第26話 さあ、買い出しに

岩本が来て30分経過した。あいかわらず遼太から逃げることができないようで遼太に捕まっている。


さらに30分が経過した佐々木さんと山本さんの警戒心が薄れたようで部屋の隅にいた2人が岩本と遼太に接近した。


さらに10分が経過した。岩本は抵抗し疲れたようでおとなしくなった。


さらに10分が経過した。僕がキッチンにお茶を取りに行って戻ると岩本はコアラの子供のように遼太に向き合うように抱きついていた。


さらに15分が経過した。遼太の腕の中からすやすやと寝息が聞こえてきた。

「翔真、優花をどこか転がしておきたいんだけどどこならいい?」

遼太が岩本が寝息を立てだしてしばらくすると声をかけてきた。

「それじゃあ、そっちの部屋を使って。布団は部屋の隅に置いてあるの使って。」

「分かった。」

遼太は岩本を抱えて奥の部屋へと消えていった。

「健一郎、なんで今日の岩本はあんなに積極的だったんだ?普段なら遼太にくっついてもしばらくしたら離れていくし、くっつき方もいつもなら真正面からじゃなくて遼太にもたれかかるような感じじゃなかったか?」

「ああ、それは遼太の奴が悪い。どうやら、卒業式が終わってから一度も岩本と会わなかったらしい。それどころか、電話も滅多にしなくて、メッセージも岩本が送ってきたら3回に1回くらいで返す程度だったらしい。おかげで今日も会って早々にきれられてたし、浮気も疑われてた。巻き込まれたくなかったから2人まとめて後ろの席に座らせたのに結局僕も質問攻めにあった。」

健一郎が非常に疲れた顔で答えてくれた。

「うん、お疲れ様。」

「そういえば、翔真。買い物に行かなくても大丈夫か?」

健一郎に聞かれて冷蔵庫と野菜室の中にあるものを思い出してみたが肉や魚が一切ない。あるのはニンジンやジャガイモ、ミニトマト、レタスといった野菜のみだ。

「そっか。それじゃあ買い物に行こうか。」

「そうだね。」

ということで2人で仲良く買い物に行こうとすると奥の部屋から遼太が戻ってきた。

「おい、翔真と健一郎でどこに行くんだ?」

遼太が疲れた顔で聞いてきた。

「あ、遼太。そのまま岩本の横で寝ていてもよかったのに…。」

「それはいい。」

遼太は若干顔を赤らめながらぶっきらぼうに答えた。

「それよりも買い物に行くならついて行くよ。どうせ大量に買い込むんだから、荷物持ちは多い方がいいだろ。」

「分かった。」

健一郎が遼太の返事に対して苦笑いしながらも答えた。

「ところで翔真、どうせお前のことだからすでにチラシを調べてどこで何を買うのか決めているのだろうけど。全部回ったらどれぐらい時間がかかる予定?」

「えっと、隣の市のスーパーにも行きたいからくるっと回って僕が自転車で3時間半から4時間ぐらいかかるから、車だと1時間から2時間ぐらいになると思うよ」

「そうか。まあ、そんなもんだろうな。」

健一郎はしばらく考えた後に答えた。

「それじゃあ、悪いんだけど。佐々木さんと山本さんは留守番よろしくお願いします。たぶん起きてこないと思うけど岩本が起きてきたときに誰もいないのは困るだろうから。」

念のため、佐々木さんと山本さんに留守番をお願いして3人で家を出た。

「あ、はい。分かりました。」

「いってらっしゃい。」

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