第4話 魔法お披露目会? (2)
【ティンティア・ルーリナイト】
「じゃ、いきまぁす!」
みんなの方を向いてにこっと笑う。「笑い返してくれるかなー」とか思ってたけど、返ってきたのはぎこちない笑いだった。
ま、いいや。一応笑い返してくれたし。
気を取り直し、前を向く。
手首と手首を合わせて上に突きだす。力を込める。
ポッとライルちゃんと同じように渦を巻いて現れた小さな炎。炎が大きくなる。それと共に渦を巻く速度がだんだんと遅くなる。
「わあ………。」
「…綺麗………。」
感嘆のため息がところどころから聞こえてくる。
私が生み出した炎は、綺麗な円を描いてい
た。大きさはライルちゃんの2,3倍くらいだろうか。よく見ると、中心に沿ってぐるぐると渦が巻いている。赤、オレンジ、黄色と様々な色が輝いている。
よしっ!結構いい炎生み出せたな!安堵の息を漏らし、笑みを作る。
「えへへっ」
ふと、そんな声がした。この声はフィリー!
バッとフィリーを見ると、まるで自分のことのように私の炎を見て笑い、喜んでいた。
キュン
炎よりも眩しい笑顔に思わず炎から手を放してしまった。
炎が一直線に吹っ飛んでいく。
「あ」
気がついたときにはもう遅かった。
炎が校舎に向かって飛んでいき、
ドゴオオオオン………
壁にぶつかって爆発した。普通燃えるところじゃないの?と思うが、私の炎はどうしてか燃やすというより爆発するタイプなのだ。
あーあ。やっちゃった。家でならフィリーしか見てないからそこまで怒られないけど………。
うん。後ろからヤバいオーラを感じる。早めにこの壁を直してしまおう。
「ふんぬっ」
謎の気合の声を上げ、何かを持ち上げるように腕を下から上へと動かす。
すると、私の足元にあったコンクリートがビシビシッと音をたて亀裂が走った。
コンクリートが剥がれ、土が湧き出てくる。
「はいっ」
私は掛け声を上げ、壁に向かって指をさす。それと共に、土が崩れて煙をたてている壁に向かって凄い速さで飛んでいった。
壊れた部分を隠すようにピッタリと土がはまる。直後、土はビシッと音をたてて、元あった壁と同じ色、素材になり、動きを止めた。
よしよし、壁の修復完了。割れたコンクリートも土魔法でちゃちゃっと直して……。
「証拠隠滅っ!」
一人でグッと親指をたてた。これで先生も怒っていないはず!そう思い振り返ると。
「ひっ」
思わず炎の壁をつくって防御。
炎の壁を通り越して見えた先生は────般若のような顔をしていた。そのままボソッと
「ティンティア。授業が終わったらこっちにいらっしゃい」
と低い声で呟いた。怒られるのって勉強と同じくらい嫌い!い、嫌だぁ!!
視界の端でフィリーが苦笑いをしてこっちを見ていた。
【フィリー・ルーリナイト】
「じゃ、いきまぁす!」
そう言ったお姉ちゃんはこちらを向いて、笑った。
「あははは……お姉ちゃん…」
ぎこちない笑みだったと思う。けど、一応笑顔で返した。
他のみんなもそんな感じだった。
お姉ちゃんが両手を前に出した。
魔法を使う!って思ったときにはもう、キラキラした炎の渦が出来上がっていた。
その炎はとても素敵で、見とれて思わず、「綺麗…」と呟いている人も何人かいた。
綺麗に決まってる。私の自慢のお姉ちゃんだもの。
「えへへっ……」
こんなかっこよくて、魅力的なお姉ちゃんをもってることが誇らしくて、自慢気に微笑んだ。
ぐりん、とお姉ちゃんの首がこちらに向いたような気がしたが気のせいだと思う。
一人、お姉ちゃんとの思い出に浸っていると。
「あ」
というお姉ちゃんの声と
ドゴオオオオン………
謎の爆発音が私の耳に鳴り響いた。
嫌な予感がして、お姉ちゃんの方を見る。
「え、…うわぁ~………」
壁がボロボロになっていたのだ。
家ではよくなることだ。が、ここは学校。
マズいんじゃないの?お姉ちゃん……。
「ふんぬっ」
お姉ちゃんが腕を持ち上げると同時に地面(コンクリート)がバキバキと割れて土を引っ張り出し……
お姉ちゃん…何やってるの…?
「はいっ」
お姉ちゃんが指を指した。
その方向は…壊れた壁。
その瞬間、土がものすごい速さで壊れた壁を修復するように壊れたところに張り付いた。
「証拠隠滅っ!」
お姉ちゃんはグッとポーズをした。
う~ん…。これが証拠隠滅?
確かに壁は治ったけど、みんな見てたからなぁ…先生だって。
お姉ちゃんがにこにこの自信に満ち溢れた顔をこちらに向けてきた。
そのにこにこ顔は先生を見るなり、サアァァと青ざめた。
「ひっ」
炎の壁までつくっている。
「ティンティア。授業が終わったらこっちにいらっしゃい」
先生が何を言ったのかは分からなかったけど、すっごい低い声で言ったのはわかった。
多分お姉ちゃんのことだ…
お姉ちゃん、これから毎日事件起こすかも。
初日からこんなこと思うなんて……これからの生活はこんなことがもっと起こるのかもしれない。大変だなぁ、と思いつつ、なぜかその時、私は「楽しみ」とも思っていた。
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