第7話 爆発

 どんなことがあろうとも夜は必ずやってくる。

だが、昨日と違う点がある。

周りの空気感、灯りの多さが人々の不安を表しているように感じる。


「大丈夫ですか? トガさん」

「うお! ミナさん! まさか夜這い?」

「違います。 でもよかった。元気そうで! あんなことがあった後なんで、かなりショックを受けていると……」


彼女は何かと僕のことを気にかけてくれる。だが、そんな彼女の顔はかなりやつれているようだった。天使のような人でも、この状況は堪えるようだ。


「何が何だかわかんないですよね。災害が起こって避難生活していたら、今度は化け物が現れちゃったなんて……」

そうつぶやくと、彼女は大粒の涙を落した。今までこらえてきた感情が、とうとうグラスからこぼれてしまったようだ。


「だ 大丈夫ですよ!」


 つい咄嗟に出た言葉はすぐに消えた……


「何が大丈夫なんですか!」


 何も言い返せなかった。何の保証もない 

 ぼくは死なないから何かあった時は……


「おい、トガショウ! 話がぁ……」


幸か不幸か ハイノメがこの世界をぶち壊してくれた。


 ミナさんを落ち着かせた後、僕はハイノメと一緒に、夜の警備をしながら今後について話し合うことにした。

「ごめんなさいね もしかして邪魔した?」

「…いや、むしろ助かったよ。雰囲気最悪だったからさ。」

「なら いっか 」

「しかし 警備しながらとはね……」

「そらそうよ 化け物が出るかもしれないんだから!」


 まあ、こんな状況で名乗り出るやつはよっぽどの馬鹿か、勇者かのどちらかだ。

 残念ながらもうこの区画にはその様な者はもういない……


 いや、今この場に2人いるんだった……


「で 話ってなんだ?」

「ちょっと、敬語を使いなさい! 敬語を! あんたは後輩なのよ! ……まあ いいわ 本当なら、すぐに対策課に戻りたいとこだけど、ひとつ問題があるの……」

「ぼく 入るとはいってないけど……」

「ひとつ問題があるの!」


 拒否権がないようだ……


「この区画がまた化け物に襲われる可能性が非常に高い。」

「なに! また来るのか!」

つい声を荒げてしまった。

「ちょっと、声がでかい!」

「だったら、上の人に伝えて応援呼んだり……」

「むりね、人手不足なのよ。 それに憶測でしかない だから、私たちで対処する。」


 

 夜もあと半分くらいになってきたころか……ハイノメから聞いた話だと、化け物は夜に出現することが多いらしい。ただ、まだまだ調査が進んでないらしくて、そのことも曖昧だ。


「そういえば、彼女に自分の身体の異変のこと教えてないでしょうね!」

「異変? ああ 言ってないよ。」


 異変というのはこの死ななくなった身体の事だろう。


 まあ、普通に考えたら引くからな


「このこと伝えたら流石に引かれるだろ! 化け物だーて!」

「………」


ハイノメは急に黙り込んで、どこか悲しい顔をした。

なにか気に障ることを言ってしまったのか? 

確かハイノメも能力者なんだよな……

もしかして……、昔何かあったのか?


 ……気まずい


「さ! 夜を越せば生存率がグーンと上がる 頑張りましょう。」


ハイノメもこの空気を察したのか、この言葉を言って気持ちを切り替えた。



 長い夜が明け、温かい光が全身を和らげる。

 

 ようやくこの緊張感から解き放たれる。そう思えるだけで、心が軽くなった感じがした。


「ちょっと! 帰るまでが遠足ですよ!」

「はいはい、先生!」


その時だった。

 

  「ギャァァァ」


お天道様の顔が見えてきて、闇が明けた時間帯、

本来なら希望に溢れた時のなか、その不協和音は、この区画中に響き渡った。

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