第2話 宮廷錬金術師

此処フルムンド王国の王都は大都市だ。出来た時は村程度の大きさだったが人々が集まり何度かの拡張工事を経て現代に至る。街を守る結界も当初は街全体だったが拡張されるにつれて宮城周辺しか守れなくなった。


城の衛兵は近づいてくる宮廷錬金術師に気付き『またあの爺さん。汚い子供を拾ってきたな』と口には出さないものの立ち止まる様に立ち塞がった。

『弟子を連れてきた。道を開けよ!我に触れれば呪われるぞ!』と常套句を使って道を開けさせた。この爺さんもとい宮廷錬金術師は日頃から速効性の毒を仕込んでいて袖を掴もうとすると毒をうまく振り撒くのだが毒に触れた者は手が爛れて飛び退けるのだった。これが衛兵間に伝わってからは衛兵たちは近寄らなくなった。


*****

宮城の錬金術師の部屋は最下層にあり下女を呼んで『弟子候補を見つけてきた。綺麗にして服も着替えさせ、そうだな腹も空かしているだろうから何食わせてから部屋に連れてきてくれ』と命じた。

『また連れてきたのですか?この前の子供はどうしたんですか?』

『あれは使えなんだから王都の孤児院に預けてきた。仕方ないだろう。早く後継者を作らんと引退できん。』


宮廷錬金術師の一番の仕事はこの宮城の魔法結界と物理結界の維持である。

宮城奥深くに大きな魔石があり、この魔石の効果で結界が維持されている。そしてこの魔石に魔力供給するのが錬金術師の仕事なのだが国王が代替わりすると王城に隣接された教会の司祭長から教会も守って欲しいと懇願されて結界の維持に多くの魔力が必要となってきた。それも酔っ払いが貴重な窓ガラスを割ったことが原因なのだが平和ボケした国王は国王崇拝を広めるとの甘い言葉に乗って錬金術師に結界の拡張を求めたのだ。

それまでは週一回の魔力供給で済んだものが四日目には供給しなければ王城内の照明も薄暗くなるのだ。

そう、宮城の当初の照明は給油式のトーチだったのだが油臭いと王妃の要望を受けて照明用の魔石が配置され王城地下の魔硝石から魔導線を通じて魔力が供給される様に改修されたのだが錬金術師にとってはたまったものではない。


ルーエンはこのままでは宮城に死ぬまで囚われの身になると自分より魔力の多い身代わりもとい後継者を探していたのだ。そしてルーエンにとっても身代わりにする後ろめたさから自分の持つ錬金術師としての知識を全て授ける事でチャラにしたかったのだ。


ところでお前の名前は何と言う?と問われたのだが『7番と呼ばれていました。』の返事に驚愕していた。


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