第17話 お茶会②
何の前触れもなく突如乱入してきたのはクロードだった。アーネがスカートを着ておしゃれをしていたと、どこからか聞きつけ乗り込んできたのだ。タイミングよく「あーん」を阻止したのはさすがである。
「全く…いい歳したおやじが何しようとしてたんだか」
「そうですよ父上、みっともない」
「ご、ごめんなさい…私が差し出したから…」
「「アーネは悪くない!!」」
「お前らな…」
全ての非はジェイルにあるとばかりにクロードとエドの言葉が見事に重なる。ジェイルは、呆れ半分で二人を見るしか出来なかった。
結局クロードも無理矢理参加してきて四人でお茶会再開となった。ウィルは執務室で仕事をしているらしい。兄さんは戻らなくていいのだろうか?
「アーネ、すごく可愛いぞ。まるで妖精のようだ」
「兄さん…目大丈夫?」
本日のクロードも溺愛っぷりがすごい。仕事のし過ぎで目がおかしくなっているのではないだろうか。本気で心配になるセリフだ。
最初は皆で他愛ない昔話に花を咲かせていた。私がドレスでイヴァによじ登ろうとしたなど本人も覚えていない事を引っ張り出されたりもした。いったいいくつの時の事を言い出すのだ。
しばらくして、ジェイルがクロードと政治の話をし始めたのでアーネはエドに話しかけた。
「エド、仕事はどう? 王都の見回りとかしてるんでしょ。小さい頃は騎士になるって言ってたもんね」
「あぁ、やりがいがあるよ。もっと力をつけなきゃって思えるし」
「へぇ…あ、そうだ。エド、今度手合わせしない?」
アーネとて11年間、辺境警備隊で鍛えてきたのだ。喧嘩っ早いという訳ではないが、未知の相手との手合わせは心躍るものがある。しかし、エドは言葉を濁らせてしまった。
「えっ! いや…それは……」
「だめ? 向こうでは毎日訓練してたからこのままじゃ鈍っちゃいそうで…お願い」
おねだりをするように上目遣いでエドを見る。もちろんアーネは無意識の仕草である。エドは口をパクパクさせていて返事はない。やっぱり女と手合わせなんて出来るかとか思ってるのかなぁ。諦めずにじっと見つめ続けてみる。
「うぐっ………分かった」
「やったぁ! エド大好き!!」
あっさり陥落したエドに、アーネは両手を合わせて嬉しそうに笑った。エドは歳が近い分、おねだりという我が儘も言えてしまうのだ。
だが、なぜかエドはテーブルに突っ伏してしまって動かない。そんなに嫌だったのだろうか。しかも先程まで話し込んでいた二人までもがこちらを見ている。
「アーネ……」
「アーネ様は本当に恐ろしい…」
二人して何が言いたいのだろうか。このくらいの我が儘は許してほしいのだが。
結局この後、クロードが執務に戻るという事もあり、お茶会は解散となった。
立ち上がった際にスカートがふわりと揺れ、ようやく自分の格好を思い出す。リリーが言っていたように座っていただけだからスカートでも全く気にならなかった。
そんな事を思いながら部屋を出ようとすると、エドに腕を掴まれた。先に部屋を出た二人に聞かれたくなかったのか声を落として話しかけてきた。
「アーネ、その格好似合ってるよ。……すごく可愛い」
「えへへ、ありがとう」
「それじゃ、また…」
「うん!」
そそくさと足早に出ていくエド。何となく顔が赤かったが具合でも悪いのだろうか。それにしても、やはりお世辞でも褒められると嬉しい。
(変って思われなくて良かった。リリーのコーディネートはすごいなぁ)
その夜、クロードからスカートを着てお茶会に行った事を延々と愚痴られる事となった。
夕食の時に見せるつもりだったと言っても、クロードの機嫌は一向によくならない。そのため、アーネは兄が選んだ服を着るはめになったのだ。その服を着て「あーん」までさせられた。なぜか昔のように「お兄様、大好き」とまで言わせられて、ようやくクロードの機嫌は回復したのだった。
ちなみにクロードが選んだ服は、フリルたっぷりのいかにも女の子らしいふわふわのものだった。着方が分からなかったが、リリーにも誰にも見せたくないので一人で頑張った。二度と着たくない…。
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