第5章 女子旅行
第35話 女子三人旅
どんなに大変なことがあっても、どんなにつらいことがあっても、明日はやってくる。目が覚めたらいつの間にか朝日が顔を出している。私はゆっくりと寝返りをして近くの時計に目をやる。
「いけない! 遅刻する~」
私の名前はユズキミナ、ここ世界樹対策課日本支部に入ってもう数週間が経った。相変わらず自分自身の能力を、まだ制御できていないから足手まとい……。お酒の量も増えている気がする……
「すいません。遅くなりました」
「大丈夫! ちゃんと間に合っているわ。でも、もう少し余裕を持った方がいいかも……」
今日はユミさんとゼノの生態調査に向かう仕事。場所はそう遠くない区画だけど油断は禁物。私とユミさんとカンダさんの三人での調査! カンダさんは対策課の研究員の人でちょっと近寄りがたい雰囲気を出してる人だ。前にもこの三人で近辺調査をしたりしたんだけど、必要なこと以外しゃべらなくて気まずかった……
「さあ! 出発するわよ! 車の運転は……」
「あ、自分がやります。お二人は何かあった時に備えて休んでいてください。」
「そ、そう。じゃあお願いします」
ユミさんもあんな感じだし……
車内では無言が続いていた。
ピクニックに行くわけではないし、
仕事だから……
だとしても気まずい……
何か話題を出して車内の空気を変えないと!
「そ、そういえば、今回のお仕事はどんなことするんでしたっけ? カンダさん」
会話の始まりを作るために出た言葉がこれ、ちょっとおバカキャラに見られたかな?
「あの、聞かされなかったのですか? 今回の任務はある区画で、世界樹の根が大量発生したのでその調査です。当日前に把握してください。」
お、怒られてしまった……
「まあまあ、ミナは最近能力の反動なのか影響なのか、アルコールに悩んでいてね。今大変な時期なの、だから許してあげてね」
ユミさんありがとう……
でも、ちゃんと今回の仕事内容しってたんだけどね……
「ちなみにあと何分くらいなの?」
「あと、20分くらいですかね」
「よし、しりとりしましょう」
その手があったか!
車の時間つぶしといえばこれだ!
この定番ゲームを持ち込むとなんて、さすがユミさん!
「あの、今やる必要あります?」
しかし、カンダさんは乗り気じゃない様子。このままじゃ折角の希望の光が……
「リンゴ!」
「!!」
彼女はただ一言この言葉を放った。
これは! しりとりの『り』から出た『リンゴ』
始める気だ。しりとりを!
「ご、ごま」
続けて私は『ごま』と言った。
「え、これもしかして、次私?」
戸惑うカンダさん
「そうですよ~さあさあ」
ユミさんがカンダさんに圧をかける
「ま、薪!」
とうとう彼女の壁がガタガタと崩壊した。私は少しうれしくなった。ちょっと彼女との距離が近づいた気がしたから
「きびだんご」
「ごぼう!」
「う、馬!」
「孫」
ユミさん、『ご』攻めしてない?
しりとりをしている間に目的地の区画についた。ユミさんが『ご』で、私のことをいじめてくるから途中苦しかった。
でも目的地到着までよく頑張った。私!
「さあ、降りましょう! 道が凸凹でお尻がイタタタ……」
「ミナ! まだしりとりの途中よ!」
「ええええ!? まだ続けるんですか?」
「当たり前でしょ! さあさあ、『ご』で始まる言葉!」
「カ、カンダさん……」
私は真面目なカンダさんに助けを求めた。この人ならこの状況、黙ってないだろう し……
「ハイノメさん! 降りてください。ここからは仕事なんですよ」
ほれ怒られた……
「しりとりの続きは道中でも出来ます。あと、帰りの車の中でも」
やる気満々じゃない……
でも、私は嬉しかった。意外とカンダさんは、私が思っていたよりも厳しい人じゃなかったから。もしかしたら、もっと仲良くなれるかも。
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