第26話 今度は剣武祭だ。何か面倒な匂いが。

闘武祭から戻った俺は、直ぐに別の王国で開催している剣武祭に参加するべく直ぐに向かった。

今回は王国からの推薦状を得ていることから、予選は免除だ本戦には十分間に合う。


そう思って馬車で隣国に向かって走っていると、

「セブン伯爵、前方で武装した物同士の戦いが行われているようです。間も無く様子見の者が連絡すると思われます、我らはこのまま巡行速度で向かいます。」

と一報を入れてきた、俺は既におおよその事は分かっていた。

盗賊と思われる50人からの武装した者が何処ぞの高位の貴族の乗る馬車を襲撃しているのだ。

貴族側は警護10人ほど、多勢に無勢な状況で推されているが意外と強者揃いのようだ。

しかし馬車は何らかの攻撃を受けて走行不能状態のようで、貴人を安全な場所に移動できないようだ。

その時先見が戻り

「盗賊が外国の貴族を襲っているようだ。」

と報告してきた。

俺は馬車を止め、降りると

「先に行く、ついて来い!」

と言うと馬よりも早く走り出した。


ー 襲われている side



我らはお忍びで剣武祭のある王国に向かう途中の一行。

馬車には我が王国の第二王女セシル殿下が乗られている。

お忍びでの移動には理由があり、王国内での王位継承問題だ。

我らが仕えるセシル殿下もその危険が迫ってると報告があり、最低限の者で出発したのが裏目に出たか、それともこれすら敵対勢力の陰謀か。


50人からの完全武装の盗賊が馬車を襲ってきた。

腕に自慢の騎士団でもこの数には少しずつ押されている、しかも馬車が車輪を壊されて動かせないのが痛い。

そんな窮地に男が飛び込んできた。


「助太刀申す!」

と言う声が聞こえたかと思うと、盗賊らが後方から来た若い男に次々に斬り倒されている。

盗賊らも慌ててその男を捕らえようとするが、速すぎて何も出来ずに斬られていく。

そして次に兵士らの姿が見えてきた、どこかの家中の兵士と思われる。

盗賊らは不利を感じ慌てて逃げ出そうとするが、あの男がそれを許さない。

結局50人ほどいた盗賊は、カシラと思われる男と他3人ほど以外は斬り殺され、残りは拿捕された。

「危ないところお助けいただきかたじけない。どこの家中のお方でしょうか?後ほど正式にお礼を申し上げます。只今は我が方お忍びの旅につき家名等はご勘弁いただきたい。」

と礼と複雑な立場を申し上げる騎士に俺は

「なに気になされるな。我はセントレア王国のセブン伯爵、これより剣武祭に向かうところ。もし同じ方向であれば都合の良い場所までご一緒いたしましょう?」

と答えれば、しばらく馬車の人物と話していたが

「お助けいただき顔もお見せせず失礼いたしました。私セシルと申します、宜しければ目的地が同じのもよう、ご一緒してもよろしいでしょうか?こちらの馬車はこの通り使い物にならないようです。」

と馬車から降りてきたお姫様然としたうら若き女性が話しかけた。

「それはお困りでしょう、さあむさ苦しい馬車ではありますがこちらにお乗り換えください。」

と女性をエスコートした。



ーー セシル殿下  side


私はデカンタビア王国の第二王女、病がちなお父上に代わる跡目争いが急に激しくなり国内にいても危険があると報告を受け始めた。

そこで隣国の剣武祭見物を手始めに隣国を巡ろうと考えた私は、僅かな騎士を引き連れて移動していたのだ。

しかしどうもその情報が漏れたようだ、完全武装の盗賊に襲われて危ない状況に陥ったのだ。

しかしそこにセントレア王国のセブン伯爵と言われる男性が颯爽と現れ、並いる盗賊どもを斬り捨てて私を救い出してくださった。

まるで物語の中のお話みたい。


その姿は長身でありながら威圧感がなくスマートで髪は美しいプラチナ、目元涼しく人を引き込むようなオッドアイ、話す声は相手を優しく包み込むような美声。

本当に物語の王子様のようでした。

しかしその分、盗賊に剣を振るう姿は羅刹の様な迫力がありました。


今私はそんな素敵なセブン様と同じ馬車で移動しています。

奥様がいらっしゃるとお聞きしましたが、それは当然ですしかもまだお一人だけだと・・・私にもチャンスがあります。


そんな思いで自分の危機感を一時的にでも忘れられた旅は私にとってとても大切な旅となりました。



ーー 開催地に無事到着



開催地であるエルゴーニュ王国に到着した一行、セシル殿下とここで一旦お別れで俺は主催者のもとに。

「本戦出場予定のセブンだ、これが案内状。」

と言いながら関係者に手渡しながら対戦相手や日程を確認する。

「明日の朝1番に第一試合が始まります。7時には控え室においでください。」

と言われながら名札のような物をもらう。


宿として押さえてもらった場所に向かうと、セシル殿下一行がそこに居た。

「どうされましたか?」

と尋ねれば

「既に先約でいっぱいで・・・」

と宿が取れないと困っていた。

「俺の予約していた分を半分こちらの方に変更してくれないか」

と宿の担当者にお金を渡しながら

「無理をお願いしてすまないね。」

とお金を受け取りやすく声をかけると

「はいお客様のお部屋をお一つのみ変更していただければ、対応可能かと」

と答えてくれたので

「宿の方が無理を叶えてくださるようです、良かったですね。」

と他人事のように伝えると、俺は宿に入った。

何がどうしてどうなったか分からず、宿の者の案内で部屋に案内されるセシル殿下達。

その後俺の協力で宿の部屋を確保できたと知り、慌ててお礼に来たほどだった。


「セブン伯爵様、気付かぬ我らの落ち度謝罪と感謝を申し上げます。」

セシル殿下がわざわざ俺が食事をしているテーブルに来てそう言うので

「お気になさらず、そう言えば食事がまだでしょう。如何ですかご一緒に。」

と話をふれば、殿下は遠慮しようとしたが、御付きの女官が

「姫様部屋は用意できましたが食事はまだ無理と聞いております。ここはセブン伯爵様のお言葉に甘えていただければ。」

「・・・そうですか。お言葉に甘えて宜しいですか?」

「どうぞ。君!彼女に席を。」

と一緒の食事となった。


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