第2章 -3-

リアル過ぎる。

否、現実であんな可愛い子と、あんなに親しくお喋りとか、ほぼないから非現実的アンリアルだ。

けど・・リアル過ぎる。


今までにもVRゴーグルは体験した事あったけど、これは没入感が桁違いだ。


しばらく余韻に浸っていると、部屋のドアがそーっと開いて妹が遠慮深そうに顔を覗かせた。


「おにぃちゃーん・・ごはんだよー。」小声でそう言いながら、ベッドで横になっている俺を視認した途端、いつもの口調に戻る。

「あ、もう終わったんだね?ごはんだよ!」


「ああ、すぐ行くー」


仮想都市へ没入してるとこ、見られたのかな?

ちょっとだけ恥ずかしい気がした。


リビングへ行くと、母が皆のご飯をよそっている所だった。

「そういえば美月ー、さっきお父さんとお話ししてたでしょ?元気にしてた?」


「うん。今シンガポールだって。何かの商談も上手くいったらしいよ~。また後でお母さんにも掛けるって言ってたよ~。さっき、お兄ちゃんにも声かけようと思ったんだけどー・・」

ニヤニヤとこっちを見ている。


「な・・やっぱりお前、見てたのか!?」

「うん(笑)恰好良かったよ、全身タイツ(笑笑笑)」


ぬぐっ!?そこから!!!


「お父さんに報告しておいたから(ニヤリ)」

「くっ・・余計な事を・・・・」


そんな恥辱を受けながらの夕食を終え、パソコンを立ち上げた。

reViveの世界に没入する方は何気に体力を使うので、ウェブ版の方を起動してみた。

フレンドリストに「Arisa」の名前があった。


背徳感を抱きつつも『追跡』をクリックしてみた。


家族三人で夕食中だった。

『・・で、茜さんと一樹さんとフレンド登録したんだよー』

『さっそくアバターのお友達が出来たのか。よかったな。仲良くするんだぞ。』

『うん!ごちそうさま!』

Arisaはリビングのソファに座ってTVを観始めた。歌番組だった。


やはり、イケない覗きをしている感じがして・・

「ごめんな、おやすみ」

届かないと知りつつも声をかけてログアウトした。



───翌日の大学。


「拙者は推しの1人に直接会いに行ったでござるよ。(フンス)」


「わたしは、メイド喫茶みたいな所に行ってみたの。皆凄い可愛いんだもん♡ずっと観てた。」


「へー、あたしと一樹はArisaちゃんっていうフレンドが出来たんだよ。ね!」

そう言いながら茜は俺の手を握ってブンブンと強制に握手する。

唐突に異性に手を握られると、ちょっとドキっとしちゃうが、茜の方は気にも留めないようだ。

まぁ、その距離感が心地よかったりもしている。


「しかしAIDってあれだな。可愛い子多いよな。」

茜の手を振りほどきながら話題を振ってみた。


「一樹ったら、Arisaちゃんに惚れちゃったんじゃないの~?」


「っば・な・にゃに・」


「ぇ?まじ?」

それまで肩を回したり腕を揉み解していた宏が、ようやく会話に入ってきた。

「そんな可愛い子がいるなら、俺も行きゃよかったぁー・・」


「宏は昨日、ボウリングだっけ?」


「ああ、先輩に助っ人で誘われてよぉ・・5ゲームも投げたぜぇ。アベ200超え(ブイ)

もう流石に筋肉痛。家帰ったらもう夜だもん。

VRの届いてたけど、まだ箱開けてもないよ。今日帰ったらやってみっかな。」


「全身タイツの自撮り皆に送ってね(笑)」

と、茜が茶化す。


「全身タイツ?なんだそりゃ? そういや、前から気になってたんだけどよぉ『reVive』って復活するって意味だよな?何が復活すんだ?」


「それについては、前に何かでチラっと読んだ事がある。」

さすがは慎太郎。情報通だ。


「何年か前に『BeBorn』っていう仮想空間の土地を購入して家建てたりっていうサービスがあったんだけど、半年くらいで閉鎖されちゃって・・たしかそれを作ってたのが『reVive』と同じ会社だったよぉ。」


「『BeBorn』・・誕生がポシャってからの~『reVive』か。」

なるほどーと皆頷いた。


「通称『BB』っていって、当時は結構話題になったみたいだけど、時代が追い付いてなかったのかもね。仮想空間で動き回るには、パソコンのスペックも足りてなかっただろうし。」


「俺たち、すげー時代に生きてるのかもなぁ」


「ね!今夜、仮想世界・・空蝉町だっけ?名前あるんだよね。あっちで集まってみようよ。」

茜の提案に皆、即OK。


スマホでウェブ版のreViveの地図を開いて、ちょっと大きめの公園を集合場所に決めた。

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