第9話 なぜだろう?
無事に佐々木さんの家の鍵を事務室で受け取り、講義室に移動して講義を受ける準備をしているとすぐ後ろの席に座った遼太が話しかけてきた。
「なあ翔真、俺佐々木さんに何かしたかな?」
「どうかしたの?」
「いやぁ、車の中でもそうだったけど、今もずっとこっちを見てきてるんだよ。」
「そうか、気のせいじゃないか?もしくは遼太が何かした?」
「気のせいではないと思う。」
「そんなに気になるなら直接聞いてみたらいいんじゃない?」
「あれは聞いてはいけないやつだよ。どちらかといえば警戒する視線だもの。下手に接近したら逃げられるよ。」
「そっか…。まあ、僕はどっちでもいいんだけど昼までにはなんとかしとけよ。今日の昼は僕の家に集まって昼ごはん食べるんだろ。佐々木さんも来ることになってるんだから。警戒し続けなければいけないのは疲れるからさ。」
遼太が信じていたのに裏切られたと無言で伝えてきたがちょうど講義開始の鐘がなったので無視することにした。
健一朗と遼太が迎えに来たときにはすでに土砂降りで、時々ゴロゴロと遠くで雷がなっていた。さすがにそんな天気の中佐々木さんを大学から自転車で帰らせるのは酷だろうと言う話になり、幸いにも全員1限の講義しか取っていなかったのでお昼を僕の家で食べてから佐々木さんを車で送って行くことになった。
講義終了後、4人で車に乗って僕の家まで帰宅した。遼太が佐々木さんに警戒されてると言われたときは気のせいだろうと流したがどうやら本当に警戒されてるようで移動中の車の中でも僕と健一朗が分かるほどに佐々木さんは遼太のことを警戒していた。流石になぜ遼太が佐々木さんに警戒されているのかを一人で考えても全く予測がつかなかったが、健一郎なら何か気が付いてるかもと思い意見を聞くために2人でご飯の焼きそばとお好み焼きの材料を準備しながら相談することにした。ついでに、遼太と佐々木さんにホットプレートの準備を頼むことで、遼太になぜ警戒されているのかを確認して何とかしてもらおうという期待を込めて2人きりにしてみた。
「なあ、健一朗。遼太は何をしたんだ?」
「さあ、分からないけどおそらくまた何かやらかしたんだろう。あいつは高校の時もそうだっただろ。」
「そういえばそうだな。良く周囲を見ていて少しの変化にも気がつくくせに何かとその人の気持ちを考えないで発言をしていたな。まあ、はっきり言って遼太のことを怖いと言うやつも何人もいたしな。」
「ああ。あいつは歩き方が少しいつもと違うとか、足音がいつもと違うとか、匂いがいつもと違うとか言ってすぐにその人が隠していた怪我や体調不良を見つけてたもんな。」
「そうだな。ただ、今回は違う気がするな。」
「そうだね。なんでだろう?」
結局、健一郎に相談したが何1つ分からなかったが、昼ご飯の準備は終了した。
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