第37話 買い物へ

イノシシの親子が山奥へと帰っていったのを確認して、健一郎が車を動かした。それからは、途中で動物がその場に留まって道を塞ぐこともなく、無事に山を下りることができた。

「さてと、翔真。どうする?」

山を下りて少し話す余裕も出てきたようで、健一郎が聞いてきた。山道はある程度舗装されているのでそこまで運転するのが難しいというわけではないが、行きは晴れていて月明かりがあってそこまで暗いという印象は受けなかったが、帰りは曇ってきたこともあり、道が暗く感じた。さらに、夜が更けていったことにより野生動物の動きが活発になったようで、鹿のお尻をヘッドライトで照らしたり、バックミラーに鹿の姿をとらえたことがあった。おかげで健一郎の運転はいつも慎重なのだが、その比じゃないほどに慎重だった。

「どうすると言われても…とりあえず、近くのス-パ-に寄ってくれる?」

「いいよ。それじゃあ、マルでいい?あれ、イヌの方が近かったっけ?」

イヌは山を下りてすぐのところにあるが確か閉店時間が21時だったはずで、今20時56分なので今から行っても空いているか微妙なところだ。それに、イヌでバイトをしている友達の話を聞く感じ、閉店間際にはほとんど売れてしまっていて商品棚が寂しくなると言っていたので今から行っても目的のものは無いだろう。一方でマルは僕の家のすぐ近くにあるス-パ-で22時まで開いていたはずだ。だから、きっと目的のものもあるだろう。

「マルでお願い。イヌはもうすぐ閉店時間だよ。」

「了解!」

健一郎はそう言うとそのまま僕の家の方向に車を走らせ始めた。

「ところで、岩本にはいつ連絡する?」

「マルを出るときでいいんじゃない?そこから5分ぐらいはかかるし。」

「そうだね。」

ということで岩本への連絡は後回しにされることになった。ちなみに、佐々木さんと山本さんは後ろでぐったりとしている。どうやら相当怖かったらしい。

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