第7話 日常のヒビ割れ

 さて、4代目関東かんとう公方くぼうとして新たな一歩を踏み出した幸王丸こうおうまる


 関東公方として相応ふさわしい教養を身につける為、日々英才教育を受けている。




「だから、そこは違うと何度も言っているだろうが!」


 講師役は叔父の足利あしかが満隆みつたか



「ううっ、こんなの難しくて分からないよ」


 幸王丸が頭をかかえながら嘆く。



「そんなことはない! 満兼みつかね兄さんは生前せいぜん文句一つ言わず勉学に励んでいたぞ。お前もこれくらい、ちゃっちゃとやらんかい!」



 中々なかなか正解に辿り着かない事に徐々に苛立ちをつのらす満隆みつたかに対して、幸王丸こうおうまるふくれっつらをしながら不満をあらわにする。


「てゆうかさぁ、間違いを指摘してばかりじゃなくて、少しは正解への足掛かりになることを教えてよ、満隆みつたかおじさん」




 すると、満隆の顔は見る見る赤くなっていく。


「甘ったれたことをほざくな、この馬鹿者が〜〜っ! それに『おじさん』呼ばわりするなって何度も言ってるであろうが〜〜っ!!」




 こんな毎日が続いていた1410年8月15日、鎌倉かまくら御所ごしょにいる幸王丸こうおうまるの元に良からぬ報せが舞い込む。



「えっ、嘘でしょ?!」



「……恐らく、間違いございませぬ」


 報告に来た関東かんとう管領かんれい山内やまのうち上杉憲定のりさだは険しい表情をしている。




「そんな……、絶対に嘘だ……、満隆みつたかおじさんが謀反むほんだなんて……」

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