第5話 魔法お披露目会?(3)
【ティンティア・ルーリナイト】
「えー、次はフィリー・ルーリナイトさんですね」
私の時よりかなり違う口調で先生が言った。私の時は呼び捨てだったし挑発してるみたいな感じだったよ?先生ぇ。
ジトッとバレないように先生を睨む。
「は、はいぃっ!」
慌てたように返事をしたフィリー。緊張しまくってるな。もっと軽くていいのに。フィリーに近づいて肩を叩いてやっても良かったのだが、隣にいる先生が怖くて出来なかった。
「フィリーさんは……フィリーさんも2つ魔法が使えるんですね」
私の時ほどではないけれど驚いた先生。ふふん。私の妹はすごいでしょう。
と、自慢気に微笑んでいると。
「ティンティア、ちゃんだよね?」
「ひゃいっ!」
「あはは。何その返事。」
いきなり後ろから話しかけられた。誰だ、と思い振り返る。
「ライルちゃん…?」
「うん!ライル・アメルリンです。」
ピースサインを顔の前でつくって笑みを浮かべているライルちゃん。
その顔を見た瞬間、謝んなきゃ、という言葉が頭の中に浮かび上がった。
「ごめんっ!あの時炎を消しちゃって!」
両手を合わせて頭を下げる。どんな返事がくるか、とドキドキしていると、
「あ!ごめんってそのことね!全然大丈夫!面白かったし!」
上から降ってきた返事は、全然気にしてない様子だった。
ホッとして頭を上げる。
「じゃあ、もう友達だね!ライル!」
「え?ラ、イル…?」
「……あ、ごめん!その呼び方嫌だった?」
これでライルちゃんに謝るのは何回目だろう。
「ううん!逆に、ライルって呼んでほしい!」
太陽のような笑顔が向けられる。
「よし!早速友達一人目!私の名前、長いからティアって呼んで!」
私はガッツポースをつくって笑みを返す。
「うん!分かった!……でさ、ティア。妹さんの魔法、もう終わっちゃってるけど大丈夫?」
「えっ!」
バァンッッ
光が爆発して光の粒子がひらひらと舞い降りるところが目にはいった。
「ホントだ。もう爆発しちゃってるよ。その前の中心に集まる光の粒子たちを見たかったのに!!」
思わず手をぶんぶん振り回して暴れる。そんな私を見てもライルは引いたりせずに、笑っている。いい子だ。
「家族なんでしょ?ならいつでも見れるんじゃない?」
「あ、そっか。確かに」
シスコンの私としては今のフィリーの活躍(?)をじっくりと見させてほしかったものなのだが。後で見せてもらおう。
「レンくんっ!私も光なのっ、よろしくねっ!」
「お?」
先生の隣で魔法の準備をしている男子に話しかけたフィリー。そんな度胸があったのか!!
と、感心していると、
「じゃ、邪魔してすみませんっ!ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ………。」
と言ってそそくさと逃げていったフィリー。まるで人が変わったみたいだ。
あ、フィリーって無意識だと人格が私みたいのに変わるタイプか。やっぱり双子だと性格もどこか似るんだな。
ははは、と笑っていたら、ライルに変な目線を向けられてしまった。
そうしているうちに男子が魔法を使い始めた。フィリーと同じ光で、とても綺麗だったことは覚えているが、他はあまり覚えていない。私は興味がないことに対しての記憶力は鳥よりないのだ。具体的に言うと、3秒で頭の中から記憶が吹っ飛んでいく。
「レンくんの魔法綺麗だったね!」
ライルが興奮した様子で話しかけてくる。
「ん?あ〜そうだね。」
「なにその興味なさそうな返事。」
「いや、だって覚えてないもん……。」
「え?!」
目を見開いて私を見つめたライル。
「みなさーん。集まってください」
私達の会話を遮るように先生の声がした。
なので私は、先生のところに行くまでの間、自分の記憶力のなさについて何故か自慢気に語ったのであった。
【フィリー・ルーリナイト】
「えー、次はフィリー・ルーリナイトさんですね」
「は、はいぃっ!」
き、緊張するっ!!
お姉ちゃんとは性格が真反対だから…と、言ってもこれで緊張するのは普通のことだと思う。
「フィリーさんは……フィリーさんも2つ魔法が使えるんですね」
先生が驚いたような声のトーンで言った。
確かに驚くよね。双子がどっちとも2つ魔法を持っているなんて普通ありえないことだもん。
「光と風、どちらにしますか?」
「えっ、と…じゃあ、光で」
光の魔法は攻撃&回復がどちらともできるから便利なんだよね。
「ふぅぅー…」
深呼吸をして…
「はあっ!」
掛け声を出す。
そのとたん私の白縹色の髪がふわっとさかだった。
ふわあぁっ──
光があちこちに散らばって宙をふわふわと舞い始める。
「綺麗…」「姉妹揃ってすごいって…」なんて声が聞こえてきた。
えへへっ、そんなこと言われたら照れちゃうよ…
光は、私の感情を表すようにぽんっと弾けた。
弾けた光は、宝石みたいにキラキラ光って下に降りていく。
一応言っといたほうがいいよね…?
「先生、この爆発は魔獣にしか効きませんから!」
その言葉が合図だったように、光が地面に触れた。
その瞬間、散らばっていた光が真ん中に集まって…そこ一体が光で包まれて爆発した。
「きゃあぁ!」
「うわあぁ!」
みんな、落ち着いて…何も起きてないから。
「皆さん、落ち着いてください」
冷静な声がした。
「これは、フィリーさんが言ってくれたように、魔獣にしか効きません」
先生、ナイスフォロー!
先生が言ってくれたように、魔獣にしか効かないから皆に害はない。
回復できると言っても今のは攻撃タイプ。攻撃は回復より魔力を使うから少し疲れちゃったな…
「次は、レン・ルギイトさんですね。」
「はい!」
元気良く答える、レンくん。
「レンさんは、光ですね」
同じだ!仲良くなれるかな。
「レンくんっ!私も光なのっ、よろしくねっ!」
……ハッ!
わ、私、今話しかけてた!?
先生がいて、これから魔法を見せるというときに!?
「じゃ、邪魔してすみませんっ!」
ひゃああぁ…!
ごめんなさいごめんなさいと、小声で呟きながら逃げてった私。
私って無意識になんかしちゃうことが多いんだよね…。まぁ、お姉ちゃんほどじゃないんだけど。
「え~っと……じゃ、じゃあ始めます」
レンくんが少しぎこちない笑みをつくって言った。
なんか気を使わせちゃったような…
「はっ!」
レンくんが、手をグーにして前に出した。
光の玉が出てきて私達より高く浮かぶとその光の玉がキランッと光った。
綺麗……。この魔法は、あれか。回復魔法か。
レンくんが手を開いた。
その瞬間、
パアアァァンッ───
風船が割れるような大きい破裂音がした。
破裂した光の玉の欠片がキラキラと空中を舞う。
この光を浴びると、怪我が回復するんだよね。あと、魔力も少しだけ回復してくれる。
おかげで私の魔力が少し回復した。
この魔法、好きなんだよねぇ…
のんきに考えていると、
「さっきの子だよね?」
と話しかけられた。
「ひゃああぁ!」
急に話しかけられて驚いた私は思わず悲鳴を上げてしまった。
すかさず後ろを振り向く。
「れっれんくん!?」
話しかけてくれたのはレンくんだったらしい。
「あー、なんか驚かせちゃったみたいだね。ごめん。」
「全然大丈夫だから!むしろ私の方がゴメン。」
やっぱ、恥ずかしいよぉ…!
あの時の無意識に話せる私になって欲しい!
「こっちこそ、全然大丈夫!名前、なんて言うの?」
「あ、そっか。わたしの名前はね、フィリー・ルーリナイトって言うの」
ちょうどその時予鈴がなった。
「みなさーん。集まってください」
先生が大声でA組のみんなを呼んだ。
「じゃあ、レンくん。私お姉ちゃんのところ行ってくるから!またねっ!」
「うん!またね。フィリー、ちゃん…?」
少し言い方に迷っているようだったけど、なんの呼び方でも嬉しい。
友達になれたよね?
なれてなくても、私にしてはすごい!と、思う。自分で言うのもなんだけど…
「お姉ちゃーん!」
私は小走りしながら、先生の近くにいるお姉ちゃんの名前を呼んだ。
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