第12話 雷と佐々木さん
晩御飯を食べ終え、雨が止んだのを確認すると健一郎が僕に向かって
「翔真、そろそろ帰るわ。」
といった。もうすでに20時を過ぎている。
「おう。そんじゃあ、また月曜日に大学で!」
「田口さん、お世話になりました。」
佐々木さんはお辞儀をしてから健一郎たちと一緒に帰っていった。
なぜ、昼食を食べたら解散する予定だったのに解散時間が20時を過ぎているかというと理由は帰らせて一人にしてはいけない気がしたからである。そう感じた理由は昼食を食べ終え片付けも終わったころに遡る。
「翔真、それじゃあ帰るわ。」
「おう、気を付けてね。」
いつも通り僕はお見送りの際にかけている言葉をかけて健一郎たちを見送ろうとした。
ドン!
「きゃ!」
雷がどこかに落ちたであろう音と同時に少し建物が揺れた。そしてそれと同時、何なら揺れるよりも早いタイミングで悲鳴を上げながら佐々木さんがしゃがみ込んだ。
「えっと、佐々木さん大丈夫?」
どう対応していいのか分からずに取り合えず僕は佐々木さんに話しかけた。
「はい。大丈夫です。」
佐々木さんは若干赤くなりながらも立ち上がり大丈夫であると主張してきた。
「そう。それならいいんだけど。」
「それじゃあ、翔真、改めて帰るわ。」
健一郎はそう言って玄関扉を開けて出て行った。僕も廊下までは見送ろうと思い、廊下に出たタイミングで再び、
ゴロゴロ、ドン!
雷が落ちたのが見えた。
「っ!」
するとすぐ横にいた佐々木さんが座り込んでしまった。
「えっと、大丈夫?」
何となく涙目だし、大丈夫ではない気がしたが念のため確認してみた。
「…。」
佐々木さんは無言で震えていた。
「立てる?」
と聞きながら手を差し出してみたが固まっていて全く動く気配がない。
「翔真、とりあえずもうしばらくいさせてもらってもいいか?」
そんな佐々木さんを見ながら健一郎が声を掛けてきた。
「ああ、いいよ。」
「助かる。」
そういうと健一郎は全く動く気配がない佐々木さんを軽々と持ち上げて部屋に入っていった。
健一郎は佐々木さんを座らせた後、すぐ近くに座った。僕もそれに倣って近くに座ることにした。遼太もどうやらすぐ近くに座ることにしたらしく佐々木さんの後ろに座っている。
健一郎 僕
佐々木さん
遼太
座っている位置を図にするとこんな感じである。
真ん中で小さくなって震えている佐々木さんを見ていると何となく悪いことをしてしまったような気がしてきた。そこで、気分を変えるために
「ゲームでもする?」
と聞いてみた。
「おう。って翔真ゲームなんか持ってたのか!お前は全くゲームをしないだろ?」
「遼太、ひどいよ。僕も持っているよ。今持ってくる。」
「ちょっと待て、翔真はゲームを全くしないよな。そんなお前が持ってくるものに不安しか感じないんだが、何を持ってくるんだ?」
健一郎がとても不審がりながら聞いてきた。
「うん?複数人で遊べるものがいいから、ドンジャラか人生ゲームを持ってこようと思っているんだけど、ダメか?」
「はあ。ちょっと待ってろ。車に複数人で遊べるゲームがあったはずだから、ちょっととってくる。」
健一郎はあきれた顔をしながら何かを取りに行った。
5分後、健一郎はゲーム機を持って戻ってきた。
「翔真、これをテレビにつないでくれ。」
「うん、分かった。」
健一郎に言われた通りにコードをつなぐと健一郎が何度かコントローラーで操作をしてゲームを始める画面にたどり着いた。
「よし、それじゃあ始めようか。」
と言って健一郎はコントローラーを渡してきた。
「うん。」
佐々木さんは雷が鳴るたびに固まってしまうので最初はゲームどころではなかったが僕と健一郎の間に座らせてみると落ち着いた。ちなみに健一郎ではなく遼太と僕の間に座るととても気まずそうにしていたので遼太には悪いが少し離れた場所に座ってもらった。その後、雨雲レーダーを確認したが18時頃もまだ雷雲がかかっていることになっていたので晩御飯も食べてから帰ることになり、昨日健一郎と遼太買ってきた食材の余りを使って僕と遼太でハンバーグとポタージュスープを作った。なぜ、ミンチ肉を昨日買ってきたのかは買ってきた遼太すら分からないと言っていたので謎である。ちなみに佐々木さんも手伝うと言ってくれたが雷が鳴るたびに固まってしまうので健一郎の横におとなしく座っておいてもらうことにした。
晩御飯を食べ始めるころにはもうほとんど雨もやんできており、食べ終えて片付けが終わるころには雨がやんだ。というわけで健一郎が佐々木さんと遼太を家に送り届けて帰るべく、帰っていったのである。
うん、今日は何だかとても疲れた気がする。ゆっくりとお風呂に入って寝るとしよう。
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