第3話 魔法お披露目会? (1)

【ティンティア・ルーリナイト】


「では、アメルリンさんからどうぞ。アメルリンさんは…炎ですね。」

「はい!ライル・アメルリン、いきまーす!」

元気な女の子だ。友達になれそうなタイプだな。炎の魔法もお揃いだ。

「はぁっ!!」

ライルちゃんが両手を前に突き出す。

すると、合わさった手のひらから豆粒みたいな炎が渦を巻いて出現した。

そのまま炎は大きくなり、直径40cmくらいの立派な炎の玉が出来上がった。

「綺麗……」

ところどころからそんなクラスメイトの声が漏れる。

ついでに私も言う。鼓膜が破れるくらいの声量で。

「きれーーーーーーい!!!!」

ボンッ

ライルちゃんの炎が爆発し、煙が辺りを包み込む。

しばらくして煙が晴れる。煙の中心から姿を表したライルちゃんは、全身が少し黒ずんでいた。

みんな、何が起こったのか分からない、という表情で、混乱しているはずなのに、視線が私に集中する。

私も何が起きたかよく理解出来なかった。が、

「ティンティア・ルーリナイト……?」

ルリー先生が氷よりも冷たい声で私に近寄ってきた瞬間に状況を瞬時に理解した。

つ、つまり……こんなことが起きたのは私のせいで……今ルリー先生に殺意を向けられているということですね?

「ティンティアさん。ちょっとこっちに来ましょうか。」

ルリー先生が笑顔で私の腕を掴んだ。

そのまま私を端っこへと引きずっていく。こ、殺されるぅ………。

案の定、私は殺意のこもった声で数十分間怒鳴られ続けられるはめとなってしまった。正直、殺さるかと思った(本当に)。




「はい。遅くなってしまいましたね。自己紹介の時間は明日にまわして、授業を延長します。では、次の人お願いします。」

その声で、止まっていた授業が再開した。

それぞれのパフォーマンスにみんな感嘆の息をもらしたり、たまにからかいの声を上げたりなどしていた。が、当の私は、あの説教のせいで眠くて仕方なかったため、何度も睡魔に襲われ、クラスメイトの魔法を見れるほどの余裕がなかった。だが、先生がつど睨んでくるため、中々眠りにつけずに、そのまま私の順番が来た。

「ティンティア・ルーリナイト、どうぞ?」

よ、呼び捨てですか……。しかも威圧感エグいんだけども。先生のオーラのお陰ですっかり目が覚めてしまった。

「はーい」

しぶしぶ、といった感じで先生の横まで歩いていく。みんなの心配したような視線が痛い。

「ティンティアは………。」

私の情報が書かれた紙を読み上げようとして先生が目を見開いた。

「────2つの魔法が使えるんですね。どっちを使います?」

ややかすれた声音で言った先生。みんなも目を見開いて驚いている。あ、そっか。私2つ魔法使えるんだった。

「炎にします。」

「わ、かりました。では、どうぞ。」

「はいっ」

これから魔法をみんなに見せるんだ!

目立つ、ということが大好きな私は、自然と手に力がこもっていた。





【フィリー・ルーリナイト】


「では、アメルリンさんからどうぞ。アメルリンさんは…炎ですね。」

「はい!ライル・アメルリン、行きます!」

この子、お姉ちゃんみたいな子だな。魔法も炎だし。

「はぁっ!!」

ライルちゃんが両手を前に出した。

すると、手から小さな炎がと空中に浮かび上がった。

それから、炎は段々と大きくなり、最終的には大きな炎の玉が出来上がっていた。

「綺麗……」

周りのクラスメイトが口々につぶやいた。

本当に綺麗……まるでキラキラと光る赤い粒たちがライルちゃんの炎の玉に集まっているよう。

ボーッと炎を見つめていたとき。

「きれーーーーーーい!!!!」

突然お姉ちゃんがとてつもなく大きな声で称賛の言葉を口にした。

それと同時に、ボンッと何かが破裂したような音もした。

私はそのうるささに耐えきれず、思わず目をギュッとつぶって耳を両手でふさいだ。

う、うるさい!!耳が痛い!鼓膜破れちゃうかも……!

ギュッと閉じていた目を少し開け、ちらり、と周りの様子を見る。皆は、私みたいに耳をふさいでる人もいたり、びっくりした様子で何かを見ている人もいた。

どうしたんだろう、と皆の見ている方を見た。

私が見たのは、火花が散って、あの大きな炎の球がパラパラと散って、煙がもくもくと出ている様子だった。

あのバンッて音はこれか。と、私の謎は解決したが、みんなの視線は次第にお姉ちゃんへと変わっていった。

もっ、もしかして…!!

キョトンと首を傾げてるお姉ちゃん。

お姉ちゃん…完璧にこの状況を理解できていない……。

「ティンティア・ルーリナイト……?」

冷たい声で言葉を吐き、冷めきった目でお姉ちゃんを見ているルリー先生。

る、ルリー先生、見てるこっちも怖いです……。

この状況を理解したらしいお姉ちゃんは、顔をサアァァと青ざめさせた。

「ティンティアさん。ちょっとこっちに来ましょうか。」

ルリー先生はそう言って、お姉ちゃんの腕を掴んで、嫌がるお姉ちゃんを引きずっていった。

お姉ちゃん、無事を祈ります…!



残された私達は、それぞれで自主練習をしていた。

ずっとルリー先生の怒鳴り声が聞こえる…。お姉ちゃん、大丈夫かな…?



「はい。遅くなってしまいましたね。自己紹介の時間は明日にまわして、授業を延長します。では、次の人お願いします。」

だいぶ長い時間していた自主練がその一言で終わった。

先生の後ろから歩いてきたのはお姉ちゃんだ。ダルそうに体を引きずっている。

お、お姉ちゃん…。お疲れ様です……。




その後、みんなが魔法をお披露目していた。どれも綺麗でびっくりした。

そうして時は過ぎ、とうとうお姉ちゃんの番となった。

「ティンティア・ルーリナイト、どうぞ?」

初日から呼び捨てって…お姉ちゃん、どれだけルリー先生に嫌われちゃったの…?

「はーい」

お姉ちゃんは疲れたのか、か細い声でそう返事をして、よろよろと先生の近くに寄った。

皆、お姉ちゃんのことを心配している。もちろん私も。

「ティンティアは……」

少し間をおいて先生が言った。

「────2つの魔法が使えるんでるね。どっちを使います?」

やや震えた声で言い、お姉ちゃんを見つめるルリー先生。

みんなの目が見開かれた。驚いていることがわかる。そして当の本人も微かに目を見開いていた。え?もしかしてお姉ちゃん魔法2つ使えるの、忘れてた?

「炎にします」

あっ。炎にしたんだ。まぁ、お姉ちゃんって言ったら炎だよね!!なんとなく。

「では、どうぞ」

「はいっ」

お姉ちゃんは目立ちたがり屋だ。だからなのか、お姉ちゃんの瞳の中にあるルビーが、いつもより美しく輝いていた。

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