第14話 アレッサの街〜2

『アレッサ支部長のブリックス・グレインと申します。宮廷錬金術師長のルーク様ですよね。わざわざお越し頂いて恐縮です』


『解任されましたので元です。その経緯を尊師のルーエン氏に報告したく所在の情報が欲しくてお伺いしました。尊師は以前にアルノー王国に興味を持たれていたのでこの街を通られたのではと立ち寄りました』


『確かに3年ほど前にお会いしましたがちょっと履歴を調べさせます』と中座された。暫くしてから『ルーエン氏の口座はこの先の港町ノルンで時々下されています。ノルンはアルノー王国に近いので時々戻られてるご様子ですね』


『ありがとう御座います。ノルンに行って見ます』と礼を言って錬金術師協会を後にした。


ルークを送り出した後にブリックス支部長は協会長のマクミラン氏に『フルポーションはノルンに向けて明日発送します』と暗号電信を送った。これにはマクミラン協会長名で全支部に対して王都のフルポーションを探し欲しいと暗号電信が出されていたのだ。王都のフルポーションとは王都の最高錬金術師を指す隠語である。


マクミラン協会長は冒険者ギルドに恩を売るチャンスと見てステファンギルド長に面会を求めた。

『最近冒険者からホットプレートのご注文が多くて喜んでいるのですよ。このお礼に最高級のワインを探していたところノルンに近々入荷する知らせが届きました。ステファン様はワインのコレクターとお聞きしましたのでノルンまで出迎えに行かれるか王都に届くまでお待ちになるかお伺いしたくてお邪魔しました』


『それは良い知らせだ。私が買い付けに行こう。このお礼は何かで返しますよ』

と上機嫌だった。


冒険者ギルドには支部の監査用に転移陣が仕掛けられており一瞬で本部と支部間を移動できるのだ。王都冒険者ギルドのギルドマスターステファンは監査メンバーのリーダーでこの移転陣が使えるのだ。

監査メンバーは支部間の情報格差やサービスの均一化を図り指導する役割もあり視察に使っても問題ないのである。

ステファンがこのギルドを訪れたのはノルンにはまだ来ていないのならこの街で泊まった可能性があるからだ。

アレッサの冒険者ギルドの1階奥に移転陣があり夕暮れ刻にこの移転陣が光ったのだった。

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