第7話 インターン生
京子に聞き取りを頼もうかと思ってふと応接室の端に目をやると、係長と京子が珍しく一緒にいるのが目に入った。
「京子、どうかしたの? 係長と親密そうだけど」
「小春ー、冗談言わないでよー。捜査会議よ、捜査会議ー」
係長は困った表情をしていた。すると、夏子のスマホに連絡がきたようだった。
「あの、デザイン科の知り合いに、田中さんのことを訊いてみたら、返信がきました。田中さん、今学期は休学してますね。学費も全部自分で払ってるから、バイトを掛け持ちしまくって、それが原因で休学してるそうです」
夏子は小声で私たちに話した。
「おう、バイトが忙しくて休学か」
「お母さんが倒れて、経済的に余裕がなくなったらしいです」
「ふーん、苦労してるんだー。この会社に採用されるといいねー」
「おう、休学してるんだったら、インターン、来れないんじゃないか」
「それは、各大学の規定にもよるのかと思いますが」
私は自信なさげに答えた。夏子にはまた連絡がきているようだった。
「田中さん、普段からバイトばっかりで飲み会とかもあんまり参加しないから、みんな心配してるみたいです」
「えー、飲み代払ってあげたいー」
「最近は弟と会うのが生きがいだって言ってたそうです」
「ふーん、弟ねー、毎日顔合わせてたらー、うっとしくなるわよー」
「京子のことは別にいいから」
「私もー、夏子ちゃんみたいな妹が欲しかったなー」
「夏子ちゃんは、お前みたいなギャルの姉はいらないってさ」
「係長ー、セクハラ相談窓口に通報しますねー」
「おう、今のはセクハラじゃないだろ」
その場の空気を読まずにお馬鹿な会話を続けてしまって、私は謝罪したいくらい恥ずかしかった。
「じゃ、お姉ちゃん、聞き取り再会しよっ」
夏子は勢いよく私を引っ張って応接室から出た。
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