第24話 お昼

今日はあいつが来る日だ。とは言っても来るのは昼過ぎらしいので午前中は1人でのんびりとしようと考え、自室で転がっているとインターホンが鳴った。

「はーい。」

そう言って玄関を開けると大量の荷物を持った佐々木さんと山本さんがいた。

「えっと、どうしたの?その荷物…」

「えっと…」

「様々な事態を想定した結果です。気にしないでください。」

珍しく佐々木さんが言い淀んでいると山本さんが直ぐにフォローするように言ってきた。

「分かった。うん、とりあえず入って。」

玄関の前で話していても仕方がないので中に入ってもらった。

「「お邪魔します。」」

「ところで今日って午後から集合じゃなかった?」

「はい。」

佐々木さんが申し訳なさそうに答えた。

「私の家で2人で時間を潰していたんですけど、田口さん達が言うあいつのことが気になりすぎて来ちゃったんです。」

山本さんが苦笑しながら答えた。

「そっか。それじゃあお昼を3人分準備するね。」

「あ、お昼は私達が作ります。台所をお借りしてもいいですか?いつも作ってもらっているのでお昼ぐらいは私達が作ります。」

「いいよ。それじゃあ、お願い。何かあれば声をかけて。僕はあっちに座っているから。」

「「任せてください!」」

もうすぐ11時になるのでお昼を作ろうと思って聞いてみると、佐々木さんが作ると言ってくれた。山本さんを見ると真剣な顔でこちらを見ており、佐々木さんも真剣そうだったのでお願いすることにした。


~佐々木さんside~

田口さんは驚いた顔をしながらも台所を使うことを了承してくれた。

「それじゃあ、友梨ちゃん始めようか。」

「そうだね。」

今回、早く来た本当の目的がお昼を作ることで私達も料理を作ることができるということを認識してもらうことである。この間ギョウザを包んだ時は包みだしてすぐに戦力外通告をされてしまい、何となく田口さん達の中で私達は料理をできないことになっている気がしている。というか、それ以降1度も料理に関わらせてもらっていないので絶対料理をできない子扱いされている。今日、朝から友梨ちゃんの部屋に集まってどうしたらいいんだろうかと相談した結果、田口さんと野口さん、佐藤さんの男子3人が居る状態で料理をしたいと言っても大丈夫だからそっちに座っておいてと言われかねない。そこで、田口さんが1人で居るタイミングなら横で田口さんが料理をしているかもしれないけど私達も料理をさせてもらえるのではないか、と考え3人が集まって居なくて、ご飯をまだ作っていないタイミングで私達が料理をすると言うことが絶対条件であると考えて今日行動を起こすことにした。作戦は成功して私達だけで料理を作ることができる状態に持ち込めた。材料は買ってきたので後は作るだけだ。

「由香ちゃん、野菜洗い終わったよ。」

「うん、分かった。こっちももう少しで焼き終わる。」

およそ1時間後無事にお昼が完成した。

「田口さん、完成しました。」

本を読んでいる田口さんに声をかけた。

「おう。」

田口さんは手早く荷物を片付けて場所をあけた。空いた場所に私と友梨ちゃんで料理を運んだ。

「それじゃあ、食べましょうか。」

「うん。」

「はい。」

「「「いただきます。」」」

田口さんが食べるのを友梨ちゃんと一緒に見ていた。やっぱり、自分達ではおいしいものができたと思っているけどおいしいと言ってもらえるか気になってしまう。

「うん?佐々木さんと山本さんも見てないで食べたら?おいしいよ。」

「あ、はい。」

よかった…友梨ちゃんも安心した顔をしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る