第22話 エレナ冒険者になる〜1

エレナは船の帆先に立って風を受けていた。帽子を取ってエルフ独特の耳を出して何かを感じたい感じられるはずだと信じてアルノーに故郷があるかも知れないし、もう無いかも知れない。

『エレナ、危ないよ!』ルークは強い潮風でエレナが飛ばされないか心配で堪らないがエレナの強い気持ちに負けて一歩引いてエレナが落ちないように支えるのが精一杯だ。

やがて船室に戻ると『私の家が有るかも知れないし、もう無いかも知れないけど行ってみたい』と何かを決意した目でルークを見た。『わかった。付き合うよ』ルークに他の選択肢は無さそうだと思い知らされた。


『ねえルークパパ。私を冒険者にして!そしてこの国の奥に有るかも知れない故郷に戻ってみたいの?そこは鬱蒼とした森の木々に囲まれたエルフの里なんだけど、戻らないといけない気がするの』

それはエルフの血に刻まれた何か帰趨本能なのだろうか。


『じゃあ港に着いたら冒険者ギルドを探して冒険者登録しようか?あれエレナは何歳だった?』エレナの見た目は七歳位なんだけど、実年齢を聞いていなかったのを思い出した。確か冒険者登録は十五歳からだったように思う。

『私は15よ!』

『え!七歳位だと思ってた』

『エルフは成長が遅いのよ。でも人間社会では信じてもらえないし幼女の振りをしている方が楽なのよ』

『…。もしかして幼い服とか着せて怒ってた?』

『怒ってないわ。可愛い服は好きよでも森では歩きにくいわ』

『わかった。じゃあ船が着いたら男の子のような服を探そう』

『うん。お願い』


俺のお父さんの思い出作りは短かった。


船はアルノー王国の入り口の町エルグリアに着いた。

早速中古の服屋で男の子の服装に変えてから冒険者ギルドに立ち寄った。


受付で自分のギルドカードを見せてから『この子のギルドカードを作ってくれ!』と頼んだ。

『私はノアよ。あのね冒険者は十五歳にならなきゃ作れないのよ。もう忘れちゃったの?』

ルークはエレナの帽子をから耳を片側だけ出して小声で『この娘は十五、エルフは体の成長が遅いんだよ』とウインクした。

『ちょっと待ってなさい』と受付嬢は奥に行った。


『ギルマスに相談するのだろう』とエレナに耳打ちした。

やがて奥に来てくれと言われてギルマスの部屋に通された。

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