第6話 寮

【ティンティア・ルーリナイト】


「では、寮を決めます!」

知らない女の人が1年生が全員集まった体育館で叫ぶ。寮の管理人だろうか。今から寮決めが行われるのか…!!胸が踊る。

この学園には寮があって、1部屋に5人が暮らす。1年生の人数は162人なので…32部屋か。部屋は広いと言われているが……5人と暮らすのは大変そうだ。私としては、自分は寮のルールとかを全く聞かない人だから、他にも人がいるというのは助かるのだが。

「じゃあ、これからくじ引きで寮を決めます!」

ザワッ

体育館全体が1年生のざわめきで揺れた。

「くじ引きで寮を決めるって……」

とライルがつぶやき、言葉を続けた。

「「いいね!」」

見事にハモる。二人で笑いあっていると、

「お姉ちゃんたち、もうちょっと静かにしたほうがいいと思うよ………。」

とフィリーからの冷静なコメントが入った。

ふと、横目で先生のいる位置を確認する。

先生は私をガン見していた。怖っ!大人しくしておこう…!また怒られたらたまったもんじゃない。

「くじ引き、といっても、私が部屋番号が書いてある紙を投げるので、それを適当に取っていただくだけです!さぁ、いきますよ?!」

ルリー先生を気にして体がガチガチになる私には目もくれず、女の人が浮遊魔法で全ての紙を空中に浮かせ、生徒たちの上空に運んだ。

「はいっ!!」

その合図と共に紙が舞い降りてくる。私は頑張って紙に手を伸ばし、ぐしゃっと紙を握り潰した。隣でフィリーが優しく紙をキャッチしているのに……なんだか恥ずかしくなる。

もうそんなことは考えないようにして、四つ折りになった紙を開く。


『1』


1番!1番ってすごくない?!

「フィリー!どうだった?!」

思わず大きな声が出てしまったが、周りの声のほうがうるさくて、声はすぐにかき消された。

それでも聞き取ってくれたようだ。フィリーが口をパクパクと動かす。

「え?!なに?!」

聞き返すと、フィリーは紙を見せてきた。その紙には

『1』

そう書かれていた。

「え!!私も一緒!!」

自分の紙をフィリーに見せる。フィリーの顔が赤くなっていくのが分かった。

やった…!!一緒だぁっ!!

ライルは……。ライルに視線を向ける。

ライルの片手に握られた紙には『5』とかかれていた。あ、違った…。でも近いからいつでも会いに行けるよね!

私達はアイコンタクトでいつでも会おうね!と伝え合い笑った。

「では、早速寮に戻ります!」

あれ?なんか今さっきまで女の人がとても長い説明してたような気が……。いいや!フィリーに聞こう!



部屋の前についた。少し胸がドキドキしている。

「お、お姉ちゃん…!」

「フィリー…!」

「せーのっ…」

ガチャッ

扉を開けると、目の前に桃色の髪を2つに束ねた可愛らしい女の子が立っていた。

「おかえりぃ♡あなた達が最後だよぉ♡」

語尾に「♡」をつけている。可愛いな。

「メルン可愛いっ!」

思わずギュッと抱きついた。その行動に、メルンが驚いて全身が固まる。

「な、な、なんで私の名前知って……。」

「クラス表を見てたとき、隣にメルンがいたんだよね。それで可愛い子だなーって思って名前調べて覚えておいたの!」

「怖…。」

「ん?なんて言った?」

「ううん?何でもないよ♡」

にこっと甘い笑顔を見せたメルン。やっぱりこの子可愛いわ。

メルンが奥へ逃げるように走っていったのでついていく。

廊下を抜け、広い部屋に着く。女の子たちがそれぞれ自由なところに座って過ごしていた。

「おお…女子の花園……。」

みんな顔が整っている…!!天国か?ここは。

「アハハッ。女子の花園って何?」

「うわっ」

いつの間にか目の前にいた女の子に驚く。

一つに束ねられた鮮やかな黄色の髪と瞳が、照明を反射して輝く。

「イレス・リュレストですっ!C組だよん。」

「好きな食べ物はズバリ?」

「うーん、大体何でも好き!」

「一緒!」

まだ出会ったばかりの子にいきなり好きな食べ物を聞く私は、端から見ると変人だろう。

でも私の中で好きなものが一つでも同じだったら誰でも友達だと思っている。誰でも、というと、敵とも友達になるとなってしまうが────。

「ねぇねぇ!みんな集まったしさ!自己紹介やろ!」

イレスの提案で自己紹介の時間が始まった。




「じゃあまず私から!私はA組のティンティア・ルーリナイト!炎、土の魔法が使えます!ティアって呼んで!室長希望です!よろしく!」

「ティア、よろしくねぇ♡(メルン・マリアンテ)」

「…………(シノン・ルルラン)」

「ティアよろしく!魔法2つ使えるん?!凄いね!(イレス・リュレスト)」

「お姉ちゃん…室長希望なんだ……(フィリー・ルーリナイト)」

「ティ、アさん。よろしくお願いします…(リフィア・ナウェン)」




「次は私ねぇ♡私はB組のメルン・マリアンテ♡魔法は幻です♡ティアが室長希望なら私は副室長希望で♡」

「メルン、よろしく!!!可愛い!(ティンティア・ルーリナイト)」

「……………」

「よろ!」

「……よろしくね」

「よ、ろしくお願いします…」




「……S組のシノン・ルルラン。魔法は水。無理して話しかけなくていいから。よろしく。」

淡い紫色の長い髪を垂らしたクールな女の子だ。

「無理してないから話しかけるね!!よろしく!」

「シノンちゃんよろしくね♡」

「気軽に話しかけてね!よろしく!」

「よろしくお願いしますっ」

「よろ、しくお願いします」




「C組のイレス・リュレスト!魔法はティアと一緒の炎!よろしくねっ!」

「炎なんだ!よろしく!」

「イレスちゃんよろしく♡」

「……………」

「………炎なんだ」

「よろしくお願いします。」




「フィ、フィリー・ルーリナイトです。ティンティア・ルーリナイトの妹でA組です。風と光の魔法が使えます。よろしくお願いします。」

「よろしくね!フィリー!」

「妹と姉でこんなに性格が違うのね……。」

「妹なんだ!いいね!」

「………双子…」

「双子なんですね。よろしく…お願いします。」




「D組の、リフィア・ナウェンで、す。補助魔法全般が…使えます。よろしくお願いします……。」

毛先が桃色の、長くて白い髪が可愛らしい女の子。人見知りっぽいところが愛らしい。

「よろしく!」

「リフィアちゃんよろしくね♡」

「補助魔法全般!?凄っ!」

「…………」

「よろしく。」

これで自己紹介は終わったかな。

みんなと仲良くなれるといいな!






【フィリー・ルーリナイト】

「では、寮を決めます!」

寮担当の先生が体育館で1年生全員に言った。

魔法のお披露目(?)は終わり、お姉ちゃんは先生に呼ばれて長い時間帰ってこなかったが今、戻って来て寮の人を決めることになった。

1部屋に5人で住むらしい。

正直言って、恥ずかしがり屋な私には、すごく嫌なことだ。

「じゃあ、これからくじ引きで寮を決めます!」

うっ…!やだ!

「くじ引きで決めるって……」

隣の隣にいるライルちゃんが言った。

「「いいね!」」

お姉ちゃんとライルちゃんが同時に言った。

二人はそのまま笑い合う。

うー…あの二人いつの間に仲良くなったの?隣りにいた時点で少しおかしいとは思ってたけど…

ムッとしてライルちゃんをジトッと睨む。

これを嫉妬と言うのか。

二人は変わらず笑い合っていた。

「お姉ちゃんたち、もうちょっと静かにしたほうがいいと思うよ」

嫉妬心が混じって強く言ってしまった。

先生がこっちをめっちゃ見てるっていうのもあったけど。

「くじ引き、といっても私が部屋番号が書いてある紙を投げるので、それを適当に取っていただくだけです!さぁ、いきますよ?!」

お姉ちゃんが体をガチガチにしていたがそんなこと気にしない。

「はいっ!!」

その掛け声とともに紙がふわっと飛んできた。

私はお姉ちゃんみたいにぐちゃぐちゃにしないようにそっと紙を取った。

ドッキドッキ

心臓がうるさいほど鳴り響く。

お姉ちゃんと一緒の寮になりますようにっ!!

祈りを込めて紙を開いた。

『1』

お、おおお姉ちゃんは!?

バッとお姉ちゃんの紙を見る。

そこには『1』と、書かれていた。

「え!!私も一緒!!」

私は声を張り上げて言った。

やったぁーー!奇跡?!

顔を赤くして喜んだ。

あ、ライルちゃんもしかして…違かった?

ライルちゃんは少し残念そうに眉毛の端を下げている。

その紙の番号は

『5』

だった。

ふんっ!ライルちゃんにお姉ちゃんは渡さないんだからっ!!

ギャーギャーワーワーしてたら寮の先生が大きい声で言った。

「しずかにしてくさい!これから、説明をします。

1年は、全員で162人なので32部屋できます。女子16部屋、男子16部屋です。そうすると男女が一人ずつ余るので、一つだけ6人の部屋があります。女子は『1』、男子は『16』の部屋です」

あ、『1』私達の寮は6人なんだ。

みんな優しいといいなぁ。

また先生が喋り始めた。

さっきの続きのようだ。

「基本、寮には、S組、A組、B組、C組、D組の人が一人ずつ集められています。グループ活動などのグループは寮の人達で、男女混合でやる場合は『1』は『1』の男子、女子と組みます。そんな感じで、わかりましたか?」

「はいっ!」

1年生の私も含めて、2割ほどが答える。

この説明…お姉ちゃん聞いてないだろうな。

チラッとお姉ちゃんを見るとやっぱり、ふらふらしてもうダメ~って感じだった。

あはは…。寮にしっかり者がいたらいいけど……

「では、早速寮に戻ります!」

そうして、私達は寮に戻った。




お姉ちゃんと一緒に『1』と書かれたドアの前に立つ。

「お、お姉ちゃん…!」

「フィリー…!」

「せーのっ…」

ガチャッ

二人でゆっくりとドアを開いた。

中には、私と同じでツインテールをしている子がいた。

その子は、

「おかえりぃ♡あなた達が最後だよぉ♡」

と、言った。

げ。なんか周りでハートマークがポンポン出てきているんだけど……

「メルン可愛いっ!」

お姉ちゃんはそう言って彼女の首元に抱きついた。

え?え?え?

なんで名前を知ってるの?

しかも、だ、抱きついてっ!

ツッコミどころが多すぎて何からツッコめばいいのかわからない。

「な、な、なんで私の名前知って……」

そこは一緒だったみたい。

というと、名前があってた、ってこと?

な、なおさら意味がわからなくなってきた…

「クラス表を見てたとき、隣にメルンがいたんだよね。それで可愛い子だなーって思って名前調べて覚えておいたの!」

それはちょっと…

「怖…。」

わっかる。

「ん?なんて言った?」

「ううん?何でもないよ♡」

…どっちもこわい…

見て見ぬふりをして奥へ進む。

中にはいろんな女の子がいた。

「おお…女子の花園…」

……お姉ちゃんがわけのわからないこと言ってるけどもう、気にしないことにした。

「よ、よっ…」

口からうまく言葉が出てこない。

「よろしくね」ってはっきり言えたらいいのに。

「ねぇねぇ!みんな集まったしさ!自己紹介やろ!」

黄色の髪をした女の子の言葉で、私の苦手な自己紹介が始まった。




「じゃあまず私から!私はA組のティンティア・ルーリナイト!炎、土の魔法が使えます!ティアって呼んで!室長希望です!よろしく!」

元気良く言うお姉ちゃんの言葉で、頭が混乱した。

しつちょう…?シツチョウ…室長。

「ティア、よろしくねぇ♡」

「…………」

「ティアよろしく!魔法2つ使えるん?!凄いね!」

「お姉ちゃん…室長希望なんだ……」

「ティ、アさん。よろしくお願いします…」

うーん…お姉ちゃんには悪いけど、お姉ちゃんに室長は務まらないと思う。




「次は私ねぇ♡私はB組のメルン・マリアンテ♡魔法は幻です♡ティアが室長希望なら私は副室長希望で♡」

……えぇ、副室長ってもしかして、お姉ちゃん狙い?ここにもライバルが…?

「メルン、よろしく!!!可愛い!」

「……………」

「よろ!」

「……よろしくね」

なんか複雑な気分だけど。

「よ、ろしくお願いします…」




「……S組のシノン・ルルラン。魔法は水。無理して話しかけなくていいから。よろしく」

無理して話しかけないでいいってクールだな。けど、皆そんなこと思ってないと思う。

「無理してないから話しかけるね!!よろしく!」

「シノンちゃんよろしくね♡」

「気軽に話しかけてね!よろしく!」

「よろしくお願いしますっ」

「よろ、しくお願いします」

さっきから、途切れ途切れに言っているなんとかちゃん。

なんか、気が合いそうだな。




「C組のイレス・リュレスト!魔法はティアと一緒の炎!よろしくねっ!」

その笑顔にその声に、なんとなく嫌な予感がした。

「炎なんだ!よろしく!」

「イレスちゃんよろしく♡」

「……………」

「………炎なんだ」

「よろしくお願いします」

炎。お姉ちゃんと一緒で少しムッとした。お姉ちゃんは私をシスコンしてるって言うけど、私もそれくらい…いや、それよりもお姉ちゃんのことを愛しているのかもしれない。

それにあの笑顔……いやいやっ気のせいだよね! そう、だよね…?





あっという間に私の番になった。

「フィ、フィリー・ルーリナイトです。ティンティア・ルーリナイトの妹でA組です。風と光の魔法が使えます。よろしくお願いします」

「よろしくね!フィリー!」

「妹と姉でこんなに性格が違うのね……」

「妹なんだ!いいね!」

「………双子…」

「双子なんですね。よろしくお願いします」

き、緊張したー! けど、ここは大事な所だから、ちゃんとやれてよかったぁ。




「D組の、リフィア・ナウェン、です。補助魔法全般が…使えます。よろしくお願いします……」

「よろしく!」

「リフィアちゃんよろしくね♡」

「補助魔法全般!?凄っ!」

「…………」

「よろしく」

そう、この子が何とかちゃん。

皆、友達になれたらいいな…。


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