『人生ラスト天才法』
やましん(テンパー)
『人生ラスト天才法』
『これは、フィクションです。』
この国で、無事に70歳を迎えた人で、社会的な地位や特段の活躍の場がない、また、一定以上の財産がない人には、ふたつの選択肢がある。
ひとつは、『老人の穴』と呼ばれる、一種の収容所に入ること。
内部の生活は、良くわかってはいないが、積極的に殺害されてるわけではないようだった。
まあ、その程度のものである。
もうひとつは、ラスト1年間、特殊な措置により『天才化』され、それなりの活躍の後、安楽死するというものである。
天才化自体が、うまく行かない場合もかなりあるが、そのときは、それなりの、架空の地位に置かれて、ちやほやされる。
会社だったり、役所だったり、豪華なお屋敷だったり、超リゾートだったり、宇宙空間だったり、コースは色々あった。
唯一、延命できるのは、たとえば、その措置によって、ほんとに才能が開花したような場合である。
まあ、なかなか、そうしたことはないが、中には、稀有なケースもあったのである。
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いくつかのケースを紹介しよう。
ケース その1 小説家
あまかぜ ゆきしのぶ さん
小説家コースは、人気コースである。
しかし、その大量の作品で、ゴミ箱行きにならないものは、ほとんど、ない。
その中で、選別をしているひとり、まもなく65歳になるという、大出版社の元編集次長だった、どちらかというと、負け組に近い人物が、あまりのショックで、ゴミ箱に頭を突っ込んだと言われるのが、この人の、『みんなでしんでもらいましょう。~死んでれらの復讐』だった。
主人公、『かれつ ひでみこ』が、斬新な手法で、かつて主人公を苛めぬいた連中に、70歳になる前に、復讐する話である。
殺害方法が、あまりに、パーフェクトで、新鮮だった。
この話で、彼女は、『ドン・ブラコ小説新人大賞』に輝いた。天才コースで書かれた作品を審査するものだが、該当者がでたのは、5年ぶりだった。
しかも、創設以来、3人目である。
作品総数は、すでに、八千万を越える、とされる。
95歳の現在も、鎌倉で執筆活動している。
なお、中央情報庁の、顧問に抜擢されているとの噂もあった。
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ケース その2 作曲家 クラシック音楽部門
シン・マヤさん
天才化以降、半年間で、交響曲ふたつ、ヴァイオリン協奏曲、フルート協奏曲を発表。
奥が深い曲ではないが、その、あまく切ない旋律が、審査をした老作曲家のハートを揺さぶった。
たしかに、本来、才能があったのだろう。
しかし、このかたは、ちょっと幸運でもあった。
つまり、クラシック音楽は、人気がなく、希望者が少ない。
元々、秀でた才能があるひとは、すでに、プロになっている場合が多い。
競争率が低いのだ。
それでも、幸運だったことには違いがないが、最近は筆が止まっている。しかし、一度延命したら、再審査はない。あまりに、煩雑になるからだ。
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ケース その3 スポーツ・パーソン
この分野は難しい。
そもそも、年齢的な限界が早く、どこをもって、延命するのかの基準を立てにくい。
そこで、もはや、競技会をするしかない。
各部門の一位と、全体から選ばれる、特待生若干名が、延命される。
かれらは、毎年、延命者競技会に参加する資格を得る。
ここでの順位は、あまり、生活には関係はしないが、栄誉が与えられる。
煩雑なので、内容は省略。
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ケース 4 政治家
政治家は、もっとも、難しい領域だ。
延命されるかどうかを判断するのは、国民による投票である。
ただし、全国民とはゆかないので、無作為に抽出された選挙人による投票を行う。
当選するのは、毎年ひとりだけである。
さらに、その後、選挙に立候補し、当選しなければならない。
ただし、地方議会でも構わない。
重沢氏は、まあ、天才だった。
政治活動はしたこともなく、ながく、八百屋さんだったのだ。
彼は、なんと、首相候補にまでなった。
現在も、105歳で、現役である。
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この制度の良し悪しについては、300年間、議論が禁止されている。
『人生ラスト天才法』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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