第5話 王女と王子
「桃乃木が消えた⁉︎」
突然のニュースだった。それは黙裏からの情報で先生やPTAからの情報ではなかった。
「あぁ…桃乃木が消えた」
「いやでもさっきまで教室にいたぞ?冗談は辞めて…冗談じゃ無いのか?」
「察しがいいね。冗談じゃないよ。確かにあの子は教室にいた。でもあの子は本当に桃乃木火怒蘭だったのか…何か可笑しくなかったかい?」
「いや普通の桃乃木だったぞ?ドアも蹴破らなかったし授業中も静かだったし…いつもみたいに友達と楽しく話して…話して…」
違う。そこでパリンッと何かが割れた様な音がした。
「あいつはあんな普通な奴じゃない…!あいつは…あいつは!やばい奴だ!」
そこで床が落ちた。
「はっ…?なんで!?」
「何故かまた入ったみたいだね。落ちたままだけど話を聞かせてもらうよ。他に彼女に異変は?」
「異変…異変…!そういえば昨日一緒に帰ったんだ。昭和にいた時間の俺の話だ。根暗な俺じゃない。優しい優しい俺の話だ!」
「へぇ…もしかしたらそれは…」
そこで意識が途切れた。気づいた時には学校の前で俺達の目の前にはあの銀髪の少女。白房灯无愛がいた。
「情報集めきれなかったみたいですねぇ…左をご覧ください。綺麗な雪景色です。右をご覧ください。桃色を纏った最高のパレードです」
白房灯无愛を右手を指す方には嫌に派手な桃色の光を纏ったパレードが開催されていた。
「あれは…どういう事だい?」
「どういう事も何も…あれが桃乃木さんの本性なのでしょう。あのはっちゃけぶり…(笑)ありゃそうとう溜め込んでらしたんでしょうねぇ…さて情報を集めきれず彼女を救えなかった貴方達はゲームオーバー」
「ゲームオーバー…」
よく分からないが何かに負けたという事なのだろうか。
「と言いたい所なんですが。何故貴方達はいきているんです?」
「えっ?」
「普通本性を見た人間は木っ端微塵に壊すというのがこの世界のルールらしくて…でも貴方達は生きているんです。現実で何か変な物でも見ました?」
「変な物……あ!白椿さんの」
「白椿?」
俺達は白房灯无愛に白椿避雷の絵の事を説明した。
「ほう…それはそれは…面白い物を見ましたね。納得しました。その絵は恐らくこの世界と似た様な力を持っているのでしょう。その力を長く吸っていたから貴方達はまだ生きていられる」
「なっ…なら死なないのか?」
「いや…それは無いだろう…死なないのなら白房灯さんは桃乃木火怒蘭の情報よりそっちの絵を出すはずだ」
「その通りです。精々生きていられる時間は30分。今の時間は14時。17時迄生きられはしないでしょう」
「なら…どうすれば」
「探してください」
「「えっ?」」
「我々の王女を…桃乃木火怒蘭様を」
王女…?何の話だ。
「細かい話は後です。こんな事は異例なんです。貴方達なら止められるかもしれないんです。あのパレードの中に入り桃乃木火怒蘭様と話して来てください」
「いやそんなこと急に言われても」
「おやぁ…?意気地が無いねぇ…流石童貞」
「行ってやるよ!童貞舐めんな!」
我ながらチョロいと思う。
「私のバイクを貸します。どなたか運転は?」
「私がしよう。一応使えない事はない」
「このバイクならパレードを飛び越え王女様の所までひとっ飛びです。鷹也史春様」
「え?」
「行ってらっしゃいませ王子様。地獄の旅へ」
急に白房灯无愛は、妖艶に笑いそう言った。
「ドキッとしたよ童貞には荷が重すぎる。行ってきます」
「行ってくるよ白房さん。30分で帰ってくる」
白房さんの身体が遠くなっていくのを感じながら俺達二人は桃乃木火怒蘭の所へ向かった。
あいつやべーよまじべーよ!(もうまじでやばいんだよ…なんかほら…あれだよ…とにかくやべーんだよ!) ベニテングダケ @oojamiuo
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