第4話 作品を作る少女

「これが白椿さんの作品ですね」

俺と黙裏は佐渡に案内され一年の教室に来ていた。

「何か凄い絵だな。色が多い」

「うん…でも重要視する点はそこじゃない…この絵は」

「人の絵の前で何してるんですか?先輩方」

俺達が話をしていると一人の少女がやってきた。金の髪に、整った容姿、人を惹きつける柔らかそうな身体。彼女が

「白椿避雷さんです」

「しろつばき…ひらい」

「佐渡味喰さん。この方々は佐渡さんの知り合いですか?」

「あ…はい」

「よろしく白椿避雷さん。私は黙裏弐巫だ」

「黙裏…あぁあの秀才の。よろしくお願いします」

「鷹也史春だ。よろしく」

「よろしくお願いします。良いご身分ですね。早朝から女子高生二人を侍らせるなんて」

「いやそんな事は…」

「まぁ…その様子じゃ先輩方に悪意は無いみたいですし。別に良いですよ。失礼します」

白椿避雷はそう言うと、俺達がいる教室から音をあまり立てず出た。

「凄い美人だったな」

「そうだね。で、この絵なんだけどね。これジャングルだよ」

「「え…?」」

俺と佐渡は二人で驚いた。

「緑は使われていない。でもこの白は恐竜の骨。この水色は池や川。何よりこのカラフルな道。これは廊下だ。佐渡さんが言っていたジャングルだ」

「確かに言われてみればそうですね。こんな感じでした」

「でもなんで白椿さんがこの絵を」

そこで俺はある事を思い出した。

「君も思い出した様だね。そう白房さんが言っていた様にあの世界が誰かの作品だとすれば佐渡さんが行ったジャングルは白椿さんの作品の可能性が高い」

「え…作品って何の話ですか?」

俺達は佐渡に昭和の時代の話をした。

「へぇ…そんな事が」

「でも俺達がいた昭和の時代は誰の作品なんだ?」

「まぁ…恐らくは桃乃木の作品だろうね。でも私達は桃乃木の作品を見ていない。何であの世界に」

そこでチャイムが鳴った。

「おや…もう時間か」

「あぁ。とりあえず今はこれで終わりだな」

「わかりました…」

そうして俺達は自分達の教室に戻って行った。それから時間は過ぎ

「にしても作品…作品か」

「なぁ君」

「えっ…?ってわっ!」

急に話しかけて来たのは…桃乃木火怒蘭だった。

「ごめん。それより今日一緒に帰らない?少し気になる事があって」

「えっ…あぁ構わないけど」

「本当?じゃあ私先校門で待ってるから!」

「あっ…あぁ」

そう言うと桃乃木火怒蘭は風邪の様に消えて行った。

「何だったんだ…あいつ」

そう言って俺も校門へ向かった。

「あっ!鷹也君帰ろう!」

「あぁ…」

こうして俺達は校門を出た。しばらくは無言の時間が過ぎたが、桃乃木が一つ話を持ち出した。

「昨日は何をしてたのかな」

「えっ…?」

「昨日…12時以降…なのかな。何をしていたのかな」

「なんで…」

なんでそれをこいつが知っているんだ。急に周りの雑音がキーキーとうるさくなった。

「うん…昨日君は、12時から消えた。なのに先生や生徒達はそこにいるって…ねぇ何をしてたの?」

「えっ…と」

どうする…どうすれば。

「…ふっ…くふっ…あはははは!いや嘘嘘ちょっと揶揄っただけ!」

揶揄っただけ…。

「なっ…なんだよ桃乃木…揶揄うなよ」

「ごめんごめん!それより私の家もうそこだからさ!バイバイ!」

「あっ…あぁ」

そうやって桃乃木は家の方に向かって行った。俺はそんな桃乃木を背に歩いた。

「…ねぇ鷹也君!」

「ん?」

俺が振り返ると桃乃木は俺の方をじっと見てこう言った」

「確かに君は昨日12時以降も学校にいた。でも普段の様な根暗な君じゃなく凄く元気で優しい鷹也史春だった。他の子達はそれに気づかなかったけど、私は気づいた」

「えっ…?」

「もし何が面白い事をやってるなら教えてね。それじゃ。Havana Nice Day!また会う日まで」

そう言って桃乃木は自宅へ走って行った。桃乃木が消えたのは次の日の事だった。

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