第6話 錬金術師協会

エリック第一王子は錬金術師協会に来ていた。

『協会長を呼べ!』

前触れもなく突然の訪問に慌てたが幸いにも協会長が居たので来賓室に通された。

『急なご訪問で驚きましたが何用でございますか?』とステファン協会長も低姿勢で尋ねたのだが、この魔法陣が起動しない理由が知りたいと一枚の魔法陣を目の前に広げられた。


ステファン協会長は魔法陣を覗き込むと『これはルーエン氏が試作される際に作られる起動用の魔法陣ですな。これは当錬金術師協会にも届けられた試作用魔法陣でこれ単体では何も起こりませんよ』と事実を告げられた。


『これで起動した魔法陣を見たのだぞ!』と息巻いたものの。『ほれ!此処にも同じ物が御座います』と棚からステファンが自作の魔法陣作成用の同じ魔法陣を広げたのである。

『此処とかに空白があるでしょう。此処に別に描いた魔法陣を載せて併せて起動するのです。試作用なので共通部分を一枚の紙に描いておき作りたい魔法陣を空白部分に置いて組み合わせて起動させるのです。紙も高いので何回も描き込むのも面倒ですし勿体無いので共通部分と専用部分を分けて試作する画期的なアイデアなんです。これルーエン紙と呼ばれて一時ブームになったんですよ』


ではあの時、丸めた紙を抑える為に置かれた石が真の魔法陣だったと言うのか⁉︎

エリックは愕然と膝を崩すのであった。


実際には追加する魔法陣の紙を押さえる為の石でも有ったのだが紙が足りなくてどんどん小さくなって『面倒だから石の裏に貼ってしまえ』と置き石と兼用する様になっただけなのだが説明するのも面倒なので見た目はタダの文鎮代りにしか見えなかっただけなのである。


一方で王都から離れた錬金術師協会支部では錬金術師マスターの資格者を示した金バッチを見せたルークが著作権料の残高に驚愕していた。

『こんなに溜まってたの?』

『ルーク様 申し訳ありませんが支部にはそれほど多くの現金を置いていないので高額の引き出しはお控えください。』と言われて支障のない程度の金貨を引き出したのだ。まあ小金貨30枚と銀貨50枚あれば当分は暮らせるだろうし国境も越えられる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る