第15話 アレッサの街〜3

アレッサの冒険者ギルドの奥で移転陣が光っていたころ、冒険者ギルドは騒然としていた。


トールと呼ばれている男が『ポーションをくれ!』と叫んでいる。

ギルドの受付嬢は価格表を見せて『どのポーションにしますか?』と冷静に聞いている。

『この怪我に効くポーションに決まっているだろう!』

『私は医者じゃありませんのでどれが効くかなんて知りませんよ』

『じゃあ医者は何処だ!』

『この街に医者は居ませんよ。みんなポーションを飲んで治しているんですから』

『じゃあ一番高いポーションをくれ!』

『小金貨5枚になります。現金が無ければギルド預金から差し引きますがどうされますか?』

『そんな大金を持ってる訳ないだろう!』


そんな中にステファンは遭遇してしまったのだ。

『オイお前、その顔の盗人の刻印はどうした!』

『落ちてた物を拾ったらこうなったんだよ。俺は悪くない。早く治してくれ!』


ステファンは以前に王都で騒ぎになったスリへの刻印を思い出して『お前は他人の持ち物を盗んでそうなったんだろう。何処で盗んだのか言え!』とギルド職員に捕獲を命じた。

『え〜と、どなた様で⁈』

『私は王都ギルドマスターのステファンだ!此処のギルドマスターは何処にいる!』

受付嬢は2階奥のギルドマスターの部屋へ呼びに行ったが男は『早く治してくれ!死んでしまう!』と泣き叫んでいた。

ステファンは『直ぐには死なぬ』と切り捨てた。

『何処で盗んだか盗んだ物はどうしたか言えば本人に死なぬ方法を聞いて来てやろう』男は渋々『竜の髭と言う安宿の2階3つ目の部屋に落ちてた。荷物はそのままだ』とあくまでも落ちていた物を拾ったと言いたかったらしい。

『まあ私なら手を切り落として直ぐにフルポーションを飲むのだがね』とステファンは嘯いた。


やがてギルドマスターがやって来て『これは王都のステファン様ではありませんか。どうされたのですか?私は当ギルドのドミニク・アレキサンドと申します。お久しぶりです』

ステファンは『何でもない。ちょっとした視察だ。これでも監査役の長だからな』『ところでこの男は恐らく錬金術師の荷物を盗もうとして怪我をしたようだ。捕まえて自警団の牢にでも入れておけ!』と命じて自分は相手の宿に行ってくるとその場をあとにした。



このギルドにはこの遣り取りを聞いていた3人連れがいてリーダーらしい女が『面白そうな奴が居そうだね。アイツの後を追って錬金術師を調べろ!』と一人に命じていた。

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