第11話・禁句
この学校の授業はまったくもって退屈ではありません。
「先生、反応性の高い元素がもうホント好きです。反応性が高いって事は、つまり惚れっぽいということになります。はい、皆さん! ここでこちらをご覧下さい! 反応性の高いショタネコちゃんである水素君が、リバな炭素君と手をつないでいますね。本当は、バリタチで反応性抜群の酸素くんと自由恋愛をしたいのに。それを保っているのが窒素くんです! 恋愛とかあんまり興味のない、悟り系男子です! でも周りは、水素くんや酸素くんとといった自由恋愛大好きなショタっ子ばかり。窒素くん、多分逃げたいんでしょうね! というわけで、説明しながら手元でごちゃごちゃやってましたが、ご覧下さい! これが、自由恋愛!」
先生は、とんでもなく高いテンションで、茶色い液体を染みこませた紙に金槌を振り下ろしました。
すると、爆音とともに、ほんの少しだけ白い煙が立ち上ったのです。
「化学を語るにBLは欠かせません!」
世界史と、化学の先生は同じです。文理両道と言いましょうか、ともかくとしてユニークです。
「せんせー! それは乱暴だと思いまーす! 水素はロリです! 化学は百合です!」
生徒の一人に百合大好きな男子が混ざっていたりもします。
「先生、百合も大好きなので、その解釈も非常にナイスです! その場合、ロリ系タチですね! つまり、酸化水素……水は、ミニマムなカップルです! よし、今年のコミマはそれでいくぞー!」
本当に、面白いのです。興味深さや、授業でそんな事を言ってしまうかと言う笑える要素が組み合わさって、耳が離せません。
「先生……」
ふと、すずめさんの声が聞こえました。
「はい、質問どうぞ!」
先生はとても上機嫌に跳ねるような声色で返しました。
「ネコ、タチって……?」
授業に参加してくれるのが、授業が面白いとしておすすめした俺には嬉しものです。
「ではタチはそうですね……凹凸で言えば凸であり、ネコちゃんを快楽地獄に叩き落としちゃう存在です! そして、タチ依存性にして、ネコちゃんをお嫁さんにしちゃうんですねぇ……。いや本当に、興奮しますねぇ!」
流石に、説明しすぎかもしれません。そんな事を思っていた時です、男子生徒たちが先生の暴走を止めてくれました。
「せんせー、言い過ぎだと思います! 女子の顔が赤いでーす!」
「先生のせいで腐った女子もいるんです! そのせいで、男子は勝手にカップリングされて困っているんですよー!」
そう、この楽しい授業にも問題があります。俺たち男子は、カップリングされることが増えてしまったのです。
些細な問題は捨て置きますけどね……。
「顔赤くした女子! 後で任意で先生のところへ来なさい! 先生が百合のなんたるかを教えてあげます!」
思わず俺も席を立ってしまいました。
「絶対ダメです!」
そんな不純異性交遊は、こんなに堂々と行っては絶対にイケナイと思うのです。
「あぁ、先生としたことが……。ごめんなさい、今の話は忘れてください! 化学はやっぱりBLです! スイヘーリーベーで、中学の時カルシウムまで覚えましたね! その続きが、科学がBLである証明です! はい、教科書の表紙の裏を見てください! スカトロ、ちんちん、Voted for crackdown! The man give a Fe……」
「絶対ダメです!」
今授業で絶対に言うべきじゃないことが言われようとしていました。その前も、大概なのですが、その先は本当にR-18用語なのです。
いえ、俺たちは絶対に知っています。その単語を知らないのは中学生男子時代を経験した男としてはありえないことなのです。
「なんでですか!?」
この先生、手遅れかもしれません……。
「今、授業中です……」
授業の面白さのために、多少の下ネタは必要だと俺も思います。でも、そんなアダルトビデオのような単語は絶対にやりすぎかと……。
「「「Boo!」」」
治安が悪化しつつあります……。ラップ風に先生が歌いだしたせいです。
でも、この先生は本当に有能ではあるのです。英語までかなり堪能だったのですから。Voted for crackdown、取り締まるに投票したという意味になります。割と日常的ではないと思うのです。
男子生徒が、英語の先生に迷惑をかけなければいいのですが……。
「あっ、流石に次の単語はまずかったですね」
先生はちゃんと思い直してくれたみたいで俺はひとまず安心しました。
フェとフォの中間の発音をしたので、わかったのです。
元男子中学生を舐めてはいけません。そういった英単語は、クラス男子の中で爆発的に共有されます。
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