った。そして、そのまま僕の顔を見て

「遼太に言われて確認してきたんだけれど、もう1つの道っていうのが登山道らしいぞ!しかも、階段で上がるよりも距離が短いらしい。まあ、所要時間は長いらしいが、翔真なら階段で上がるよりも短い時間で行けると思うぞ!というわけでどうだ、競争しないか?ルート選択は各自の自由ということで!これなら、翔真にも1位になれる可能性が十分に圧と思うんだが……いいよな!」

と熱弁してきた。しかも、これはいい以外の返答が帰ってこないと信じている。

「はぁ~、それは絶対に岩本をおいていくことになるよね。」

「なるな。」

「うん、なる。」

遼太と健一郎は2人揃ってそんなの決まってるじゃないか!それがどうしたという顔でこちらをみてきた。

「あの、岩本だよ!そりゃあ、佐々木さんと山本さんは大丈夫かもしれないけど……」

僕が2人に説明をしようとしていると力いっぱい僕のことを叩きながら

「私が何?」

岩本が聞いてきた。

「ねえ、今から遼太と健一郎が神社まで競争しようとしているのだけれど、置いていったら岩本迷うよね?」

僕は迷うでしょ!という意思を込めて岩本に聞いてみた。

「え、私もする!」

「えっと……」

さすがに僕もその回答は予想していなかったので、何と言ったら良いのかわからなくなった。

「そうか、それじゃあ優花も参加ということで翔真は参加しないんだな?」

僕が固まっていると遼太が勝手に話を進めた。そして、あっという間に横並びになり、

「翔真、合図を頼む!」

と言ってきた。

「はあ……もう、分かった。だけど、迷うなよ!特に岩本!後で捜索しないといけなくなったとか嫌だからね!」

「もう、翔真は心配性なんだから、大丈夫だよ。」

岩本が参加を諦めてくれないかな?という淡い期待を持って言ったがダメなようだ。もうこうなったらもし岩本が居なくなったら遼太と健一郎の責任ということにしておこう。

「それじゃあ、位置について」

遼太と健一郎、岩本が走る体勢になったのを確認して

「よ-い、ドン!」

と言って僕は手を叩いた。

すると、遼太は階段を岩本と健一郎は横の山道へと消えていった。

「さて、僕たちも行きましょうか!悪いけど山道でいい?」

僕はすぐ横で呆然としている2人に声をかけた。

「いいよ。」

「うん。」

2人に了承してもらえたので、僕たちは山道を上がっていくことになった。

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