第37話・もみじTheロックオン
昼休み、その話をもみじさんたちを交えてしていました。
「うちの保健室ってすごいわねぇ……」
もみじさんは、やたらと遠い目をしながら言ったのです。
「なぜ、そのような目を?」
もちろん、それは気になることで、たずねずにはいられませんでした。
「いやだって、聞く限り雰囲気が大麻窟だし、一人大麻で捕まってそうな子の話しあったし……」
そんな知識を俺が持っているはずもなく、感心して聞いていたのですが、ふと疑問が浮かびました。
「なんでそんな場所知ってるんですか?」
もみじさんも高校生のはずです。だというのに、どうしたことでしょう……。
「いろいろあるのよ。オカマにはねっ!」
本当にもみじさんも謎の多い人です。
「でも、とても面白そう! 今度ボク達も行っちゃダメなのかな……」
そういえばそのことを聞いていませんでした。少し懸念もあります。あそこは魅力的すぎて誰でも行きたくなるかもしれません。
「聞いてみますね!」
ともすれば、授業より優先してしまうかもしれません……。
「よろしくね!」
ところで、あの女性の先輩に要さんも懐いてしまいそうな気がします。
「やだ! 先輩取られちゃう!」
すずめさんは、冗談っぽく言いました。
「なんだ? その先輩って?」
そうだ、特に名前を伺っていませんでした。
「柊先輩。優しくて、ちょっとアブナイ先輩だよ!」
すずめさんが明るい表情で何よりです。ただ、一つだけ……。
「アブナイのは見た目だけですからね!」
あの空間は見てくれこそアナーキーですが、違法行為もなければ、危険すらもない。不良ごっこをやっているだけなのです。
「しかし、楽しそうよね! とびっきりワルいフリができるなんて! ノンアルカクテル作れるから、練習させてもらおうかしら!」
そういえば、オカマバーのママを目指している人でした。だから、もみじさんにとってはそれでかなり実践的な職業訓練になる気がします。
「それ面白そう!」
そして、すずめさんの言うとおり面白いことになりそうです。なんか、特殊な科学反応が起こりそうな……。
「オカマ流シェイカー術が炸裂しちゃうわよー! 腕なまってないかしら?」
もうすでに、オカマバーのママみたいな喋り方をしているのはご愛嬌でしょう。
「すでにご経験が?」
なまっていると言ったから、そうではないかと思いました。
「あぁ、こいつシェイカー振らせるとマジでかっこいいぞ」
そして、それはナツさんも見たことがあるようでした。
「褒めても何も出ないわよ!」
なんて、もみじさんは歌うように言います。
「しゃべると台無しだがな……」
しかし、もみじさんは顔立ちはなかなかにしっかりとイケメン。それっぽい格好をして頂ければ、それはもう若くて女性の憧れの的なバーテンダーになるでしょう。
ただ、しゃべるとイケメンという印象はどこかへ消えてしまうかもしれません。でも、それはそれでとても面白い空間です。
「あなたが表に出るべきだったわね」
もみじさんはドスを効かせた声で言います。
「あの……喧嘩は……」
要さんはちょっと、不安そうに二人をなだめようとします。しかし、それは必要のないことです。
「これは、あたしたちのスキンシップ。オカマだって、いろんなオカマがいるわ。あたしは、エンタメのオカマ!」
もみじさんの性自認はオカマで、それをいじられることにも好意的です。
「そ、そっか……」
要さんにとっては、それがちょっと恐ろしいことだったりするのかもしれません。
オカマとトランスジェンダーは全く別のものです。だって、少なくとももみじさんはオカマであることを楽しんでいます。
「あぁ、なるほど? 俺が馬鹿にされてるの見たことあるか?」
要さんの心配をナツさんという説得力が、全力で殴り飛ばします。
きっと、要さんは自分がオカマと呼ばれ更には馬鹿にされることを想像したのでしょう。
「な、なかった!」
それは少なくとも、このメンバーの中ではありえません。あり得させません。
失礼ですが、彼はどう頑張っても可愛らしさが残ってしまいます。でも、それを男性の可愛らしさになっています。
「ナツが言うと違うなぁ……」
すずめさんはそんなつぶやきをしました。
そもそも、要さんはどこからどう見ても、女性ですし。というより、失礼ですがロリです。
「自信持たなきゃダメよ! 言っとくけどね、要ちゃんはとっても可愛いのよ! 全国女子の自信を損なわないためにも、胸を張りなさい!」
もみじさんの言葉には全力で同意したい。要さんが男扱いされることで、自信を喪失する女性もいるでしょう。
「私のために!」
すぐそこにいました……。
「言っておきますが、すずめさんもとても可愛いですからね!」
このグループの女性陣はレベルが高いです。と言っても、二人しかいないですが……。
「みんな自己肯定感低いなぁおい!」
そこが問題。ナツさんの言うとおりです。
もっと自信を持つべき容姿をお持ちです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます