第7話 宮城が暗い

エリック第一王子は錬金術師協会から重い足取りで宮城に戻ってきたのだが城内が暗い。何故暗いんだと聞いても誰も答えを知らない。外からの明かりが届く所以外は暗く場所によっては真っ暗だ。照明に使っている魔石が光っていないのだが誰も何故光っていないのかが理解出来ていない。

では取り敢えず昔は使っていたと言う今では骨董品の飾りになっているトーチに油を差して使うように指図したのだが王妃からの名で魔石照明に変えた時から油を使わなくなり王城に油の在庫が少ないのである。加えて給油しなくなった為に油芯もボロボロで手の届く範囲のトーチには芯が付いていないのだ。


エリックは宰相の元を訪れて『何故城内の灯りが消えているのだ!』と詰め寄ったが『分かりません。照明はルーエン錬金術師長が王妃の命令で魔石照明に変えたと聞いていましたのでルーエン氏ならご存知かと。ただ隠居されているので何処においでか存じません。城内の錬金術師なら知っている者が居るかもです』

『ルーク氏が追放されてからセシリア嬢と数名の下働きが残っている筈なのですが今朝から見当たりません』

そうセシリア嬢は城内の明かりが消えたので『これはヤバイ』と逃げ出していたのである。

エリックは宮廷魔導師団長を訪ねたが彼も不在で騎士団長と遭遇出来たのだが城内の騎士団宿舎も真っ暗で皆で城内の警備に当たっているとの話で不審者侵入警報も動かずどうも錬金術師長が不在の為に城の結界も消えているようだとの報告を受けた。

夕方に帰って来たベンジャール魔導師団長も城内が暗く驚いていたがルーエン氏から城の結界は錬金術師長の仕事でその為に城を3日以上空ける事も出来ずず〜っと城内の地下深くに寝泊まりしないといけないのだと外に出られる魔導師団を羨んだと聞かされたとの話だった。


城の明かりが消えている知らせは冒険者ギルドにも伝わっていてギルドマスターのステファンは懇意にしてるレンドリン騎士団長に事情を確認していた。

エルフのギルマスであるステファンは嘗ては初代王バッカスと共に戦った戦友でもあり王城の築城にも立ち会った人物なのだ。


『あゝあの城は中央地下には昔初代王と戦って手に入れたドラゴンの魔硝石があり城の結界は魔硝石で保たれている。恐らく魔硝石の魔力が尽きたのだろうけど歴代の錬金術師長が魔力供給していた筈なのだが錬金術師長はどうしたのだ』

レンドリン騎士団長からはルーエン氏の後任のルーク氏は追放されたから今は錬金術師長は居ないのだよと驚きの答えが返って来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る