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時は遡り、今から約四年前――ナオが十三歳の頃だった。
クリフは王都に赴いていた。行き先はラテル最大規模であるギルド本部。
受付で名前と用件を打ち明けると、すんなりと奥に案内してもらえた。
「久しぶりじゃないか、クリフ。クリフがここまで来るとは珍しいな」
「やあレオン。急に押しかけて悪いんだが、ここ数年のクエスト受注者の名簿を見せて欲しいんだ」
「ああ。誰でもないクリフのためだ。ちょっと待ってろ」
クリフはギルド本部長であり旧知の仲であるレオンに促し、名簿を準備してもらう。
そして机の上に置かれたファイルの山を見て口を引き攣らせた。
「ほれ。王都で一番忙しいギルドの数年分の記録だ。数ヶ月ぐらい前までのやつは名前順に分類されているからわかりやすいと思うぞ」
「ああ、感謝する」
「じゃあ、俺は忙しいからまた夕方に来る。何かあったら呼んでくれ」
レオンはそういうと、事務の人にお茶を持ってこさせて出ていった。
それからぶっ通しで探すも見つからず。最近のにも記載されてはいなかった。
夕方になり、レオンが来た。げっそりとしたクリフの様子を見て、
「………見つからなかったのか」
「………ああ」
レオンは乱雑に開かれたファイルに手を伸ばした。
パラパラとめくり、ふと尋ねる。
「そういえば、クリフは誰を探していたんだ?」
「………ダリアとオルガ」
「あのギルランTOP5のか!? その二人が来ていたのなら俺の耳にも入ってきているに決まっているじゃないか」
ではここにすら来ていないということか。
クリフは幾度吐いたのか分からないため息を吐き、「ここもだめか」と呟いた。
「なあ、どうして彼らを探しているんだ?」
「……ギルランTOP10が毎年特別な依頼を受けているのは知っているだろう? ダリアとオルガだけ依頼を受けに来ないんだ」
「……それは……、でもギルドカードの更新はしているんだろう?」
ギルドカードの更新は全冒険者に義務付けられている事柄の一つだ。
ギルドに出向いてギルドカードの情報を一年おきに更新して最新の状態にしなければならない。
レオンの質問に、だがクリフは頭を振った。
「……いや」
「………何年だ?」
「――――3」
レオンは頭を抱えた。「何故もっと早く言わないんだ」
「彼らなら大丈夫だと思って」
「勝手に結論づけるな。ったく……。ま、TOP5の人なんて律儀に更新しているのあの二人だけでしょ。他の人はこちらが更新しないとすっぽかすことのほうが多いから、クリフは気にしなさんな」
「………そうだな。探すにもここは国土が広すぎる。あちらから来るのを待つとするか」
「ああ。そうだ、せっかく王都に来たんだし、観光でもしていけよ」
「……そうするか」
――――――――――
同時刻、とある城にて。
「………退屈だわ」
一人の少女が愚痴を零していた。
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