第4話 セシリアの思惑
セシリアの魔力量は多くは無かった。第一王子エリックから部下にする様に求められた時に鑑定したのだが並の魔術師程度の魔力量がなく、当然だが魔硝石に供給できる能力もない。かと言ってクビにも出来ず『まあポーションぐらいは作れるだろう』と宮廷騎士団向けのポーション作りを命じた。
暫くしてポーションの鑑定をして欲しいと錬金術師長の作業部屋にやって来たのだがポーションの鑑定に関心も無く周りに興味津々の様子。
『周りの物にふれるでない!』
此処には歴代の錬金術師長が捨てられずに残した危険な物がいっぱいあるのだ。
私も当初は信用してなかったが『そこに手を入れてみよ!』と言われて手を入れたら手首から先を食い千切られた。その棚の上にポーション各種があり尊師はそこからフルポーションを取り出して『これを飲め!』と差し出されたポーションを飲んで手首から先が戻ったのだった。そこにポーションがあるのは間違って手を入れても回復させる為に置いてあるのだ。
尊師からは自分が作った罠の恐ろしさを判らせポーションの有り難みを知る為に自分も先代から同じ事をされ弟子の修行の第一歩だと教えられた。
『セシリア お前も弟子になりたいなら手を入れてみよ!』と問うたのだがブルブルと首を振って拒否された。まあ仕方ないよね。それに後継者としての魔力量も無いんだから脅すだけで充分だ。
フルポーションは耐性が有るから何度も飲み続けると元に戻らなくなる。普通の国民がフルポーションを飲むのは一生の内でそう何回もないが戦場に立つ騎士達はそうは行かない。普通のポーションも耐性はあるのだがフルポーションほど効果が高くないから耐性もそれ程には気にならない。
今は戦争がないから完全フルポーションを作る意味も少ないがいつ何処で戦争が起こるか分からんから平和な内に完全フルポーションを作っておくのか私の恩師から課せられた課題なんだよ。
『それで出来そうなの?』
目処は立ったのだが『材料集めが大変でね。ギルドに依頼してるのだがいつになるのやら。』
『先生はアイテムボックスも作れるの?』
『作り方は教えられたが作ったことは無いね。』
そうアイテムボックスは戦略物質だから宮廷錬金術師は戦時の兵站輸送に必要なアイテムボックスは厳しく管理されている。街中で売られているアイテムボックスは容量が少ないので見逃されているが宮廷騎士団が使うアイテムボックスは規模が桁違いに大きいから作る魔力量も素材も異なるのだ。
『君には宮廷錬金術師が作るだけの魔力量も無いし素材も王城宝物庫で管理されてるから作れないよ』宝物庫に入るには宰相と国王の印がないと宝物庫の警備員に通して貰えない。
まあ小さいので良ければ錬金術師協会で使用料を払えば自分の魔力量に合ったアイテムボックスが作れるのだがセシリアの魔力量では小銭入れ程度だろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます