第27話 女子会
~佐々木由香side~
「ねえ、由香ちゃん。」
田口さんたちが買い出しに行ってから他愛もない話を友梨ちゃんとしていて、話が途切れたタイミングで友梨ちゃんは真剣な顔で聞いてきた。
「どうかしたの?」
「カップルってあんな感じなの?私の周りにも他校の男子と付き合っている人はいたけど、その人たちから聞いていた雰囲気からかけ離れたものを感じたんだけど…。」
友梨ちゃんは少し不安そうな声で聞いてきた。
「ああ、確かにあれは付き合っているというよりはぐずったちびっこをあやして寝かしつけるお兄ちゃんとちびっこだね。」
「やっぱりそうだよね。」
「私もそう思う。遼太は…違った、あの3人はいっつも私のことを子ども扱いする。」
「「え…」」
ぼやく声が聞こえて振り返ると野口さんが寝かしつけるためにと入っていった部屋の扉が開いていて、岩本さんが出てきていた。
「あ、起きていたの…ていうか聞いていました?」
「うん。あ、別に高校の時もクラスメイトに保護者と子供だね。と言われたことが何度もあるからあまり気にしていないから大丈夫よ。あと敬語じゃなくて、普通に話して!」
岩本さんは手を振りながらにこやかに答えた。
顔は笑顔なんだけど全然気にしていないようには見えない。
「それよりも、大学での遼太たちのことについて聞かせてよ。代わりに高校の時の遼太たちについて教えるからさぁ。」
「あ、うん。分かり…分かった。」
岩本さんが明るく取り繕っているのが分かるけど、そこを追求することは地雷を踏みに行くようなものだから、とりあえず大学での3人の様子を話すことにしておこう。うん、絶対その方がいいい。横にいた友梨ちゃんを見ると無言でうなずかれた。
「えっと、田口さんたちは基本的に大学では常に3人でいるよ。周りの子もあそこはあそこで世界を作っているから入りにくいって言ってた。」
「うん、私はよくあの3人の話している中に入っていけるね。って言われたことがあるよ。」
「後は、友梨ちゃん何かあったっけ?」
大学での田口さんたち3人の周囲の評価は近寄り難い3人組というもので、私や友梨ちゃんが近寄って行って話しているとよく近寄って行けるねと女友達に言われることがよくある。おそらく、とても体格のいい佐藤さんとそれなりに筋肉がついていることが分かる野口さんがいるのが原因の気がしている。私も初めて声をかけられた時は少し怖かったんだもん。
「あとは…面倒見が良くておいしいご飯を作ってくれるぐらいかな?」
友梨ちゃんはしばらく考えて答えてくれた。
うん。確かに田口さんたちが作るご飯はおいしい。
「そういえば、由香ちゃん。大学が始まってすぐの頃に一緒にお昼を食べた時に、何か見られたって言ってたよね。あれって何なの?」
「え、それ聞く?」
あのことについては全く聞かれなかったし、何となく雰囲気で聞いてはいけないものと判断してくれていると思っていたのに…まさかここで聞いてくるとは。ふと岩本さんの顔を見るととてもいい笑顔でこっちを見てきていた。
「うん、聞く。」
「何なの?なんか面白そう。教えて!」
とても話さずに済みそうではなさそうだ。ここまで興味を示されるのは意外だったんだけどなぁ。
「分かった。いいよ。話すよ。」
私は観念して話すことにした。
「私ね、雷が怖いの。別に音だけなら大丈夫なんだけどね…音と光の両方がそろうとだめなの。それでその…あの3人の前で雷が怖くてね…。」
やっぱり無理、話しているとなんか無性に恥ずかしくなってきた。
「それでどうしたの?」
「あの3人の前で雷が怖くて悲鳴を上げてしゃがみこんじゃったの!大学生にもなっても雷が怖いなんて子供っぽいから知られたくなかったのに…。」
「そっか。ドンマイ。」
そう言いながら岩本さんが私の頭を撫でてくれた。そして、横にいた友梨ちゃんに抱きしめられた。うん、なんでだろうか。これじゃあどこからどう見ても私ちびっこじゃん。おかしいな…。
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