第29話 高校時代1‐2

「それでは、1年生第2試合一騎打ちを始めます。」

アナウンスとともに始まった。遼太たちの騎馬は一番手で出てきた。

「おお、青組の1番手は先ほど直接的または間接的に多くの騎馬を倒した騎馬だ!さて、今回も大量撃破になるのだろうか!」

「はじめ!」

両者が円の中に書いてある線の位置に着いたのを確認して、中心にいた体育の男性教員が合図を出した。

「そこまで!」

「なんと、瞬殺された!」

遼太たちの騎馬は相手の騎馬のハチマキを取ろうと手を伸ばしたが、相手のハチマキに手が届くどころか相手の顔にすら手が届かなかった。必死に手を伸ばしていたが、すぐにハチマキを取られてしまった。

さすがに誰一人として瞬殺されるとは思ってもいなかったようで、運動場の音が消えた。

その後、山本機(最重量を追求した騎馬、平均体重80㎏オーバー)が相手の騎馬を次々と倒していき、最終的に青組が勝った。ちなみに、赤組対黄組は黄組が勝った。これにより第2試合までの各チ-ムの所得ポイントは青組が6ポイント、黄組が4ポイント、赤組が3ポイント、緑組が1ポイントになった。この時点で緑組が優勝する可能性は0になったけど、その他のチ-ムは優勝または同率1位での優勝ができる。

「それでは1年生第3試合大将戦を始めます。ピストルの音と同時に開始してください。」

アナウンスが終わると4チームがそれぞれグラウンドの四方に散って開戦の合図を待っていた。


パアァ~ン!


「おお、赤組、黄組、緑組が共闘か?青組に向けて3組が並んで突っ込んで行った!それに対して青組大きな騎馬を前に出して角に陣取った!」

青組は大将の石田君の騎馬が角に陣取り、その周りを囲い込むように他の騎馬が陣取った。その1番外側を囲うように山本騎と川崎騎というひたすら重さを求めた騎馬と斎藤騎(全員が175cm以上の土台の上に身長183cmの斎藤君が乗った青組で最も背が高い騎馬)が陣取ることで完全な壁が完成した。

「おお~!青組は攻められながらも1騎も倒されることなく次々に相手の騎馬のハチマキを取っていく!これは強い!!おおっと、ここで黄組の大将が倒された!!」

会場に居たほぼ全員が青組と他の3組の戦いに注目していたため、ほとんど見ていた人はいなかったが赤組が守備陣として残っていた2騎と大将の3騎で守備陣が1騎しかいなかった黄組を強襲して倒したようだ。

「黄組の騎馬ヘ連絡します。速やかに場外へご退場ください。」

教員からの連絡に従い黄組の騎馬が場外へと移動していった。

それから2分ほど経った。攻めていた赤組と緑組は青組を囲むように陣取りながら青組とギリギリ腕を伸ばしても相手に触れることができない距離を保ってお互いににらみ合いをしていた。青組も攻めに出ることなく固まった。

「おおっと、ここでまさかの試合が止まった!さて、どうなる?」

会場の全員の注目が集まるなか、お互いに動くことなく時間だけが過ぎていった。

最初はざわついていた会場が静まり近くの幹線道路を走る車のエンジン音や風の音がよく聞こえるようになった。

「ええっと、お互いににらみ合いをはじめてからもうすぐ3分が経過します。そろそろ、動いてもらえないでしょうか?」

非常に申し訳なさそうにアナウンスが流れた。しかし、両者共にまったく動く気配がない。そのままさらに時間だけが過ぎていき、

「にらみ合いをはじめてからもうすぐ5分が経過します。すいません。そろそろ動いてください。このままだと予定時間を大きくオ-バ-してしまい、体育祭の終了予定時刻が後ろに延びてしまいます。」

再び申し訳なさそうにアナウンスが流れた。

しかし、お互いに動くことなく固まっていると

「これ以上時間が後ろに延びてしまうとこの後の進行に支障が出るので仕切り直しとします。青組、赤組、緑組の現在残っている騎馬は1度スタートの位置へ戻ってください。」

体育の先生が仕切り直しを宣言した。

これにより、残っている騎馬はスタートの位置へと戻っていった。ちなみに、現在残っている騎馬は、青組が無傷で17騎、赤組は10騎、緑組は12騎である。

「では、仕切り直して始め!」

教員の合図と共に青組は全員で赤組に向かって突撃を始めた。赤組も迎え撃つべく大将と大将の護衛の1騎を残して向かってくる青組に向けて走り始めた。

「おお!青組と赤組がぶつかった!ぶつかった勢いで赤組は5騎、青組は4騎つぶれた!っとここで、緑組が全員で赤組の大将にめがけて突撃し始めた!」

赤組と青組が運動場の中心近くで勢いよく衝突しているのを横目に見ながら緑組は縁に沿って移動していき、赤組の大将を強襲した。大将を守るためにいた騎馬は勢いよく緑組に突っ込まれると守れないと判断したようで緑組に単騎で突撃をした。一方で赤組の大将は緑組の来ている方向とは逆方向に向けて縁沿いに移動を始めた。

「おお!赤組は大将を除いて全滅した!赤組の奮闘により青組は残り10騎になった!青組は赤組の大将の進路を塞ぐように広がった!赤組の大将、スピードを上げてそのまま突っ込んだ!!しかし、青組の、騎馬を1騎も倒すことはできなかった!」

スピードを上げて突っ込んでくる赤組の大将に対して青組は山本機と川崎機が横並びになりその後ろから彼らを支えるように他の騎馬が密集した。結果的に勢いよく突っ込んだ赤組の大将は弾き返されそのままつぶれた。

「さて、予定よりもずいぶんと長丁場になっている1年生男子騎馬戦第3試合も残すは青組と緑組です。数では有利な緑組が勝つのか、それとも向かってきた相手をなぎ倒してきた青組が勝つのか、さあ、勝者はどちらだ!!」

赤組の大将が倒されたのを見て緑組は青組から最も離れた位置へと移動していた。

「ここでついに第1試合で走り回った騎馬が飛び出した!大きく右周りで緑組の左側に横から突っ込もうとしている!さらに、先ほど赤組の大将を弾き返した2騎が正面から最短ル-トで緑組に目掛けて突撃を開始した!緑組は右へに向けて移動し始めた。っとここでまさかの大将の騎馬が転んだ!試合終了!」

遼太たちの騎馬から逃げようとした際に土台の3人が微妙に違う方向へ行こうとしたようでお互いにぶつかり合うようにつぶれていった。

「第3試合、勝者は青組、そして1年生総合優勝、青組!おめでとうございます。

青組の皆さんを除いて退場してください。

続きまして2年生の部を始めます。2年生は準備してください。」

アナウンスに従いそれぞれが動き始めた。

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