第25話 闘武祭と剣武祭と言うのがあるそうです

この世界には魔力があるためでしょうか、地球では考えられないほどの力や動きが可能なために、この世界の人間は格闘関係が大好きなようです。

何度か俺の領地内で祭りを開きましたが、その際次のような質問が多く寄せられました。

・剣武祭は開かないのですか?

・闘武祭は開かないのですか?

・魔術祭は開かないのですか?

という質問です、最後の魔術祭は戦略級の広範囲魔術に繋がるのでほとんで行われていないようです。

しかし格闘関係の祭りを望む領民が多いのは驚きでした。


しかしこれらの祭りを開催するには、主催者側にこの世界で10指に入るような選手がいないと興行的には上手くいかないようです。

そこで私は従魔達に次の事を命じました。

・それぞれ各王国で開かれる大会で上位に入賞し

て、この世界で10指に数えられるようになるようにと。

当然俺の参加しますよ。


ーー 最初の闘武祭



すぐに機会がやってきました。

剣を使わず、己の身体のみで闘う闘武祭です。

獣人王国のブースト王国主催です、当然歴代の優勝者は獣人族が8割ほど占めていて、ここ5回の優勝者の獣人もエントリー済みです。


この大会には俺とコロネが出場します。

コロネは素早い動きと怪力を使った拳闘士的な戦いが得意なのだ。

お金を配り俺とコロネが最後まで当たらないように対戦表に細工する。


予選が10回戦、本戦が5回戦という結構なエントリー、その理由は成績優秀者は各国の騎士団や近衛兵に採用されるからだそうだ。


ー 予選です。


予選は2日間で行われます。

1日5試合です、体力も要ります。

それは普通の選手の話、俺やコロネには問題ない話です。

だって相手から攻撃を受ける前に一撃で倒すからです、10回攻撃すれば予選突破です。


3日目からは予選を勝ち上がった選手と予選を免除された実力者が1日2試合行います、よって5日目に決勝です。


ー 本戦初日


俺に相手は、猫系獣人のクロヒョウ選手。

獣人王国の騎士団の精鋭だと言います、しなやかな身体に鋭い眼光、中々いいものを持っているようです。


「始めー!」

という審判の声と共にクロヒョウが踊りかかる、そして俺の残像に渾身のパンチを。

パンチは霧のように消える俺の姿を虚しく通過する、慌てて周囲を警戒するクロヒョウに俺は軽く手刀を撃ち下ろす。

地面が揺れるほどの衝撃で地面に叩き落とされたクロヒョウは、それ以上の戦いは不可能であった。

「勝者、セブン選手。」

勝ち名乗りを受け舞台を降りる俺にムラサキがタオルを差し出しながら

「コロネも一撃で相手を沈めるました。」

と報告する。

「も一試合した後は美味しいご飯でも食べに行こうかね。」

と声をかけ控室に下がる。


その日は何ん波乱もなく(俺的に)終了するが、大会関係者は大慌てだ、俺が2回戦で倒した獣人とコロネが2回戦で倒した獣人が、ここ最近の大会でベスト4の選手だったからだ。

ここで大会運営は、大きな決断を下す。

歴代のチャンピオンを4人特別枠で参加させたのだ。

獣人国の名誉のために。


ー 本戦2日目も大番狂せ


3回戦目にして俺とコロネの前に歴代チャンピオンが立ちはだかる。

しかし俺らとは格が違う、相手に礼を尽くし3撃で沈めると4回戦目にはまたしても元チャンピオン。

同じように3撃で沈めると、俺とコロネが試合終了後獣人族の王の前に呼ばれる。

「セブン殿、コロネ殿見事な闘いであった。お二人は師主従関係とお聞きしたが真ですか?」

と宰相的な立場の獣人が尋ねるそこで俺は

「その通りです、俺が兄でコロネが末の義妹という関係になります。明日の決勝は俺は辞退する予定です、良き対戦相手がいれば出されても構いません。」

と伝えると、何かホッとした空気が流れた。出来れば獣人が優勝者でありたいようだ。

「それはこちらとしては願ったりでございますが・・・何か注文がおありですか?」

「いえ、私はセントレア王国の貴族です。良き人材の募集と我が領地でも闘武祭を開きたいという目的があるのです。」

と言えば、

「そうですか。闘武祭を開くための名売りですな、良いでしょう開催の際は我が王国の実力者を派遣し華を添えましょう。」

と答えてこの話は終わりとなった。


ー最終日


決勝はコロネと前回優勝者の獣人同士の闘いとなった。

会場は空前の熱気、新たなチャンピオンが生まれるかそれとも連覇かという期待だ。

コロネには、相手といい勝負に見えるようにと指導していた。


闘いが始まる、コロネは素早い動きで相手を翻弄し始めるが相手もそこそこの実力者。

コロネの動きにカウンターを合わせる、「ドーン!」その度に大きな破裂音が会場を震わせる。

暫くするとコロネが動きを止めて撃ち合いを仕掛ける。

動きが速すぎると見ている観客がよく分からないため、これの方が見応えがあるのだ。

コロネが足場を決めるとそこから一歩どころか指一つ動かす事なく相手とショートレンジで打ち合う。

見応えがある闘いだ、観客は興奮してそれぞれに応援するが、相手選手が先にスタミナ切れを起こしてしまった。

そこにコロネの右フックが顎を擦る、そのまま対戦相手は地面に崩れるように倒れる。


暫くの沈黙ののち

「勝者!コロネ選手!」

という勝ち名乗りが静まり返った会場に響いた。

「ウオー」

というような唸り声が会場を一つにして拍手が鳴り響く。


ー闘武祭が終わって


昨日の話の通り、我が領地での大会開催とその参加を約束し、次回の闘武祭にコロネが出場する事で話をまとめた。

優勝者のメダルを首に掛けたコロネが嬉しそうに獣人国の者と話をしていたのが印象的だった。



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