2 新しいアルに乗って


 結局、四人で人工知能アルの操縦するヴィーの船に乗ることになった。ナギもメイもディヤーヴァから離れようとしなかったのだ。


「綺麗になったね、アル」

 ナギが話しかけると、シップはウインと身体を揺らせた。

「ボディハ特殊炭素合金ヲツギハギ無シニ使用。高性能レーダー、高機能ワープ装置ヲ搭載。迎撃、追尾ミサイル、レーザビームヲ装備シ──」


「へえ、すげえじゃねえか」

 と、アルの説明をディヤーヴァの方が嬉しそうに聞いている。その横でヴィーが渋い顔をする。

「アル、余計なことは言うな」

「ラジャー、ゴ主人」


 ナギはメイに手招かれて隅の椅子に座った。メイがその前に座ってポケットの中から四角い手のひらサイズのケースを取り出した。カチンと音がしてケースが開く。そこに立体映像が現れた。女性である。


「私たちのお母さんだと、クレイグが言ったの」

 輝く金色の髪、緑色の瞳。非常に整った顔と肢体。

「俺と……」

 ナギが自分の顔を手で抑えて呟く。瞳の色が違うが、その立体映像は、一度鏡で見た自分の顔と非常によく似ている。

「うん。よく似ているわ。会った時すぐ分かったもの」


 双子の兄妹だとメイは言うけれど、二人は似ていなかった。黒い瞳と肩までの黒い髪の勝気そうなメイと、金色の髪と金色の瞳のナギ。兄弟だというのなら姉と弟といった方がまだ頷ける。


「お前さん、知っているか?」

 腕を組んで二人を見ていたディヤーヴァが、振り向いて写真の方に顎をしゃくってヴィーに聞く。ヴィーは口を引き結んでディヤーヴァを睨む。


 こんな危険なことをこんな危険な男に言うわけがないと、ついと顔を逸らせた。やはり言わないかとディヤーヴァは唇の端を曲げた。



 * * *


「ゴーン系第4惑星ロンドーニア空域ニ到着。ポルト・ベーリョ空港ヨリ応答アリ。着陸スル」


 前のガタガタと危なげな機体と違い、人工知能アルの操る機体は空港の誘導灯に導かれて滑るようにポルト・ベーリョ空港に着陸した。


 ヴィーが補給に立ち寄った星は、中央星系から少し外れた森と湖の美しい星だった。二人の子供は息を呑んで窓の外に広がる光景を眺めている。


「降りて大丈夫なのか?」

 ディヤーヴァがナギとメイに顎をしゃくる。

「ここは田舎だし、どこにも属していない」

 冷たいブルーグレーの瞳でヴィーが答える。


「どこにもとは?」

 ディヤーヴァの二度目の質問を、ヴィーは冷たい瞳で嘲るように見た。

「裏切り者のディヤーヴァも堕ちたものだな」

 その言葉でナギの方がキッとヴィーを振り返ったが、ディヤーヴァはナギの頭に手を置いてヴィーに聞くのを止め、ナギと共にさっさと機外へと向かった。その後をすぐにメイが追いかける。


「ゴ主人、ナギハ、アノ男ト恋人関係ダ」

 アルが最後に残ったヴィーに報告する。

「そうか。厄介な奴が付いてきたものだ」

 ヴィーは溜め息を吐いてスペースシップを下りた。


 ポルト・ベーリョ空港は設備が整っていて、星系間輸送の大型フェリー及び貨物船用の広い空港が別にあり、個人の船は、ビルの中にある広いカタパルトデッキに何台かずつ収容される。先に下りた三人が仲良く空港のショップを冷やかしているのを見て、ヴィーは顔を顰めた。

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