第2話 クラス替え

【ティンティア・ルーリナイト】


ドッキドッキ

心臓が変な音をたてている。

今私が握りしめすぎてぐちゃぐちゃになっている紙は、クラス表だ。

この学園は、実力によってクラスが分けられる。実力の高いクラスから言うと、S組、A組、B組、C組、D組。

「ふいっ」

意を決して、変な声を上げつつクラス表を開く。

ギン、と目を見開いて自分の名前を探す。

『A組────

ティンティア・ルーリナイト

フィリー・ルーリナイト』

ごしごし、と目をこすりもう一度よく見る。

『A組────

ティンティア・ルーリナイト

フィリー・ルーリナイト』

「おおおおおお?!」

え、A組だと?!しかもフィリーと一緒…!

結構大きな声を上げてしまったせいか、みんなの視線が私に集中する。

嬉しすぎて、あまり気にならないが。

「お姉ちゃんっ」

怒ったような声を出したフィリー。だが、私と一緒なのと、A組ということが相当嬉しかったのか、フィリーも頬が微かに赤く染まっていた。

あぁ、フィリー、可愛いなぁ。シスコン万歳。



「おはようございま〜す」

ずかずかと教室に入る私。心なしか、フィリーが私と少し距離をとって歩いているように感じた。なので、フィリーの細い腕を半ば強引に掴んで隣に引き寄せる。

「お姉ちゃん……はぁ。」

フィリーに謎のため息をつかれながら、私は席に着いた。

私が前でフィリーが後ろだ。

座った直後、チャイムが鳴った。そして鳴り終えるまえに先生らしき人が入ってきた。頭の上で団子結びをしている。女性だ。

おぉ。この学園ってチャイムが鳴っている最中に授業が始まるタイプか。休み時間に教室から一番遠くまで歩いていってしまう私には結構この制度はきつい……。

頑張れ!ティンティア!私はA組なんだ!

ふんっ、と気合の声を出していたら、先生に早速怒られてしまった。

先生、このクラスに来て第一声が私への説教って、酷いと思うんですが………?

「気を取り直して、初めまして。私の名前はルリー・クリスタルです。」

気を取り直して、って言葉、いらないと思うなぁ。そのことにちょっと不満を持つが、まぁ自分が悪いので何とも言えない。

「早速ですが、私は皆さんの実力を知りたいので、これから外に出て魔法を見せてもらいます。」

「では各自外へ出てきてください」と言い残し、ルリー先生が去っていく。なんだこの状況のスピード感。呆気にとられていた最中、人の波に巻き込まれ(しかも真ん中!)、私はほぼ強制的に外へ向かった。





【フィリー・ルーリナイト】


今、私は平気なふりをしているが実はすごく緊張している。

微かに震える手でクラス表を受け取った直後に、1番上のS組から、お姉ちゃんの名前がないかと必死で探す。

途中で横にいたお姉ちゃんから「ふいっ」と、謎の声が聞こえたが無視することにして、目をはなさずじ~っとクラス表を見つめる。

S組が終わり、A組のクラスメイトの名前を見ていると、

『A組────

ティンティア・ルーリナイト』

見、見つけた!!

けど、これからが一番の目的。下に私の名前があるかどうか……

下を見るのが怖かったけど、深呼吸をして心を落ち着かせ、勢いよくバッとA組の表を見た。

『A組────

ティンティア・ルーリナイト

フィリー・ルーリナイト』

や、やった~!!! 同じクラスだっ!!

お姉ちゃんに、お姉ちゃんやったね!!と声をかけようとしたら、

「おおおおおお?!」

……おおおおおお? この声、さては!

お姉ちゃんの方をバッと見ると、案の定、あの声はお姉ちゃんが出したものだった。周りでクラス表を見ていた子たちの視線がお姉ちゃんに集まっている。

「お姉ちゃんっ」

怒ったように注意したが、内心全く怒っていなかった。

そう叫びたくなる気持ちも私はめちゃくちゃわかるから。

平気なふりをしていたつもりだったが、お姉ちゃんがうっとりした視線を向けてきたことに気がついた。もしかして、私嬉しさが顔に出てる?!

パンッと軽く頬を両手で打ち、私はなんとか心を落ち着けた。



教室につくとお姉ちゃんが勢いよくドアをあけてずかずかと入って行き、

「おはようございま~す」

と大声で言った。

みんながお姉ちゃんの方を向いた。

相変わらずだなぁ……。

私は、お姉ちゃんと並んで歩きたいけど流石にそれは……私の性格的に無理。

距離を取っていたのに、お姉ちゃんは私の気持ちなんて気にせず、私の腕を強引に掴んで隣に引き寄せた。

「お姉ちゃん……はぁ。」

お姉ちゃんの隣を歩けることに嬉しさを少し感じつつ、私の努力が……とも思い少し落ち込む。

私はそのまま、腕を引かれて席についた。

当たり前だけど、私の前の席には、お姉ちゃんが座っていた。

私が座ったと同時にチャイムが鳴った。

チャイムがなっている最中に先生と思われる女の人が入ってきた。

初めだから、私達、自己紹介しないとかも…

お姉ちゃん、シスコンって言ったら許さないからね!!

ジトッとお姉ちゃんを睨むと、お姉ちゃんは、「ふんっ」と、また謎の声(気合?)を出して早々先生に叱られていた。


「気を取り直して、初めまして、私の名前はルリー・クリスタルです。」

先生、名前かわいいっ!! 見た目はちょっと厳しそうだけど……

「早速ですが、私は皆さんの実力を知りたいので、これから外に出て、魔法を見せてもらいます。」

先生は、各自外へと言い残して、去っていってしまった。

え、早。個人で行くの?

とか、色々とツッコミたいところはあったが、お姉ちゃんが人の波に連れられて出ていく所が見えたので、私も慌てて追いかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る