第28話 容疑者は能力者?

 玄関ドアを開け、深いため息をつきながら廊下を歩く

ミナさんが帰ってきた後、泣きじゃくる彼女を泣き止ませるのに皆で励ましあって、その後お酒を飲むことになって……その後……


 疲れた……今日は本当に大変だった。


僕は死んだようにベットにダイブした。


 ふかふかのベットが心地良い……

 もうこのまま死んでもいいんじゃないか?   ダメか


 気が付いた時にはもう朝日が次の日の合図を出していた。

ぼくはふかふかのベットで、一時的に死んでいたようだ。このままもう一度あの世に行きたかったのだが、この欲を何とか殺した。


 社会人だからね


 出社したが僕以外まだ誰も着ていない。ミナさんは昨日の夜、浴びるほど酒を飲んだから遅れるだろう。ハイノメも彼女の介護で遅くなっているのかも


でも、キラさんがまだ出社してないのは珍しい……

誰よりも早く来て、デスクのフィギュアを眺めている人だぞ。


 ガチャっと、戦闘係の部屋に誰か入ってきた。キラさんだ。だが少し顔色が悪い、あまりお酒は強くないようだ。

「おはよう トガ君 遅くなって悪いね」

「おはようございます。昨日はありがとうございました。……体調大丈夫ですか? 顔色悪そうですが」

「あはは、昨日はすごかったね。ユズキ君があそこまで人が変わるとは。でも、顔色が悪いのは決して二日酔いとかじゃないんだ」


 ? どういうことだ?


「実は仕事の依頼でね。で 問題があって……」

キラさんがその続きをしゃべろうとした瞬間、問題の理由が分かった。

「ハーイ♡ トガ君 元気~~?」

「と、トガ君 アオバさんと一緒に現場に向かってくれる?」

ぼくは脳内がフリーズした。

「さあ、お姉さんとデートしましょう!」


 

 天気は爽快! 気分は最悪……


それはなぜか、この女といるからだ。

「ひっさしぶりに外に出たわ! 今日はよろしくね!」


 今回の仕事はある区画で、殺人事件が起きたようでその調査らしい。

「ゼノの仕業じゃないんですか?」

「いえ、死体の状態から見て人の仕業よ。化け物なら食べた痕跡とかあるけど、今回   の被害者にはなかった。そして何より死体が綺麗だったのよ」

「なるほど、ゼノだったら肉食動物のように襲いますからね」

「そういう事 まあ、例外もあるけど 目撃者の証言もある」

そうなのか、だとしたら人間の犯行で決まりか。


 これって僕たちが出ることないんじゃ……


「目撃者の証言によると、犯人は体から何か妙なものを分泌していたそうなの……」

「ぶ、分泌? 何か出していたと」

「そ! つまり今回の事件は能力者絡みだってこと!」

いきなり声のボリュームがでかくなるこの女は、アオバサユリ 苦手な人だ。まさかこのマッドサイエンティストと一緒に、事件の調査に行くことになるとは……

「あの、なんで僕なんです? ほかにもハイノメとかいるところを」

「あなたのことをもっと知りたいから♡ 犯人の事も気になるけど……あああ♡ 気になって、眠れなかったの♡ じっと待てなかった。」

「こんどから、研究所でじっとしてください。」


 物静かな区画に、不相応な女性が一人ズシズシと入っていく。その後ろを、自分はこの人とは関係ありませんよ。という感じを出し、周りの雰囲気を気にしながらトボトボと歩く。


 ここの区画はかなり静かだ。まるで人の気配がない……


今まで他の区画を見ることはあったが、ここまで静かな所は見たことがない。殺人事件があったからだろうか? 今回の犯人はゼノでなく、人間の可能性が高いからな、当然皆、疑心暗鬼になるのは当たり前だ。

「なんか、静かね……歓迎のあいさつとかないのかしら?」

「あるわけないでしょ」


 あきれてしまった……ここまでクレイジーだとは


 区画内をさらに進んだところで、一人の男性にあった。かなり年配だが、優しそうで見た目からして、ここの区画のリーダー的な人だろう。

「初めまして、私はここの区画を任されている。 シシドウマコト と言います。」

男は物腰柔らかに挨拶をした。あまり生気を感じないが……

こちらも挨拶を返さないと

「やっと、人に会えた。早速現場に案内 イダッ!」

ぼくは暴走してしまいそうな彼女を力ずくで引っ張った。

「何やってんですか! 順序があるでしょ! 順序が!」

「そんなの待ってられない♡」

 

 ああ何でこんな人と一緒なんだ……

 そもそもなんでこの人現場に出向いてるんだ?



 

 

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